住宅ローン「固定金利」と「変動金利」徹底比較:35年後の勝者は?

金利上昇局面で変動金利はリスク?固定(フラット35)との総支払額差・125%ルールの盲点・2026年の繰り上げ返済判断まで、3,500万円借入を例に徹底比較します。

住宅ローンを組む際の最初の選択が「固定か変動か」です。この選択は35年間の家計に影響を与え、同じ3,500万円の借入でも総支払額に数百万円以上の差が生まれます。

2026年現在、日銀の利上げによって変動金利も上昇しており、「変動で借りれば安い」という時代が終わりつつあります。それでも固定との金利差は依然として大きく、どちらが有利かは「今後の金利がどう動くか」という予測と、「金利上昇に耐えられる家計かどうか」という条件の両方で決まります。


1. 2026年時点の金利水準

変動金利の現状

日銀の政策金利引き上げ(2024〜2026年)により、変動型住宅ローンの基準金利も上昇しています。

時期主要ネット銀行の変動金利(目安)備考
2021〜2022年0.3〜0.4%過去最低水準
2023〜2024年0.4〜0.7%日銀政策変更前後
2025〜2026年0.7〜1.5%利上げ反映後

2026年現在、変動金利は各行の優遇幅にもよりますが、0.7〜1.5%程度が一般的な水準です。「0.3%台」という時代は終わっています。

固定金利(フラット35)の現状

借入期間2026年6月の金利目安
フラット35・全期間固定(21〜35年)約3.2%(最頻金利3.21%)
フラット35・全期間固定(20年以下)約2.9%(最頻金利2.89%)
民間・当初固定10年2.9〜3.2%程度

固定金利は2026年に入って急上昇しており、フラット35(21〜35年・融資率9割以下)の最頻金利は2026年6月に3.21%と、現行制度になって以来はじめて3%を超えました(前月比+0.5%)。2021年頃の1.3〜1.4%台からは2倍前後の水準です。


2. 3,500万円借入・35年での総支払額比較

金利別シミュレーション

金利月々返済額35年総支払額総利息備考
変動0.7%(低金利のネット銀行例)94,000円3,948万円448万円
変動1.0%98,800円4,150万円650万円主要行の中心水準
変動1.5%107,200円4,502万円1,002万円
固定3.2%138,800円5,831万円2,331万円フラット35水準(最頻3.21%)

変動1.5%と固定3.2%(フラット35)の総利息差は約1,330万円。2026年はフラット35が3%超まで上昇したため、固定を選ぶ「保険料」は以前より大幅に重くなりました。固定を選ぶことは「金利上昇に備える安心のために、現時点で1,000万円超の追加コストを払う」という意思決定になっています。


3. 変動金利の金利上昇リスクを数字で見る

金利上昇シナリオ別の総支払額(3,500万円・35年)

変動金利が途中から上昇した場合、最終的な総支払額はいくらになるか試算します。

シナリオ金利の推移月々最大返済額総支払額(概算)
A:金利変わらず全期間1.0%9.9万円約4,150万円
B:5年後に+1%1.0%→2.0%(5年後)10.7万円約4,400万円
C:10年後に+2%1.0%→3.0%(10年後)約11〜12万円約4,700万円
D:急騰シナリオ1.0%→4.0%(5年後)約12〜13万円約5,000万円

固定3.2%(フラット35)の総支払額(約5,831万円)は、上記の急騰シナリオD(5年後に4%へ)でも変動の総支払(約5,000万円)が下回るほど高い水準です。つまり2026年6月時点では、よほど極端な金利上昇が長期間続かない限り、変動のほうが総支払を抑えられる計算になります。ただし「どの程度の金利上昇がありえるか」は誰にも分からず、固定はその不確実性をゼロにする選択肢です。

125%ルールとその盲点

多くの銀行の変動金利には「125%ルール」があります。金利が急騰しても、5年ごとの返済額見直しで「前回の返済額の1.25倍まで」しか引き上げないという激変緩和措置です。

状況内容
現在の返済額10万円
金利急騰による本来の返済額15万円
実際の請求額(125%ルール)12.5万円(125%上限)
差額の行方「未払利息」として残高に積み上がる

4. 固定金利のメリットと種類

フラット35の特徴

住宅金融支援機構と民間金融機関が提供する全期間固定金利ローンです。

項目内容
金利借入時に全期間確定(返済中の変更なし)
対象物件省エネ基準適合等の技術基準を満たす必要あり
125%ルールなし(金利変動がないため不要)
繰り上げ返済手数料無料
特徴金利上昇リスクが完全にゼロ

2026年6月のフラット35(21〜35年・融資率9割以下)の最頻金利は3.21%です。2021年頃の1.3%台から大きく上昇しており、固定の安心を確保するコストは高くなっていますが、今後の金利上昇リスクを完全に排除できる点は変わりません。

当初固定型(当初期間固定)

最初の5年・10年は固定金利、その後は変動金利に切り替わるタイプです。

タイプ金利リスク
全期間固定約3.2%(フラット35)金利リスクなし
当初10年固定2.9〜3.2%10年後に変動金利のリスクあり
当初5年固定2.0〜2.8%程度(各行差大)5年後から変動金利のリスクあり
変動型0.9〜1.5%常に金利変動リスクあり

