住宅ローン控除(減税)の2024〜2026年最新情報と計算シミュレーション
省エネ基準適合が必須化された住宅ローン控除(0.7%・13年)の控除額計算、ペアローンのダブル活用、2026年の金利上昇による逆ざや消失を解説。
執筆:しぐ ・ 更新日: 2026-05-29
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、年末のローン残高の0.7%が13年間、所得税・住民税から直接差し引かれる制度です。うまく活用すれば13年間で200〜400万円規模の節税になります(金額は住宅の性能区分・借入額・年収によって大きく変わります)。
ただし2024年以降、制度が大きく変わりました。「省エネ基準を満たさない新築住宅」の控除限度額がゼロになり、「どんな家でも控除が受けられる」時代が終わりました。また2026年現在、日銀の利上げで住宅ローン金利が上昇し、かつての「金利より控除率が高い逆ざや」という恩恵が縮小しつつある点も、戦略に影響します。
1. 現行制度の基本構造(2026年時点)
住宅ローン控除の仕組み
毎年12月31日時点の住宅ローン残高 × 0.7%が、その年の所得税から差し引かれます。所得税の還付額が控除額に満たない場合は、住民税からも所得税の課税総所得金額等の5%(最大9.75万円)まで控除されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 控除率 | 0.7%(2022年改正以降) |
| 控除期間 | 新築13年・中古10年 |
| 適用条件 | 床面積50㎡以上・合計所得2,000万円以下等 |
| 対象 | 年末ローン残高(借入限度額の範囲内) |
2. 省エネ基準別の借入限度額(2024年〜2025年入居分)
2024年以降に入居する新築住宅では、省エネ性能によって控除上限額が大きく異なります。
新築住宅・買取再販(2024年・2025年入居分)
| 住宅の性能 | 借入限度額(一般世帯) | 借入限度額(子育て・若者夫婦世帯) | 控除期間 | 一般世帯の13年最大控除総額(目安) |
|---|---|---|---|---|
| 長期優良住宅・低炭素住宅 | 4,500万円 | 5,000万円 | 13年 | 約409.5万円 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 | 13年 | 約318.5万円 |
| 省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 4,000万円 | 13年 | 約273万円 |
| その他の住宅(省エネ基準未達の新築) | 0万円 | 0万円 | — | 0円 |
中古住宅(個人間売買・買取再販でない場合・2024〜2025年入居分)
| 住宅の種類 | 借入限度額 | 控除期間 | 10年間の最大控除総額(目安) |
|---|---|---|---|
| 長期優良住宅等(認定済み) | 3,000万円 | 10年 | 約210万円 |
| その他の中古住宅 | 2,000万円 | 10年 | 約140万円 |
中古住宅は築年数等の要件(1982年以降建築か、耐震基準適合証明等)を確認することが必要です。
2026年(令和8年)以降入居の改正点
令和8年度税制改正で、住宅ローン控除の適用期限が5年延長され、2026年1月1日〜2030年12月31日に入居した分まで対象になりました。あわせて次の拡充・見直しが行われています(国土交通省・令和8年度税制改正大綱)。
| 改正項目 | 内容 |
|---|---|
| 中古(既存)住宅の拡充 | 認定長期優良・低炭素・ZEH水準の中古住宅は借入限度額が3,000万円→3,500万円(子育て・若者夫婦世帯は4,500万円)、省エネ基準適合の中古住宅は2,000万円(同3,000万円)に。これら省エネ性能が高い中古住宅は控除期間が10年→13年に拡充 |
| 子育て・若者夫婦世帯の上乗せ継続 | 新築の借入限度額上乗せ(長期優良5,000・ZEH4,500・省エネ4,000万円)が2026年以降も維持 |
| 床面積要件の緩和 | 40㎡以上に緩和(合計所得1,000万円超の人、および子育て世帯等の上乗せ措置利用者は50㎡以上) |
