実質リターンとは?インフレ・税引後の「手取り利回り」で考える
年利5%の「5%」は名目リターン。インフレと税金を引いた実質リターンの計算方法と、複利シミュレーションで何%を使うべきかを具体例で整理します。
執筆:しぐ ・ 更新日: 2026-05-31
「年利5%で運用すれば資産は増える」とよく言われます。しかし、その5%がそのまま使えるお金になるわけではありません。
表面上の利回り(名目リターン)からは、インフレによる購買力の目減りと、運用益にかかる税金が差し引かれます。残るのが「手取りの実質リターン」です。
この記事では、名目リターンから実質リターンを出す計算方法と、複利シミュレーションで何%を入力すべきかを、具体的な数字で整理します。
1. 名目・実質・税引後の3つのリターン
リターンには「名目」「実質」「税引後」の3段階がある。混同すると将来資産を過大評価しやすい。
3つの違いを整理します。
- 名目リターン:表面上の利回り。「年利5%」と言うときの5%
- 実質リターン:名目からインフレ率を引いたもの。購買力ベースの増え方
- 税引後リターン:運用益への課税(課税口座なら20.315%)を引いたもの
たとえば名目5%でも、インフレ2%・課税を考えると、手元に残る購買力の増加は年2%前後まで下がります。
「5%で回る」と「使えるお金が5%増える」は別物、という点がこの記事の出発点です。
2. インフレを引く:実質リターンの計算
実質リターンは「名目リターン − インフレ率」でおおよそ求められる。
正確には次の式です。
実質リターン = (1 + 名目リターン) ÷ (1 + インフレ率) − 1
名目5%・インフレ2%で計算すると、(1.05 ÷ 1.02) − 1 = 約2.94%。簡易的には「5% − 2% = 約3%」と覚えておけば十分です。
日本は長くデフレ傾向でしたが、近年は物価上昇が続いています。2026年時点では、日銀が目標とする年2%程度を一つの目安に置くのが現実的です。
インフレ率が高い局面ほど、名目リターンの「見かけの増え方」と実際の購買力の差は大きくなります。
3. 税金を引く:課税口座とNISAの差
運用益には課税口座で20.315%かかる。NISA口座なら非課税のため、税引後リターンは名目に近い。
課税口座(特定口座など)では、利益に対して**一律20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)**が課税されます(2026年時点)。
名目5%の運用益のうち約2割が税金で引かれるため、税引後リターンは**5% × (1 − 0.20315) ≈ 約3.98%**になります。
一方、NISA口座(つみたて投資枠・成長投資枠)の運用益は非課税です。同じ名目5%なら、税引後リターンもほぼ5%のまま残ります。
| 区分(名目リターン5%想定) | 課税口座 | NISA口座 |
|---|---|---|
| 税引後リターン(目安) | 約3.98% | 約5%(非課税) |
| インフレ2%も引いた実質手取り | 約1.9% | 約2.9% |
同じ商品・同じ利回りでも、どの口座で運用するかで手取りリターンは1%近く変わります。長期になるほどこの差は複利で拡大します。
自分の積立額・年数・利回りで「課税口座とNISAで最終資産がどれだけ違うか」を確かめてみると、口座選びの重要性が実感できます。
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4. インフレ+税の両方を引いた「手取り実質リターン」
名目5%は、インフレと課税を両方引くと実質2%前後まで下がる。これが購買力ベースの本当の増え方。
1,000万円を名目5%で1年運用したケースで分解します。
- 名目の増加:1,000万円 × 5% = +50万円
- 税引後(課税口座・利益に20.315%):50万円 × (1 − 0.20315) ≈ +約40万円
- さらにインフレ2%で元本全体の購買力が目減り(1,000万円 × 2% = 20万円の目減り):実質的な増加は**+約19〜20万円**(実質手取り利回り約1.9〜2.0%)
「50万円増えた」と見えても、購買力ベースで本当に豊かになったのはその4割程度ということになります。
これは悲観する話ではなく、前提を控えめに置くほど計画が崩れにくいという意味です。
5. シミュレーションで何%を使うべきか
目的に応じて入力する利回りを変えるのがコツ。「将来の購買力」を知りたいなら実質リターンで計算する。
複利シミュレーションでの使い分けの目安です。
- 将来の購買力で考えたい:実質リターン(名目5% − インフレ2% ≈ 3%)を入力する
- 名目の金額で考えたい:名目5%で計算し、結果を「今の物価に換算するとやや少なめ」と補正して見る
- NISA枠で運用する分:税引後 ≈ 名目なので、税金の差し引きは不要(インフレ調整だけ行う)
控えめな前提(3%前後)で必要額に届く計画なら、想定が外れても耐えやすくなります。逆に名目7%など強気の前提に頼った計画は、相場が振るわない期間に崩れやすくなります。
よくある誤解
Q. 年利5%なら、毎年確実に5%ずつ増えるのですか?
いいえ。5%はあくまで長期平均の試算値で、単年ではプラスにもマイナスにも大きく振れます。さらに購買力ベースでは、インフレと税金を引いた実質リターンが実際の増え方に近くなります。
Q. インフレと税金、どちらの影響が大きいですか?
条件によって異なります。課税口座では税金(名目の約2割)の影響が大きく、NISAではインフレの影響が中心になります。両方を引いた実質手取りで見るのが安全です。
まとめ
- リターンには名目・実質・税引後の3段階があり、使えるお金に近いのは実質手取りリターン
- 実質リターン ≈ 名目 − インフレ率(名目5%・インフレ2%なら約3%)
- 課税口座は運用益に20.315%、NISAは非課税。口座選びで手取りが1%近く変わる
- 名目5%は、インフレと税金を両方引くと実質2%前後(課税口座の場合)になる
- 将来の購買力で計画するなら、シミュレーションには**控えめな実質リターン(NISAなら3%程度)**を入れると崩れにくい
実際の積立額・年数・利回りを入れて、名目と実質、課税口座とNISAで最終資産がどれだけ変わるかを試算してみましょう。
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