JASSO奨学金の種類と違い:給付型・第一種・第二種の併用戦略
日本学生支援機構(JASSO)の給付型、貸与型(第一種・第二種)の条件、金利、併用ルールを解説。高等教育の修学支援新制度とは?
執筆:しぐ ・ 更新日: 2026-06-14
「奨学金」という言葉を聞いて、多くの人は「大学進学のためのお金の支援」を思い浮かべます。しかし日本の奨学金制度は複数の種類が並立しており、制度を正しく理解して申請しないと、受け取れたはずの支援を見逃したり、必要以上の借金を背負うことになります。
JASSOの奨学金は大きく「返済不要の給付型」と「返済必要な貸与型(第一種・第二種)」の3タイプがあります。それぞれを正しく把握し、自分の家計状況に合った最適な組み合わせを選ぶことが、卒業後の返済負担を最小化する出発点です。
1. 3タイプの奨学金:優先度の高い順に理解する
奨学金を考える上での基本原則は「返済不要なものから先に取る」です。
| 種類 | 返済 | 利息 | 家計基準(目安) | 優先度 |
|---|---|---|---|---|
| 給付型奨学金(修学支援新制度) | 不要 | なし | 年収380万円以下(第1〜3区分) | 最優先 |
| 第一種奨学金(無利子貸与) | 必要 | 0% | 年収747万円以下(4人世帯) | 次優先 |
| 第二種奨学金(有利子貸与) | 必要 | 最大年3%(変動) | 年収1,100万円以下(4人世帯) | 必要最小限 |
「給付型の対象でなければ第一種、第一種だけでは足りなければ第二種で補う」という順序で考えることが、借入総額を抑える基本的な戦略です。
2. 給付型奨学金:高等教育の修学支援新制度
2020年度から始まった「高等教育の修学支援新制度」は、返済不要の給付型奨学金と授業料・入学金の減免がセットになった制度です。2024年度には対象が拡大されました。
家計基準の区分と給付額(2026年時点)
| 区分 | 年収目安(4人世帯) | 給付額(私立大・自宅外生) |
|---|---|---|
| 第1区分 | 約270万円以下 | 最大約91万円/年(給付型のみ、授業料減免別) |
| 第2区分 | 約270〜300万円以下 | 第1区分の2/3 |
| 第3区分 | 約300〜380万円以下 | 第1区分の1/3 |
| 多子世帯特例(2025年度〜) | 子ども3人以上を扶養し所得に関わらず | 授業料・入学金減免(私立大は授業料上限70万円・入学金上限25万円、国公立大は標準額を全額) |
給付額は自宅通学・自宅外通学、国公立・私立によって異なります。私立大学自宅外生が最も支援額が大きく、国公立自宅通学生が最も少なくなります。
学力基準
家計基準だけでなく、学力基準も満たす必要があります。
| 申請タイプ | 主な学力基準 |
|---|---|
| 高校在学中の予約採用 | 評定平均3.5以上、または学習意欲・能力に関する要件 |
| 大学入学後の在学採用 | GPAが上位1/2以上、または修得単位数が標準の60%以上 |
評定平均が3.5に届かない場合でも、「将来の進路・学習意欲に関するレポート」等で代替できるケースがあります。学校の担当者に相談することが重要です。
3. 第一種奨学金(無利子貸与)
第一種は利息がゼロの貸与型奨学金です。返済は必要ですが、借りた金額以上は返しません。
家計基準と学力基準
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 家計基準 | 4人世帯・父母と本人・18歳で年収約747万円以下(世帯収入による) |
| 学力基準(高校) | 評定平均3.5以上(目安)または上位1/3程度の成績 |
| 学力基準(大学在学) | GPAや修得単位数が基準以上 |
月額の選択肢(2026年時点)
| 学校種別 | 自宅通学 | 自宅外通学 |
|---|---|---|
| 国公立大学 | 2万・3万円 | 3万・4.5万円 |
| 私立大学 | 2万・3万・4万円 | 3万・5万・6万円 |
| 専修学校(専門課程) | 2万・3万円 | 3万・4万円 |
第一種は金額の選択肢が限られており、「月12万円まで自由に選べる」第二種よりも借入額のコントロールがしやすい設計です。
