手取りはどう決まる?年収別の違いと「増えない理由」を構造から解説

手取りは単純に「年収 × 税率」で決まるわけではありません。給与所得控除、基礎控除、社会保険料、段階税率など、複数の構造が重なって最終的な金額が決まります。年収別の手取りを一覧で整理しながら、その裏側の仕組みを分解します。

「年収が100万円上がったのに、手取りが思ったほど増えていない」

この感覚は正確な現状認識です。給与が増えるほど、その増加分に対して税率が上昇し(累進課税)、社会保険料も連動して増えるため、年収の増加に対して手取りの増加は常に小さくなります。

この記事では手取りがどのように決まるかを計算ステップで分解し、年収300万〜1,000万円の手取り早見表、各構成要素の詳細、昇給が体感されにくい理由、扶養による差異、節税の優先順位まで体系的に解説します。


1. 手取りの計算ステップ

手取りは「年収からいくつかの控除・税金を差し引いた残り」です。以下の順番で計算します。

額面年収
 ↓ ▲給与所得控除を差し引く
給与所得(=所得)
 ↓ ▲各種控除(基礎控除・社会保険料控除・扶養控除等)を差し引く
課税所得
 ↓ × 所得税率を掛けて税額控除を差し引く
所得税
(別途)住民税 = 課税所得 × 10% + 均等割・森林環境税(5,000円)
(別途)社会保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率
 ↓
手取り = 年収 − 所得税 − 住民税 − 社会保険料

それぞれを詳しく見ていきます。


2. 給与所得控除(会社員特有の控除)

給与所得控除は、会社員・パート・アルバイトなど給与所得者に自動的に適用される「みなし経費」です。自営業者が実際の経費を差し引けるのと同様に、サラリーマンにも一定の控除が認められています。

給与収入給与所得控除額
220万円以下74万円(令和8改正で最低保障65万→74万。令和8・9年分限定)
220万〜360万円収入 × 30% + 8万円
360万〜660万円収入 × 20% + 44万円
660万〜850万円収入 × 10% + 110万円
850万円超195万円(上限)

上表は令和8年分・令和9年分の値です。最低保障の74万円は本則69万円に代えて適用されるもので、使えるのはこの2年だけです(租税特別措置法29条の4。⚠️この条番号は2026年12月1日施行版以降のもので、それ以前の版の29条の4は別の特例です)。令和10年分からは本則の69万円に戻り、最低保障が効く範囲も年収約203.3万円(203万3,333円=収入×30%+8万円が69万円に届く水準)以下まで下がります(所得税法28条3項1号。⚠️69万円は2027年1月1日施行版の条文で、現行版は65万円です)。360万円超の3区分は変わりません。

給与収入令和8・9年分令和10年分以後
約203.3万円以下74万円69万円
約203.3万〜220万円74万円収入 × 30% + 8万円
220万円超上表のとおり(変更なし)上表のとおり(変更なし)

なお令和10年分以後の最低保障額は物価の動きに応じて2年ごとに見直すことが基本とされているため、69万円は確定値ではありません。

例:年収500万円の場合 → 500万円 × 20% + 44万円 = 144万円控除

例:年収800万円の場合 → 800万円 × 10% + 110万円 = 190万円控除(850万円未満)

例:年収1,000万円の場合 → 195万円(上限適用)

給与所得控除は年収とともに増えますが、850万円超で上限に達します。この点が「高年収になるほど実効税率が上がる」一因です。


3. 基礎控除

令和8年度(2026年)改正により、所得税の基礎控除は合計所得(=給与所得)に応じた段階方式になりました(令和8・9年分)。

合計所得(給与所得)所得税の基礎控除
489万円以下104万円
489万〜655万円67万円
655万〜2,350万円62万円

上表は2,350万円までです。合計所得が2,350万円を超えると基礎控除はさらに下がり、2,400万円以下は48万円・2,450万円以下は32万円・2,500万円以下は16万円、2,500万円超はゼロになります(所得税法86条1項)。

