住宅ローン「固定金利」と「変動金利」徹底比較:35年後の勝者は?
金利上昇局面で変動金利はリスク?固定(フラット35)との総支払額差・125%ルールの盲点・2026年の繰り上げ返済判断まで、3,500万円借入を例に徹底比較します。
執筆:しぐ ・ 更新日: 2026-06-26
住宅ローンを組む際の最初の選択が「固定か変動か」です。この選択は35年間の家計に影響を与え、同じ3,500万円の借入でも総支払額に数百万円以上の差が生まれます。
2026年現在、日銀の利上げによって変動金利も上昇しており、「変動で借りれば安い」という時代が終わりつつあります。それでも固定との金利差は依然として大きく、どちらが有利かは「今後の金利がどう動くか」という予測と、「金利上昇に耐えられる家計かどうか」という条件の両方で決まります。
1. 2026年時点の金利水準
変動金利の現状
日銀の政策金利引き上げ(2024〜2026年)により、変動型住宅ローンの基準金利も上昇しています。
| 時期 | 主要ネット銀行の変動金利(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| 2021〜2022年 | 0.3〜0.4% | 過去最低水準 |
| 2023〜2024年 | 0.4〜0.7% | 日銀政策変更前後 |
| 2025〜2026年 | 0.7〜1.5% | 利上げ反映後 |
2026年現在、変動金利は各行の優遇幅にもよりますが、0.7〜1.5%程度が一般的な水準です。「0.3%台」という時代は終わっています。
固定金利(フラット35)の現状
| 借入期間 | 2026年6月の金利目安 |
|---|---|
| フラット35・全期間固定(21〜35年) | 約3.2%(最頻金利3.21%) |
| フラット35・全期間固定(20年以下) | 約2.9%(最頻金利2.89%) |
| 民間・当初固定10年 | 2.9〜3.2%程度 |
固定金利は2026年に入って急上昇しており、フラット35(21〜35年・融資率9割以下)の最頻金利は2026年6月に3.21%と、現行制度になって以来はじめて3%を超えました(前月比+0.5%)。2021年頃の1.3〜1.4%台からは2倍前後の水準です。
2. 3,500万円借入・35年での総支払額比較
金利別シミュレーション
| 金利 | 月々返済額 | 35年総支払額 | 総利息 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 変動0.7%(低金利のネット銀行例) | 94,000円 | 3,948万円 | 448万円 | — |
| 変動1.0% | 98,800円 | 4,150万円 | 650万円 | 主要行の中心水準 |
| 変動1.5% | 107,200円 | 4,502万円 | 1,002万円 | — |
| 固定3.2% | 138,800円 | 5,831万円 | 2,331万円 | フラット35水準(最頻3.21%) |
変動1.5%と固定3.2%(フラット35)の総利息差は約1,330万円。2026年はフラット35が3%超まで上昇したため、固定を選ぶ「保険料」は以前より大幅に重くなりました。固定を選ぶことは「金利上昇に備える安心のために、現時点で1,000万円超の追加コストを払う」という意思決定になっています。
3. 変動金利の金利上昇リスクを数字で見る
金利上昇シナリオ別の総支払額(3,500万円・35年)
変動金利が途中から上昇した場合、最終的な総支払額はいくらになるか試算します。
| シナリオ | 金利の推移 | 月々最大返済額 | 総支払額(概算) |
|---|---|---|---|
| A:金利変わらず | 全期間1.0% | 9.9万円 | 約4,150万円 |
| B:5年後に+1% | 1.0%→2.0%(5年後) | 10.7万円 | 約4,400万円 |
| C:10年後に+2% | 1.0%→3.0%(10年後) | 約11〜12万円 | 約4,700万円 |
| D:急騰シナリオ | 1.0%→4.0%(5年後) | 約12〜13万円 | 約5,000万円 |
固定3.2%(フラット35)の総支払額(約5,831万円)は、上記の急騰シナリオD(5年後に4%へ)でも変動の総支払(約5,000万円)が下回るほど高い水準です。つまり2026年6月時点では、よほど極端な金利上昇が長期間続かない限り、変動のほうが総支払を抑えられる計算になります。ただし「どの程度の金利上昇がありえるか」は誰にも分からず、固定はその不確実性をゼロにする選択肢です。
125%ルールとその盲点
多くの銀行の変動金利には「125%ルール」があります。金利が急騰しても、5年ごとの返済額見直しで「前回の返済額の1.25倍まで」しか引き上げないという激変緩和措置です。
| 状況 | 内容 |
|---|---|
| 現在の返済額 | 10万円 |
| 金利急騰による本来の返済額 | 15万円 |
| 実際の請求額(125%ルール) | 12.5万円(125%上限) |
| 差額の行方 | 「未払利息」として残高に積み上がる |
4. 固定金利のメリットと種類
フラット35の特徴
住宅金融支援機構と民間金融機関が提供する全期間固定金利ローンです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 金利 | 借入時に全期間確定(返済中の変更なし) |
| 対象物件 | 省エネ基準適合等の技術基準を満たす必要あり |
| 125%ルール | なし(金利変動がないため不要) |
| 繰り上げ返済手数料 | 無料 |
| 特徴 | 金利上昇リスクが完全にゼロ |