4. 第二種奨学金(有利子貸与)
最も利用者が多いタイプです。家計・学力の基準が第一種より緩く、借りられる月額の幅も広いです。
審査基準
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 家計基準 | 4人世帯・父母と本人・18歳で年収約1,100万円以下(世帯収入による) |
| 学力基準 | 高校の成績が平均水準以上、または特定の認定要件 |
月額の選択肢と金利
月額は2〜12万円の範囲で、1万円単位で選択できます。
| 金利タイプ | 仕組み | 2026年現在の水準(目安) |
|---|---|---|
| 変動金利 | 半年ごとに見直し・上限年3% | 約0.5〜1.0%程度 |
| 固定金利(利率固定方式) | 貸与終了時に確定、完済まで固定 | 約1.0〜1.5%程度 |
| 固定金利(利率見直し方式) | 5年ごとに見直し | 変動より若干低い傾向 |
日銀の利上げにより、2024〜2026年にかけて変動金利が上昇傾向にあります。長期間借りる場合は固定金利を選ぶことで、将来の金利上昇リスクをヘッジできます。
5. 最適な併用戦略
給付型・第一種・第二種はそれぞれ単独でも、組み合わせても利用できます。ただし、組み合わせには条件があります。
併用可能なパターン
| 組み合わせ | 可否 | 注意点 |
|---|---|---|
| 給付型+第一種 | 可 | 給付型の区分に応じて第一種の月額が制限される |
| 給付型+第二種 | 可 | 第1区分は第二種と同時利用が原則不可 |
| 第一種+第二種(併用貸与) | 可 | 家計基準が単独より厳しくなる(年収目安:686万円以下等) |
「必要最小限を借りる」ための計算
借りすぎを防ぐには、「毎月の実際の不足額」から借入額を逆算します。
計算例:私立大学・自宅外通学の場合(月額)
| 支出 | 金額(目安) |
|---|---|
| 家賃 | 5〜7万円 |
| 食費(自炊)・光熱費 | 4〜5万円 |
| 通信費・交通費 | 1万円 |
| 大学関連費(教材・交通) | 0.5〜1万円 |
| 合計(月) | 11〜14万円 |
仕送り(月5〜6万円)+アルバイト(月5〜7万円)で合計10〜13万円確保できる場合、奨学金は月2〜5万円程度で足りる可能性があります。「月12万円借りられるから12万円借りる」ではなく、実際の不足額を計算してから決めることが重要です。
6. 保証制度の選択:人的保証 vs 機関保証
貸与型奨学金には、保証人を立てる制度があります。
人的保証
| 役割 | 条件 |
|---|---|
| 連帯保証人 | 父または母(66歳未満が目安) |
| 保証人 | 4親等以内の親族(別世帯・65歳未満が目安) |
保証料は不要ですが、返済が滞った場合は保証人に請求が行きます。親族への負担を避けたい場合や、保証人を頼める人がいない場合は機関保証を選びます。
機関保証
保証機関(公益財団法人日本国際教育支援協会)に保証料を払う制度です。
- 保証料:月々の奨学金から自動天引き(月額・期間によって異なる)
- 目安:月8万円・4年間借りる場合、保証料は総額約10〜20万円程度
- メリット:連帯保証人が不要・親族に迷惑をかけない
保証料分だけ手取りが減りますが、家族への負担を避けられることから、機関保証を選ぶ学生も増えています。
7. 入学時特別増額貸与奨学金の活用と注意点
第二種奨学金の申請者は、入学初年度に1回限り「入学時特別増額」として10〜50万円を追加で借りることができます(有利子)。
| 申請可能額 | 10万・20万・30万・40万・50万円(選択式) |
|---|---|
| 振込時期 | 入学後(5〜6月頃) |
| 利息 | 第二種と同じ金利 |
重要な注意点: 入学金・前期授業料の支払いは2〜3月(入学前)ですが、特別増額が振り込まれるのは入学後です。入学時の費用をこの特別増額でカバーしようとすると、タイムラグがあって間に合いません。
入学前の費用は、国の教育ローン(日本政策金融公庫・低金利)や労働金庫の「入学時必要資金融資」を一時的なつなぎとして使い、特別増額が入ったら繰り上げ返済するという流れが現実的です。