当初固定型は「しばらくは返済額を安定させたい・10年後以降の状況に応じて繰り上げ返済で対応する」という戦略に向きます。


5. ミックス型:リスクを分散する第3の選択

借入の一部を固定、一部を変動にする「ミックス型」も選択肢の一つです。

組み合わせ例(3,500万円借入)内容
変動50% + 固定50%1,750万円ずつ・リスクを二分
変動70% + 固定30%変動メインで固定を保険として持つ
変動30% + 固定70%固定メインで変動分の低金利メリットを少し取る

ミックス型の利点はリスクの分散ですが、手続きが2本になるため事務的な手間が増えます。また金利優遇条件が各行によって異なるため、実質金利を計算した上で検討することが必要です。


6. 2026年環境での繰り上げ返済戦略との組み合わせ

住宅ローン控除との関係も考慮する必要があります。

実際の借入金利控除率(0.7%)判断
0.7%未満0.7%逆ざや(控除>金利)・控除期間中の繰り上げ返済は控除減で非推奨
0.7〜1.0%0.7%ほぼ拮抗・控除期間中は投資/貯蓄をやや優先
1.0〜1.5%0.7%順ざや・繰り上げ返済は控除期間後を優先
2.0%以上0.7%順ざや拡大・控除期間中でも繰り上げ検討価値あり

2026年の変動金利(0.7〜1.5%)では、住宅ローン控除(0.7%)との差が縮まっています。「控除がある13年間は繰り上げ返済しない方が得」という2020〜2022年の常識は、2026年には必ずしも当てはまりません。


7. どちらを選ぶかの判断フレームワーク

変動金利が向く条件

条件理由
借入額が年収の5倍未満金利上昇があっても家計への打撃が小さい
共働きで世帯収入に余裕がある金利上昇時に繰り上げ返済で対応できる
金利動向を定期的にチェックできる上昇局面での早期対応が可能
借入期間が15〜20年以下短期間なら金利上昇の影響が限定的

固定金利が向く条件

条件理由
借入額が年収の6〜7倍以上返済額の変化に耐える余裕が少ない
片働きや収入が不安定返済額変動のリスクを取れない
近い将来に支出増が見込まれる(教育費等)確定した返済額で家計設計したい
金利の変動を気にせず生活したい精神的安定のコスト(保険料)として割り切る

よくある質問

Q. 変動金利で借りた後、固定に切り替えることはできますか?

可能ですが、「借り換え」という手続きになります。新たな金融機関で固定金利の住宅ローンを組み、現在のローンを完済する形です。借り換え時には諸費用(数十万円)が発生します。また、固定に切り替えるタイミングで金利が既に上昇していれば、固定金利水準も高くなっています。

Q. フラット35を利用するには、省エネ基準を満たす物件が必要ですか?

フラット35には住宅の技術基準(断熱性能等)があります。物件が基準を満たさない場合は利用できません。また住宅ローン控除(2024年〜)も省エネ基準未達の新築は対象外です。物件の省エネ性能は、ローン選択と控除の両面で重要な条件です。

Q. 金利タイプを決める前に、何を最優先に考えればよいですか?

「金利が2%上昇した場合でも、毎月の返済額を支払えるか」というストレステストを家計で行うことが第一です。これが「否」ならば固定が安全です。「はい、対応できる」なら変動の低金利メリットを取ることが合理的な選択になります。家計の耐性が判断の基準であり、「どちらが得か」という予測ではなく「どちらのリスクに耐えられるか」が本質的な問いです。


まとめ

2026年現在、日銀の利上げで変動金利も上昇しましたが、固定金利(フラット35)はそれ以上に急騰し、変動と固定の差はむしろ拡大しています。当面のコスト面では変動が有利な状況が続いています。

  • 2026年の変動金利は0.9〜1.5%:過去最低水準より上昇したが、固定との差は拡大している
  • 固定3.2%(フラット35)との差は年間約48万円:これが「安心を買う保険料」で、2026年は以前より大幅に重くなった
  • 125%ルールの未払利息リスクは見落とされやすい:金利急騰時の隠れた爆弾
  • 当初固定型という中間選択肢もある:全期間固定より安く、全変動よりリスクが低い
  • 繰り上げ返済と住宅ローン控除の関係も変わった:金利1%超なら控除期間中でも繰り上げを検討
  • 家計の耐性で選ぶ:「どちらが得か」より「どちらのリスクに耐えられるか」が判断基準

正解は人によって異なります。重要なのは、金利タイプを選ぶ根拠(家計の耐性・ライフプラン・借入額)を明確にした上で選択することです。


固定 vs 変動シミュレーション

借入額と金利上昇シナリオを設定して、35年間の総支払額差と月々の変化を比較。


関連記事

本記事は一般的な情報提供を目的としており、税務・投資・法律などの専門的助言ではありません。内容は公的機関などの信頼できる情報をもとに作成していますが、制度や数値は変わる場合があります。実際の判断は公式情報や専門家でご確認ください(運営者情報・免責事項)。