住宅ローン「固定金利」と「変動金利」徹底比較:35年後の勝者は?
金利上昇局面で変動金利はリスク?固定(フラット35)との総支払額差・125%ルールの盲点・2026年の繰り上げ返済判断まで、3,500万円借入を例に徹底比較します。
執筆:しぐ ・ 更新日: 2026-08-18
住宅ローンを組む際の最初の選択が「固定か変動か」です。この選択は35年間の家計に影響を与え、同じ3,500万円の借入でも総支払額に数百万円以上の差が生まれます。
2026年現在、日銀の利上げによって変動金利も上昇しており、「変動で借りれば安い」という時代が終わりつつあります。それでも固定との金利差は依然として大きく、どちらが有利かは「今後の金利がどう動くか」という予測と、「金利上昇に耐えられる家計かどうか」という条件の両方で決まります。
1. 2026年時点の金利水準
変動金利の現状
日銀の政策金利引き上げ(2024〜2026年)により、変動型住宅ローンの基準金利も上昇しています。
| 時期 | 主要ネット銀行の変動金利(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| 2021〜2022年 | 0.3〜0.4% | 過去最低水準 |
| 2023〜2024年 | 0.4〜0.7% | 日銀政策変更前後 |
| 2025〜2026年 | 0.9〜1.5% | 利上げ反映後 |
2026年現在、変動金利は各行の優遇幅にもよりますが、0.9〜1.5%程度が一般的な水準です。「0.3%台」という時代は終わっています。
固定金利(フラット35)の現状
| 借入期間 | 2026年7月の金利目安 |
|---|---|
| フラット35・全期間固定(21〜35年) | 約3.1%(最頻金利3.14%) |
| フラット35・全期間固定(20年以下) | 約2.8%(最頻金利2.82%) |
| 民間・当初固定10年 | 2.9〜3.2%程度 |
固定金利は2026年に入って急上昇しており、フラット35(21〜35年・融資率9割以下)の最頻金利は2026年6月に3.21%と現行制度になって以来はじめて3%を超え、7月は3.14%と3%台が続いています。2021年頃の1.3〜1.4%台からは2倍以上の水準です。
2. 3,500万円借入・35年での総支払額比較
金利別シミュレーション
| 金利 | 月々返済額 | 35年総支払額 | 総利息 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 変動0.7%(過去の低金利で借りた例。2026年の新規最優遇は0.9%〜) | 94,000円 | 3,947万円 | 447万円 | — |
| 変動1.0% | 98,800円 | 4,150万円 | 650万円 | 主要行の中心水準 |
| 変動1.5% | 107,200円 | 4,501万円 | 1,001万円 | — |
| 固定3.14% | 137,400円 | 5,773万円 | 2,273万円 | フラット35水準(2026年7月最頻3.14%) |
変動1.5%と固定3.14%(フラット35)の総利息差は約1,272万円。2026年はフラット35が3%超まで上昇したため、固定を選ぶ「保険料」は以前より大幅に重くなりました。固定を選ぶことは「金利上昇に備える安心のために、現時点で1,000万円超の追加コストを払う」という意思決定になっています。
3. 変動金利の金利上昇リスクを数字で見る
金利上昇シナリオ別の総支払額(3,500万円・35年)
変動金利が途中から上昇した場合、最終的な総支払額はいくらになるか試算します。
| シナリオ | 金利の推移 | 月々最大返済額 | 総支払額(概算) |
|---|---|---|---|
| A:金利変わらず | 全期間1.0% | 9.9万円 | 約4,150万円 |
| B:5年後に+1% | 1.0%→2.0%(5年後) | 11.4万円 | 約4,680万円 |
| C:10年後に+2% | 1.0%→3.0%(10年後) | 12.4万円 | 約4,915万円 |
| D:急騰シナリオ | 1.0%→4.0%(5年後) | 14.7万円 | 約5,872万円 |
固定3.14%(フラット35)の総支払額は約5,773万円です。シナリオA〜C(5年後に2%、10年後に3%まで)であれば変動のほうが総支払を抑えられますが、急騰シナリオD(5年後に4%)では変動が約5,872万円となり、固定を上回ります。分岐点は5年後におよそ3.84%で、そこを超えると固定のほうが総支払は少なくなる計算です(5年後に3.9%まで上がると、変動は約5,809万円で固定を約36万円上回ります)。