8. 申請のスケジュールと手続き
予約採用(高校在学中に申請)
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 高3の4〜5月頃 | 高校から案内・申請書類配布 |
| 5〜6月頃 | 申請書提出・マイナンバー提出 |
| 9〜10月頃 | 採用候補者通知(内定) |
| 大学入学後4〜5月 | 進学届提出で奨学金開始 |
在学採用(大学入学後に申請)
入学後に大学の学生支援部署で申請します。年2回(春・秋)の採用があり、予約採用で漏れた学生も申請可能です。ただし、枠に限りがある場合もあります。
9. いくら借りるか:卒業後の返済を先に計算する
借りる前に「卒業後の月々返済額が手取りの何%か」を試算することが、借りすぎ防止の最重要ステップです。
借入総額別の月々返済額試算(第二種・年0.6%・20年返済)
| 借入総額 | 月々返済額(目安) | 20年間の返済総額 | 利息 |
|---|---|---|---|
| 240万円(月5万円×4年) | 約10,600円 | 約255万円 | 約15万円 |
| 384万円(月8万円×4年) | 約16,900円 | 約407万円 | 約23万円 |
| 480万円(月10万円×4年) | 約21,200円 | 約509万円 | 約29万円 |
| 576万円(月12万円×4年) | 約25,400円 | 約610万円 | 約34万円 |
大卒初任給の手取りは18〜20万円程度が目安です。月25,000円の返済は手取りの約13〜14%にあたります。「返済負担率10%以内」を目安にすると、借入総額は300〜400万円程度が上限の目安になります。
よくある質問
Q. 給付型に採用されると第一種は借りられなくなりますか?
採用区分によって制限があります。第1区分(最も支援が厚い)は第一種と併用できる月額が制限されます。第2・3区分では比較的自由に組み合わせられます。具体的な組み合わせ可否はJASSO公式の最新情報で確認することが必要です。
Q. 浪人生でも奨学金を申請できますか?
JASSO奨学金の予約採用は高校在学中(卒業前)の申請が前提ですが、浪人中や大学入学後に在学採用で申請することは可能です。ただし在学採用は採用枠が少ない場合があるため、高校在学中の予約採用をできる限り活用することが推奨されます。
Q. 奨学金の返済が苦しくなったらどうすればいいですか?
JASSOには「減額返還制度」(月々の返済額を半分〜1/3に減額して返済期間を延長)と「返還期限猶予制度」(最大10年間の返済猶予)があります。滞納が3ヶ月以上続くと信用情報に記録されるため、苦しくなった場合は滞納前に早めにJASSO窓口へ相談することが重要です。
Q. 「奨学金の民間版」と比較してどちらがいいですか?
民間の教育ローンはJASSOより金利が高い(年3〜6%程度)ことが多いです。まずJASSOの給付型・第一種・第二種を最大限活用し、それでも不足する場合に国の教育ローン(日本政策金融公庫・年3.75%:2026年5月時点。日銀利上げで上昇)→民間教育ローンの順で検討することが、総コストを最小化する基本的な順序です。
まとめ
JASSOの奨学金制度は、家計状況・学力・進学先によって選択肢が大きく異なります。
- まず給付型(返済不要)を確認する:年収380万円以下の世帯は必ず申請を検討
- 第一種(無利子)を最優先:学力基準を維持して無利子で借りることが最もコストが低い
- 第二種は必要最小限:月額を「実際の不足額」から逆算して決める
- 保証制度は状況に応じて選択:機関保証は保証料がかかるが保証人不要
- 入学時特別増額は振込タイミングに注意:入学前費用の支払いには間に合わない
- 借りる前に返済額を計算する:手取りの10%以内に収まる借入総額が目安
奨学金は将来の自分への借金です。在学中の4年間より、卒業後の20年間の返済の方がはるかに長い——この視点を持って、借入額を決めることが最も大切なステップです。
奨学金返済シミュレーション
借入総額、金利(一種・二種)、返済期間を入力して、卒業後の月々の返済額と総支払額を計算。
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