JASSO奨学金の種類と違い:給付型・第一種・第二種の併用戦略

日本学生支援機構(JASSO)の給付型、貸与型(第一種・第二種)の条件、金利、併用ルールを解説。高等教育の修学支援新制度とは?

「奨学金」という言葉を聞いて、多くの人は「大学進学のためのお金の支援」を思い浮かべます。しかし日本の奨学金制度は複数の種類が並立しており、制度を正しく理解して申請しないと、受け取れたはずの支援を見逃したり、必要以上の借金を背負うことになります。

JASSOの奨学金は大きく「返済不要の給付型」と「返済必要な貸与型(第一種・第二種)」の3タイプがあります。それぞれを正しく把握し、自分の家計状況に合った最適な組み合わせを選ぶことが、卒業後の返済負担を最小化する出発点です。


1. 3タイプの奨学金:優先度の高い順に理解する

奨学金を考える上での基本原則は「返済不要なものから先に取る」です。

種類返済利息家計基準(目安)優先度
給付型奨学金(修学支援新制度)不要なし年収約378万円以下(第1〜3区分)/第4区分は約635万円以下最優先
第一種奨学金(無利子貸与)必要0%年収約803万円以下(4人世帯)次優先
第二種奨学金(有利子貸与)必要最大年3%(変動)年収約1,250万円以下(4人世帯)必要最小限

「給付型の対象でなければ第一種、第一種だけでは足りなければ第二種で補う」という順序で考えることが、借入総額を抑える基本的な戦略です。


2. 給付型奨学金:高等教育の修学支援新制度

2020年度から始まった「高等教育の修学支援新制度」は、返済不要の給付型奨学金と授業料・入学金の減免がセットになった制度です。2024年度には対象が拡大されました。

家計基準の区分と給付額(2026年時点)

区分年収目安(4人世帯)給付額(私立大・自宅外生)
第1区分約271万円以下満額(私立・自宅外なら月75,800円=年約91万円。授業料減免は別枠)
第2区分約303万円以下第1区分の2/3
第3区分約378万円以下第1区分の1/3
第4区分(多子世帯)約635万円以下・かつ子ども3人以上を扶養給付は第1区分の1/4、授業料等減免は第1区分と同等
第4区分(私立理工農系)約635万円以下・多子世帯以外で対象学科に在籍給付奨学金は0円、授業料・入学金の減免のみ
多子世帯特例(2025年度〜)子ども3人以上を扶養し所得制限なし授業料・入学金減免(私立大は授業料上限70万円・入学金上限26万円、国公立大は授業料約54万円・入学金約28万円)

給付額は自宅通学・自宅外通学、国公立・私立によって異なります。私立大学自宅外生が最も支援額が大きく、国公立自宅通学生が最も少なくなります。

学力基準

家計基準だけでなく、学力基準も満たす必要があります。

申請タイプ主な学力基準
高校在学中の予約採用評定平均3.5以上、または学習意欲・能力に関する要件
大学入学後の在学採用GPAが上位1/2以上、または修得単位数が標準の60%以上

評定平均が3.5に届かない場合でも、「将来の進路・学習意欲に関するレポート」等で代替できるケースがあります。学校の担当者に相談することが重要です。


3. 第一種奨学金(無利子貸与)

第一種は利息がゼロの貸与型奨学金です。返済は必要ですが、借りた金額以上は返しません。

家計基準と学力基準

条件内容
家計基準4人世帯(親2人が給与所得者+中学生)で年収約803万円以下が目安(3人世帯は約716万円、5人世帯は約905万円)
学力基準(高校)評定平均3.5以上(目安)または上位1/3程度の成績
学力基準(大学在学)GPAや修得単位数が基準以上

月額の選択肢(2026年時点)

学校種別自宅通学自宅外通学
国公立大学2万・3万・4.5万円2万・3万・4万・5.1万円
私立大学2万・3万・4万・5.4万円2万・3万・4万・5万・6.4万円
専修学校(専門課程)・短期大学国公立2万・3万・4.5万円/私立2万・3万・4万・5.3万円国公立2万・3万・4万・5.1万円/私立2万・3万・4万・5万・6万円

各区分のいちばん大きい額が「最高月額」で、これを選べるのは家計基準がより厳しい条件を満たす場合に限られます(一定額を超えると最高月額以外からの選択になります)。自宅外通学者は自宅通学の月額を選ぶこともできます。

第一種は選べる月額があらかじめ決まっており、1万円単位で自由に決められる第二種と違って刻みが粗い設計です。細かい調整はできませんが、そのぶん「必要以上に借りにくい」とも言えます。