2026年6月のフラット35(21〜35年・融資率9割以下)の最頻金利は3.21%です。2021年頃の1.3%台から大きく上昇しており、固定の安心を確保するコストは高くなっていますが、今後の金利上昇リスクを完全に排除できる点は変わりません。
当初固定型(当初期間固定)
最初の5年・10年は固定金利、その後は変動金利に切り替わるタイプです。
| タイプ | 金利 | リスク |
|---|---|---|
| 全期間固定 | 約3.2%(フラット35) | 金利リスクなし |
| 当初10年固定 | 2.9〜3.2% | 10年後に変動金利のリスクあり |
| 当初5年固定 | 2.0〜2.8%程度(各行差大) | 5年後から変動金利のリスクあり |
| 変動型 | 0.9〜1.5% | 常に金利変動リスクあり |
当初固定型は「しばらくは返済額を安定させたい・10年後以降の状況に応じて繰り上げ返済で対応する」という戦略に向きます。
5. ミックス型:リスクを分散する第3の選択
借入の一部を固定、一部を変動にする「ミックス型」も選択肢の一つです。
| 組み合わせ例(3,500万円借入) | 内容 |
|---|---|
| 変動50% + 固定50% | 1,750万円ずつ・リスクを二分 |
| 変動70% + 固定30% | 変動メインで固定を保険として持つ |
| 変動30% + 固定70% | 固定メインで変動分の低金利メリットを少し取る |
ミックス型の利点はリスクの分散ですが、手続きが2本になるため事務的な手間が増えます。また金利優遇条件が各行によって異なるため、実質金利を計算した上で検討することが必要です。
6. 2026年環境での繰り上げ返済戦略との組み合わせ
住宅ローン控除との関係も考慮する必要があります。
| 実際の借入金利 | 控除率(0.7%) | 判断 |
|---|---|---|
| 0.7%未満 | 0.7% | 逆ざや(控除>金利)・控除期間中の繰り上げ返済は控除減で非推奨 |
| 0.7〜1.0% | 0.7% | ほぼ拮抗・控除期間中は投資/貯蓄をやや優先 |
| 1.0〜1.5% | 0.7% | 順ざや・繰り上げ返済は控除期間後を優先 |
| 2.0%以上 | 0.7% | 順ざや拡大・控除期間中でも繰り上げ検討価値あり |
2026年の変動金利(0.7〜1.5%)では、住宅ローン控除(0.7%)との差が縮まっています。「控除がある13年間は繰り上げ返済しない方が得」という2020〜2022年の常識は、2026年には必ずしも当てはまりません。
7. どちらを選ぶかの判断フレームワーク
変動金利が向く条件
| 条件 | 理由 |
|---|---|
| 借入額が年収の5倍未満 | 金利上昇があっても家計への打撃が小さい |
| 共働きで世帯収入に余裕がある | 金利上昇時に繰り上げ返済で対応できる |
| 金利動向を定期的にチェックできる | 上昇局面での早期対応が可能 |
| 借入期間が15〜20年以下 | 短期間なら金利上昇の影響が限定的 |
固定金利が向く条件
| 条件 | 理由 |
|---|---|
| 借入額が年収の6〜7倍以上 | 返済額の変化に耐える余裕が少ない |
| 片働きや収入が不安定 | 返済額変動のリスクを取れない |
| 近い将来に支出増が見込まれる(教育費等) | 確定した返済額で家計設計したい |
| 金利の変動を気にせず生活したい | 精神的安定のコスト(保険料)として割り切る |
よくある質問
Q. 変動金利で借りた後、固定に切り替えることはできますか?
可能ですが、「借り換え」という手続きになります。新たな金融機関で固定金利の住宅ローンを組み、現在のローンを完済する形です。借り換え時には諸費用(数十万円)が発生します。また、固定に切り替えるタイミングで金利が既に上昇していれば、固定金利水準も高くなっています。
Q. フラット35を利用するには、省エネ基準を満たす物件が必要ですか?
フラット35には住宅の技術基準(断熱性能等)があります。物件が基準を満たさない場合は利用できません。また住宅ローン控除(2024年〜)も省エネ基準未達の新築は対象外です。物件の省エネ性能は、ローン選択と控除の両面で重要な条件です。
Q. 金利タイプを決める前に、何を最優先に考えればよいですか?
「金利が2%上昇した場合でも、毎月の返済額を支払えるか」というストレステストを家計で行うことが第一です。これが「否」ならば固定が安全です。「はい、対応できる」なら変動の低金利メリットを取ることが合理的な選択になります。家計の耐性が判断の基準であり、「どちらが得か」という予測ではなく「どちらのリスクに耐えられるか」が本質的な問いです。
まとめ
2026年現在、日銀の利上げで変動金利も上昇しましたが、固定金利(フラット35)はそれ以上に急騰し、変動と固定の差はむしろ拡大しています。当面のコスト面では変動が有利な状況が続いています。
- 2026年の変動金利は0.9〜1.5%:過去最低水準より上昇したが、固定との差は拡大している
- 固定3.2%(フラット35)との差は年間約48万円:これが「安心を買う保険料」で、2026年は以前より大幅に重くなった
- 125%ルールの未払利息リスクは見落とされやすい:金利急騰時の隠れた爆弾
- 当初固定型という中間選択肢もある:全期間固定より安く、全変動よりリスクが低い
- 繰り上げ返済と住宅ローン控除の関係も変わった:金利1%超なら控除期間中でも繰り上げを検討
- 家計の耐性で選ぶ:「どちらが得か」より「どちらのリスクに耐えられるか」が判断基準
正解は人によって異なります。重要なのは、金利タイプを選ぶ根拠(家計の耐性・ライフプラン・借入額)を明確にした上で選択することです。
固定 vs 変動シミュレーション
借入額と金利上昇シナリオを設定して、35年間の総支払額差と月々の変化を比較。
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