つまり「変動が有利」と言えるのは、上昇が一定の範囲に収まった場合に限られます。どの程度の上昇がありうるかは誰にも分からず、固定はその不確実性をコストと引き換えに小さくする選択肢です。なお、125%ルールの上限は当初返済額98,800円の1.25倍=月123,500円です。シナリオCで必要になる月124,318円もDの月146,651円もこの上限を超えるため、請求額はいったん抑えられますが、超過分は未払利息として残り、総支払額が減るわけではありません。
125%ルールとその盲点
多くの銀行の変動金利には「125%ルール」があります。金利が急騰しても、5年ごとの返済額見直しで「前回の返済額の1.25倍まで」しか引き上げないという激変緩和措置です。
| 状況 | 内容 |
|---|---|
| 現在の返済額 | 10万円 |
| 金利急騰による本来の返済額 | 15万円 |
| 実際の請求額(125%ルール) | 12.5万円(125%上限) |
| 差額の行方 | 「未払利息」として残高に積み上がる |
4. 固定金利のメリットと種類
フラット35の特徴
住宅金融支援機構と民間金融機関が提供する全期間固定金利ローンです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 金利 | 借入時に全期間確定(返済中の変更なし) |
| 対象物件 | 省エネ基準適合等の技術基準を満たす必要あり |
| 125%ルール | なし(金利変動がないため不要) |
| 繰り上げ返済手数料 | 無料 |
| 特徴 | 返済額が完済まで変わらず、金利上昇の影響を受けない |
2026年7月のフラット35(21〜35年・融資率9割以下)の最頻金利は3.14%です(6月は3.21%)。2021年頃の1.3%台から大きく上昇しており、固定の安心を確保するコストは高くなっていますが、借入時の金利が完済まで変わらず、その後の金利上昇による返済額の増加を避けられる点は変わりません。
当初固定型(当初期間固定)
最初の5年・10年は固定金利、その後は変動金利に切り替わるタイプです。
| タイプ | 金利 | リスク |
|---|---|---|
| 全期間固定 | 約3.1%(フラット35) | 金利変動の影響を受けない |
| 当初10年固定 | 2.9〜3.2% | 10年後に変動金利のリスクあり |
| 当初5年固定 | 2.0〜2.8%程度(各行差大) | 5年後から変動金利のリスクあり |
| 変動型 | 0.9〜1.5% | 常に金利変動リスクあり |
当初固定型は「しばらくは返済額を安定させたい・10年後以降の状況に応じて繰り上げ返済で対応する」という戦略に向きます。
5. ミックス型:リスクを分散する第3の選択
借入の一部を固定、一部を変動にする「ミックス型」も選択肢の一つです。
| 組み合わせ例(3,500万円借入) | 内容 |
|---|---|
| 変動50% + 固定50% | 1,750万円ずつ・リスクを二分 |
| 変動70% + 固定30% | 変動メインで固定を保険として持つ |
| 変動30% + 固定70% | 固定メインで変動分の低金利メリットを少し取る |
ミックス型の利点はリスクの分散ですが、手続きが2本になるため事務的な手間が増えます。また金利優遇条件が各行によって異なるため、実質金利を計算した上で検討することが必要です。
6. 2026年環境での繰り上げ返済戦略との組み合わせ
住宅ローン控除との関係も考慮する必要があります。
| 実際の借入金利 | 控除率(0.7%) | 判断 |
|---|---|---|
| 0.7%未満 | 0.7% | 逆ざや(控除>金利)・控除期間中の繰り上げ返済は控除減で非推奨 |
| 0.7〜1.0% | 0.7% | ほぼ拮抗・控除期間中は投資/貯蓄をやや優先 |
| 1.0〜1.5% | 0.7% | 順ざや・繰り上げ返済は控除期間後を優先 |
| 2.0%以上 | 0.7% | 順ざや拡大・控除期間中でも繰り上げ検討価値あり |
2026年の変動金利(0.9〜1.5%)は住宅ローン控除(0.7%)を上回る水準になりつつあります。「控除がある13年間は繰り上げ返済しない方が得」という2020〜2022年の常識は、2026年には必ずしも当てはまりません。