4. 第二種奨学金(有利子貸与)

最も利用者が多いタイプです。家計・学力の基準が第一種より緩く、借りられる月額の幅も広いです。

審査基準

条件内容
家計基準4人世帯(親2人が給与所得者+中学生)で年収約1,250万円以下が目安(3人世帯は約1,113万円、5人世帯は約1,334万円)
学力基準高校の成績が平均水準以上、または特定の認定要件

月額の選択肢と金利

月額は2〜12万円の範囲で、1万円単位で選択できます。

金利方式仕組み2026年(令和8年度)の水準(目安・上限年3%)
利率固定方式貸与終了時に金利が確定し、完済まで固定約2.7〜2.9%程度
利率見直し方式おおむね5年ごとに金利を見直し約1.9〜2.0%程度

日銀の利上げにより、2024〜2026年にかけて第二種奨学金の貸与利率も上昇傾向にあります。長期間借りる場合は利率固定方式を選ぶことで、将来の金利上昇リスクをヘッジできます(貸与終了時の金利で固定されます)。


奨学金の返済額を先に試算する

借りる総額と返済年数を入れると、毎月いくら返すことになるかを確認できます。

5. 最適な併用戦略

給付型・第一種・第二種はそれぞれ単独でも、組み合わせても利用できます。ただし、組み合わせには条件があります。

併用可能なパターン

組み合わせ可否注意点
給付型+第一種給付型の区分に応じて第一種の月額が制限される
給付型+第二種第1区分は第二種と同時利用が原則不可
第一種+第二種(併用貸与)家計基準が単独より厳しくなる(4人世帯の年収目安 約743万円以下)

「必要最小限を借りる」ための計算

借りすぎを防ぐには、「毎月の実際の不足額」から借入額を逆算します。

計算例:私立大学・自宅外通学の場合(月額)

支出金額(目安)
家賃5〜7万円
食費(自炊)・光熱費4〜5万円
通信費・交通費1万円
大学関連費(教材・交通)0.5〜1万円
合計(月)11〜14万円

仕送り(月5〜6万円)+アルバイト(月5〜7万円)で合計10〜13万円確保できる場合、奨学金は月2〜5万円程度で足りる可能性があります。「月12万円借りられるから12万円借りる」ではなく、実際の不足額を計算してから決めることが重要です。


6. 保証制度の選択:人的保証 vs 機関保証

貸与型奨学金には、保証人を立てる制度があります。

人的保証

役割条件
連帯保証人父または母(66歳未満が目安)
保証人4親等以内の親族(別世帯・65歳未満が目安)

保証料は不要ですが、返済が滞った場合は保証人に請求が行きます。親族への負担を避けたい場合や、保証人を頼める人がいない場合は機関保証を選びます。

機関保証

保証機関(公益財団法人日本国際教育支援協会)に保証料を払う制度です。

  • 保証料:月々の奨学金から自動天引き(月額・期間によって異なる)
  • 目安:月8万円・4年間借りる場合、保証料は総額約10〜20万円程度
  • メリット:連帯保証人が不要・親族に迷惑をかけない

保証料分だけ手取りが減りますが、家族への負担を避けられることから、機関保証を選ぶ学生も増えています。


7. 入学時特別増額貸与奨学金の活用と注意点

第二種奨学金の申請者は、入学初年度に1回限り「入学時特別増額」として10〜50万円を追加で借りることができます(有利子)。

申請可能額10万・20万・30万・40万・50万円(選択式)
振込時期入学後(5〜6月頃)
利息第二種と同じ金利

重要な注意点: 入学金・前期授業料の支払いは2〜3月(入学前)ですが、特別増額が振り込まれるのは入学後です。入学時の費用をこの特別増額でカバーしようとすると、タイムラグがあって間に合いません。

入学前の費用は、国の教育ローン(日本政策金融公庫・低金利)や労働金庫の「入学時必要資金融資」を一時的なつなぎとして使い、特別増額が入ったら繰り上げ返済するという流れが現実的です。


8. 申請のスケジュールと手続き

予約採用(高校在学中に申請)

時期内容
高3の4〜5月頃高校から案内・申請書類配布
5〜6月頃申請書提出・マイナンバー提出
9〜10月頃採用候補者通知(内定)
大学入学後4〜5月進学届提出で奨学金開始

在学採用(大学入学後に申請)