| 省エネ基準適合住宅(新築・一般世帯)の縮小 | 借入限度額が段階的に引き下げられ、2028年以降の新築は経過措置を除き原則対象外となる方向 |
3. 年収別の控除額シミュレーション
控除は「所得税額」の範囲内でしか受けられません。控除額が所得税を超える場合は、住民税から一部補完されます(上限は所得税の課税総所得金額等×5%、最大9.75万円)。
ZEH水準住宅・借入3,500万円の場合(金利0.7%・35年返済・年収600万円の例)
| 年末残高(目安) | 控除額(0.7%) | 実際に控除される額(所得税+住民税) |
|---|---|---|
| 1年目:約3,410万円 | 約23.9万円 | 約23.9万円(全額活用) |
| 5年目:約3,050万円 | 約21.4万円 | 約21.4万円 |
| 10年目:約2,590万円 | 約18.1万円 | 約18.1万円 |
| 13年目:約2,300万円 | 約16.1万円 | 約16.1万円 |
| 13年間合計 | 約260万円 | — |
年末残高は金利0.7%・35年返済を前提とした目安です。年収600万円の場合、控除額が最も大きい1年目(約23.9万円)でも、所得税(約14.9万円)+住民税からの控除(上限約9.75万円)の合計枠内に収まるため、全額を控除に充てられます(所得税分は還付、住民税分は翌年度の住民税から軽減されます)。
年収別の所得税・住民税の納税額目安
| 年収 | 所得税(目安) | 住民税(目安) | 住民税からの控除上限 | 最大控除活用可能額 |
|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 約5.8万円 | 約18.0万円 | 約5.7万円 | 約11.5万円 |
| 500万円 | 約9.1万円 | 約24.4万円 | 約8.9万円 | 約18.0万円 |
| 600万円 | 約14.9万円 | 約31.0万円 | 9.75万円(上限) | 約24.7万円 |
| 800万円 | 約43.6万円 | 約45.6万円 | 9.75万円(上限) | 約53.3万円 |
年収400万円の場合、控除額が年間24万円でも実際に受け取れるのは約11.5万円(所得税5.8万円+住民税上限5.7万円)が上限です。高い控除額を設定しても、納税額が少なければ「使い切れない控除」になります。
4. ペアローン・連帯債務でのダブル控除戦略
夫婦共働きでペアローンまたは連帯債務を組む場合、それぞれが住宅ローン控除を受けられます。
ダブル控除の効果(ZEH住宅・夫3,000万円・妻1,500万円借入の例)
| 借入者 | 年末残高(1年目) | 控除額(0.7%) | 年収(目安) | 実際の還付 |
|---|---|---|---|---|
| 夫 | 約2,940万円 | 約20.6万円 | 600万円 | 約20.6万円 |
| 妻 | 約1,470万円 | 約10.3万円 | 400万円 | 約10.3万円 |
| 合計 | — | 約30.9万円 | — | 約30.9万円 |
単独ローン(夫のみ4,500万円借入)の場合と比べて、同じ借入額でも妻の控除枠が加わることで、世帯全体の年間還付額が増えます。
ダブル控除の注意点
育休・産休中の控除の無駄遣い: 妻が産休・育休に入ると、その年の妻の課税所得が大幅に減少します(育休中は給与が出ない場合、所得税がほぼゼロに)。控除額は変わらなくても、還付されるべき所得税がなければ、控除の一部が無駄になります。
持分比率の決め方: ペアローンや連帯債務の持分比率(夫何%・妻何%)は、実際の出資比率に合わせて設定します。実態と異なる比率で登記すると、贈与税の問題が生じる可能性があります。
5. 2026年の「逆ざや消失」問題
金利と控除率の関係の変化
2020〜2022年頃、変動金利の住宅ローンは年0.4〜0.5%程度でした。控除率0.7%の方が高く、「ローンを借りていることで実質的に利益が出る(逆ざや)」という状況が生まれていました。
しかし日銀の利上げで変動金利が上昇した2026年現在、変動金利は1.0〜2.0%程度まで上昇しているケースがあります。
| 状況 | 金利 | 控除率 | 逆ざやの有無 |
|---|---|---|---|