例:年収800万円(給与所得610万円)の場合 → 基礎控除67万円

給与年収でいえば、666万円で104万円→67万円、851万円で67万円→62万円に切り替わります。控除が一段下がる年は課税所得が跳ねるため、額面が増えても手取りが減る逆転が起きます(665万円→666万円で年約3万円、850万円→851万円で年約3千円のマイナス)。

従来の「一律48万円」や令和7年分の段階方式(95〜58万円)は過去の数値で、令和8年分は上記が正しい値です。低中所得帯の上乗せ(104万・67万)は令和8・9年分のみの時限措置です。なお住民税の基礎控除は令和8年改正でも据え置きで、合計所得2,400万円以下なら43万円です(2,400万円超は29万円、2,450万円超は15万円、2,500万円超はゼロ。所得税も同じ2,400万円・2,450万円・2,500万円で下がりますが、下がる額が違います。後述)。


4. 社会保険料

社会保険料は税金に並ぶ大きな負担です。会社員(健康保険・厚生年金加入)の場合、本人負担は以下の通りです。

種類保険料率(労使折半)本人負担率の目安
健康保険(協会けんぽ・全国平均)約10〜11%約5〜5.5%
厚生年金保険18.3%9.15%
雇用保険約1.35%(労働者0.5%+事業主0.85%)約0.5%
介護保険(40〜64歳)1.62%(令和8年度・協会けんぽ)0.81%
合計(40歳未満)—約14.65〜15.15%

※令和8年度新設の子ども・子育て支援金(本人負担0.115%)は健康保険料と合算で徴収されます(上表の健康保険の負担率・本記事の計算例に算入済み)。

社会保険料は「標準報酬月額」に基づきます。月給を等級表にあてはめて固定値とし、その額に保険料率を乗じます。年収が増えると標準報酬月額の等級が上がり、保険料も増えます。

重要:厚生年金には上限がある

厚生年金の標準報酬月額には上限(2026年度は65万円/月)があります。賞与なし(年収を12等分)なら年収762万円でこの上限に達するため、それ以上の年収増では厚生年金保険料が増えなくなります。賞与がある場合は、月給の上限とは別に賞与1回150万円まで厚生年金がかかるため、同じ年収でも保険料が変わります(社会保険料とは?の§4で試算しています)。

国民健康保険との比較

自営業者や会社員でない人が加入する国民健康保険は、前年所得に応じて算定されます。扶養制度がないため、家族全員分の保険料を支払う必要があります。会社員の健康保険は扶養家族を追加保険料なしで扶養できる点が大きなメリットです。


5. 所得税(超過累進課税)

所得税は「課税所得のどの区間にいるか」によって、その区間ごとに異なる税率が適用されます。「税率が上がると全額高い税率になる」のではなく、「超えた分だけ高い税率になる」しくみです。

課税所得税率控除額
195万円以下5%0円
195万〜330万円10%9.75万円
330万〜695万円20%42.75万円
695万〜900万円23%63.6万円
900万〜1,800万円33%153.6万円
1,800万〜4,000万円40%279.6万円
4,000万円超45%479.6万円

税額の計算式:課税所得 × 税率 − 控除額

例:課税所得450万円の場合 → 450万円 × 20% − 42.75万円 = 90万円 − 42.75万円 = 47.25万円

これは、以下の区間別計算と同等です:

  • 195万円 × 5% = 9.75万円
  • (330万円−195万円) × 10% = 13.5万円
  • (450万円−330万円) × 20% = 24万円
  • 合計:9.75万円 + 13.5万円 + 24万円 = 47.25万円

6. 住民税

住民税は所得割(課税所得 × 10%)と均等割・森林環境税(5,000円程度)の合計です。

住民税の基礎控除は合計所得2,400万円以下なら43万円(所得税の基礎控除とは別建て):