入学後に大学の学生支援部署で申請します。年2回(春・秋)の採用があり、予約採用で漏れた学生も申請可能です。ただし、枠に限りがある場合もあります。


9. いくら借りるか:卒業後の返済を先に計算する

借りる前に「卒業後の月々返済額が手取りの何%か」を試算することが、借りすぎ防止の最重要ステップです。

金利の前提について:下表は年0.6%の低金利ケースでの返済負担のイメージです。第二種奨学金の貸与利率は日銀の利上げで上昇しており、令和8年度(2026年度)の実績は利率固定方式で約2.7〜2.9%・利率見直し方式で約1.9〜2.0%です。現行水準で借りる場合は下表より利息総額が大きくなる点に注意してください。

借入総額別の月々返済額試算(第二種・年0.6%・低金利ケース・20年返済)

借入総額月々返済額(目安)20年間の返済総額利息
240万円(月5万円×4年)約10,600円約255万円約15万円
384万円(月8万円×4年)約17,000円約408万円約24万円
480万円(月10万円×4年)約21,200円約510万円約30万円
576万円(月12万円×4年)約25,500円約611万円約35万円

大卒初任給の手取りは21万円程度が目安です(令和7年賃金構造基本統計調査の大卒初任給262,300円から税・社会保険料を引いた水準)。月25,000円の返済は手取りの約12%にあたります。「返済負担率10%以内」(手取り21万円なら月21,000円)を目安にすると、上表の年0.6%・20年なら借入総額は約470万円が上限の目安です。ただし上表の注意書きのとおり返還期間は貸与総額で決まり、現行の利率は年1.9〜2.9%と表より高いため、実際に組める上限はこれより下がります。


よくある質問

Q. 給付型に採用されると第一種は借りられなくなりますか?

借りられなくなるわけではありませんが、区分に応じて第一種の月額が制限されます(併給調整)。支援が厚い第1区分ほど第一種で上乗せできる額が小さく、区分が下がるほど制限は緩みます。給付が0円の第4区分(私立理工農系)でも授業料減免を受けている以上は調整の対象です。具体的な組み合わせ可否はJASSO公式の最新情報で確認することが必要です。

Q. 浪人生でも奨学金を申請できますか?

JASSO奨学金の予約採用は高校在学中(卒業前)の申請が前提ですが、浪人中や大学入学後に在学採用で申請することは可能です。ただし在学採用は採用枠が少ない場合があるため、高校在学中の予約採用をできる限り活用することが推奨されます。

Q. 奨学金の返済が苦しくなったらどうすればいいですか?

JASSOには「減額返還制度」(月々の返還額を2/3・1/2・1/3・1/4の4段階から選んで減額し、その分だけ返還期間を延長する。通算最長15年)と「返還期限猶予制度」(最大10年間の返済猶予)があります。滞納が3ヶ月以上続くと信用情報に記録されるため、苦しくなった場合は滞納前に早めにJASSO窓口へ相談することが重要です。

Q. 「奨学金の民間版」と比較してどちらがいいですか?

民間の教育ローンはJASSOより金利が高い(年3〜6%程度)ことが多いです。まずJASSOの給付型・第一種・第二種を最大限活用し、それでも不足する場合に国の教育ローン(日本政策金融公庫・年4.05%:2026年7月時点。日銀利上げで上昇)→民間教育ローンの順で検討することが、総コストを最小化する基本的な順序です。


まとめ

JASSOの奨学金制度は、家計状況・学力・進学先によって選択肢が大きく異なります。

  • まず給付型(返済不要)を確認する:年収378万円以下(第1〜3区分)はもちろん、第4区分の約635万円以下や、所得制限のない多子世帯まで対象が広がっている
  • 第一種(無利子)を最優先:学力基準を維持して無利子で借りることが最もコストが低い
  • 第二種は必要最小限:月額を「実際の不足額」から逆算して決める
  • 保証制度は状況に応じて選択:機関保証は保証料がかかるが保証人不要
  • 入学時特別増額は振込タイミングに注意:入学前費用の支払いには間に合わない
  • 借りる前に返済額を計算する:手取りの10%以内に収まる借入総額が目安

奨学金は将来の自分への借金です。在学中の4年間より、卒業後の20年間の返済の方がはるかに長い——この視点を持って、借入額を決めることが最も大切なステップです。


卒業後の返済額を計算する

借入総額・金利・返済期間を入力すると、卒業後の毎月の返済額と総返済額を計算できます。第一種か第二種かを選ぶ機能はないため、金利は自分で入力してください(第一種は無利子なので0%、第二種は本記事の利率)。在学中の返済猶予は反映されません。

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