7. どちらを選ぶかの判断フレームワーク
変動金利が向く条件
| 条件 | 理由 |
|---|---|
| 借入額が年収の5倍未満 | 金利上昇があっても家計への打撃が小さい |
| 共働きで世帯収入に余裕がある | 金利上昇時に繰り上げ返済で対応できる |
| 金利動向を定期的にチェックできる | 上昇局面での早期対応が可能 |
| 借入期間が15〜20年以下 | 短期間なら金利上昇の影響が限定的 |
固定金利が向く条件
| 条件 | 理由 |
|---|---|
| 借入額が年収の6〜7倍以上 | 返済額の変化に耐える余裕が少ない |
| 片働きや収入が不安定 | 返済額変動のリスクを取れない |
| 近い将来に支出増が見込まれる(教育費等) | 確定した返済額で家計設計したい |
| 金利の変動を気にせず生活したい | 精神的安定のコスト(保険料)として割り切る |
よくある質問
Q. 変動金利で借りた後、固定に切り替えることはできますか?
可能ですが、「借り換え」という手続きになります。新たな金融機関で固定金利の住宅ローンを組み、現在のローンを完済する形です。借り換え時には諸費用(数十万円)が発生します。また、固定に切り替えるタイミングで金利が既に上昇していれば、固定金利水準も高くなっています。
Q. フラット35を利用するには、省エネ基準を満たす物件が必要ですか?
フラット35には住宅の技術基準(断熱性能等)があります。物件が基準を満たさない場合は利用できません。また住宅ローン控除(2024年〜)も、省エネ基準未達の新築は原則として対象外です(2023年12月31日以前に建築確認を受けたか2024年6月30日以前に建築された家屋なら、経過措置で借入限度額2,000万円・控除期間10年の対象になります)。物件の省エネ性能は、ローン選択と控除の両面で重要な条件です。
Q. 金利タイプを決める前に、何を最優先に考えればよいですか?
「金利が2%上昇した場合でも、毎月の返済額を支払えるか」というストレステストを家計で行うことが第一です。これが「否」ならば固定が安全です。「はい、対応できる」なら変動の低金利メリットを取ることが合理的な選択になります。家計の耐性が判断の基準であり、「どちらが得か」という予測ではなく「どちらのリスクに耐えられるか」が本質的な問いです。
まとめ
2026年現在、日銀の利上げで変動金利も上昇しましたが、固定金利(フラット35)はそれ以上に急騰し、変動と固定の差はむしろ拡大しています。当面のコスト面では変動が有利な状況が続いています。
- 2026年の変動金利は0.9〜1.5%:過去最低水準より上昇したが、固定との差は拡大している
- 固定3.14%(フラット35)との差は年間約46万円:これが「安心を買う保険料」で、2026年は以前より大幅に重くなった
- 125%ルールの未払利息リスクは見落とされやすい:金利急騰時の隠れた爆弾
- 当初固定型という中間選択肢もある:全期間固定より安く、全変動よりリスクが低い
- 繰り上げ返済と住宅ローン控除の関係も変わった:金利が控除率0.7%を下回るうちは控除が金利を上回る(逆ざや)ので繰り上げは非推奨。0.7%を超えると金利負担が勝つが、1.0〜1.5%程度なら差はわずかなので控除期間の終了後を優先し、2%超なら控除期間中でも繰り上げを検討する
- 家計の耐性で選ぶ:「どちらが得か」より「どちらのリスクに耐えられるか」が判断基準
正解は人によって異なります。重要なのは、金利タイプを選ぶ根拠(家計の耐性・ライフプラン・借入額)を明確にした上で選択することです。
固定と変動の総返済額を比べる
プラン比較タブで、プランAに固定金利、プランBに変動金利を入力すると、毎月の返済額と総返済額の差を確認できます。プランBはプランAの値を引き継がないので、借入額と返済期間も同じ値を入れ直してください。金利の上昇シナリオを設定する機能はないため、上昇後の金利を直接入力し、本記事のシナリオ別の総支払額と見比べてください。
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