| 2020〜2022年 | 0.4〜0.5% | 0.7% | 逆ざや(ローンを借りると得) |
| 2024〜2025年 | 0.7〜1.2% | 0.7% | ほぼ同等(拮抗) |
| 2026年(一部) | 1.5〜2.0% | 0.7% | 順ざや(ローンの方が高い) |
変動金利が1.5%以上になっている場合、控除率0.7%との差がプラスになり、「繰り上げ返済しない方が得」という論理が逆転します。
2026年現在の繰り上げ返済判断基準
| 実際の金利 | 繰り上げ返済の判断 |
|---|---|
| 0.7%以下(現在はほぼなし) | 繰り上げ返済は控除期間中は不利 |
| 0.7〜1.5%程度 | 微差・心理的安定を優先しても良い |
| 1.5%超 | 控除期間中でも繰り上げ返済の検討価値あり |
| 3%超 | 積極的に繰り上げ返済を優先する |
6. 控除期間中の資金活用戦略
低金利・逆ざや環境の場合(金利が0.7%未満)
控除期間中(13年間)は繰り上げ返済せず、手元資金を以下の優先順位で活用することが合理的です:
- 緊急資金(生活費3〜6ヶ月分)を現金で確保
- 新NISAの積立枠(月10万円)をフル活用
- 残った資金を繰り上げ返済用として積み立て(控除期間終了後に使用)
金利が控除率を超えた場合(金利>0.7%)
- 繰り上げ返済の「利息削減効果」と「控除額の減少」を比較する
- 金利が2%以上の場合は、控除期間中でも繰り上げ返済が有利になるケースがある
- 変動金利で借りている場合は、毎年金利を確認して判断を更新する
7. 初年度の確定申告と2年目以降の手続き
初年度(必ず確定申告が必要)
| 必要書類 | 入手先 |
|---|---|
| 確定申告書(様式A・B) | 税務署・国税庁ウェブサイト |
| 住宅ローンの年末残高証明書 | 金融機関から12月に送付 |
| 登記事項証明書 | 法務局 |
| 売買契約書または工事請負契約書 | 購入・建築時の書類 |
| 住宅性能評価書 or 省エネ基準適合証明書 | 不動産会社・建設会社 |
| マイナンバーカードまたは通知カード | 手元に準備 |
2年目以降
勤め先に「住宅借入金等特別控除申告書」と「年末残高証明書」を年末調整で提出するだけで手続きが完了します(年末調整で対応可能)。
よくある質問
Q. 2024年以前に建築確認を受けた「その他の住宅」はどうなりますか?
2023年12月31日以前に建築確認を受けた物件の場合、2024・2025年入居でも借入限度額2,000万円・控除期間10年の旧制度が適用されます(0円にはなりません)。ただし、これは特例であり、今後新たに建築確認を取る「一般住宅(省エネ基準未達)」は控除がゼロになります。
Q. 転勤で住宅を離れると控除はどうなりますか?
住宅ローン控除は「本人が居住している」ことが条件です。転勤などで一時的に離れる場合は控除が止まります。ただし転勤終了後に戻り、再度居住する場合は残りの控除期間を再開できます(再適用の要件を事前に税務署に確認することが重要です)。
Q. リフォームローンにも住宅ローン控除は使えますか?
一定の要件を満たすリフォーム(耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修等)のローンにも、「住宅特定改修特別税額控除」という別制度があります。住宅ローン控除とは異なりますが、合わせて活用することで節税効果を最大化できる場合があります。
まとめ
2024年以降の住宅ローン控除は「省エネ性能による格差制度」に変わりました。
- 省エネ基準適合証明書の取得が必須:省エネ未達の新築は控除ゼロ
- 控除額は年収・納税額で上限が決まる:年収400万円では年約11.5万円が実質的な上限
- ペアローンはダブル控除で有利:育休・産休中の収入減との兼ね合いも検討
- 2026年は金利上昇で「逆ざや」が縮小:繰り上げ返済の判断は金利水準を確認して行う
- 初年度は確定申告・2年目以降は年末調整:省エネ証明書など書類を事前に揃えておく
「とりあえずローンを組めば控除を受けられる」時代は終わっています。物件の省エネ性能確認と、自分の年収・納税額に合った借入計画を立てることが、控除を最大化する出発点です。
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