住民税の課税所得を計算する際の基礎控除は、合計所得2,400万円以下なら43万円です(2,400万円超は29万円、2,450万円超は15万円、2,500万円超はゼロ=地方税法34条2項・314条の2第2項)。令和8年改正で所得税の基礎控除が所得に応じた段階方式(62〜104万円)に引き上げられたのに対し、住民税は据え置かれました。控除される額が所得税と違うため、所得税の課税所得と住民税の課税所得は一致しません(所得税側がより大きく控除されます。両方がゼロになる合計所得2,500万円超を除く)。段が下がる合計所得の位置は2,400万円・2,450万円・2,500万円で所得税と同じですが、下がる額が違います(所得税は2,350万円超の48万円から32万円→16万円→ゼロ、住民税は43万円から29万円→15万円→ゼロ)。

住民税は翌年度課税:

今年の所得に対する住民税は、翌年6月から翌々年5月にかけて徴収されます。転職・昇給で今年の収入が大きく増えた場合、翌年6月以降の住民税が跳ね上がるため注意が必要です。


7. 年収別 手取り早見表(2026年・独身・給与所得のみ)

会社員・独身・社会保険加入で、適用する控除は給与所得控除・基礎控除・社会保険料控除だけという標準ケースです。

年収手取り(年間)月額手取り実質手取り率差し引き合計
300万円約240万円約20.0万円約80%約60万円
400万円約317万円約26.4万円約79%約83万円
500万円約394万円約32.9万円約79%約106万円
600万円約466万円約38.9万円約78%約134万円
700万円約531万円約44.2万円約76%約169万円
800万円約595万円約49.6万円約74%約205万円
850万円約630万円約52.5万円約74%約220万円
900万円約662万円約55.1万円約74%約238万円
950万円約694万円約57.9万円約73%約256万円
1,000万円約727万円約60.6万円約73%約273万円

※ 標準ケースは、40歳未満(介護保険料なし)・賞与なし(年収を12等分)として計算しています。


あなたの年収で手取りを計算する

早見表はあくまで目安です。年収・扶養・各種控除を入力すれば、あなたの実際の手取り額と税・社会保険料の内訳がわかります。


8. なぜ昇給の体感が鈍いのか:限界税率の仕組み

「年収が上がっても手取りの増加が少ない」と感じる理由は限界税率にあります。

限界税率とは、「追加で1円稼いだときにかかる税率の合計」のことです。

年収帯所得税(限界)住民税社会保険料合計限界率手取り増加率
〜525万円5%10%約14.7%約24%約76%
526〜673万円10%10%約14.7%約30%約70%
674〜762万円20%10%約14.7%約40%約60%
762万円超〜1,082万円20%10%約5.5%※約33%約67%
1,083〜1,300万円23%10%約5.5%約38%約62%
1,300万円超〜33%10%約5.5%約46%約54%

※ 上の表は独身・40歳未満・賞与なし(年収を12等分)で求めた値です。賞与なしなら、厚生年金の標準報酬月額の上限(2026年度は65万円)に達するのは年収762万円です。ここから上は追加の収入に厚生年金がかからず社会保険料の限界負担が下がるため、手取り増加率はむしろ戻ります。ただし上限に届くその1段だけは負担が跳ねます。標準報酬月額が62万円から65万円へ上がるため、独身・40歳未満・賞与なしなら、年収761万円→762万円で社会保険料が約5.1万円増え、手取りは年約2.8万円減ります(571.4万円→568.6万円)。40〜64歳では社会保険料が約5.4万円増え、手取りは年約3.0万円減ります。「674〜762万円|約60%」は、この段差を含めて帯の両端で測った値です。

合計限界率は税率の単純な足し算にはなりません。 社会保険料は全額が所得控除になるうえ、年収が増えると給与所得控除も一緒に増えるため、課税所得は年収ほどには増えないからです。たとえば年収360〜660万円帯では、年収が1万円増えても課税所得は約6,500円しか増えません。上の表は独身・40歳未満・賞与なし(年収を12等分)で求めたもので、合計限界率・手取り増加率は各帯の両端の手取りを実測した値です(最初の行は下端が定まらないため年収300万〜525万円で、最終行は上端が無いため年収1,301万〜1,400万円で実測しました。1,400万円より上でも約53%です)。なお課税所得が1,800万円を超えて所得税40%帯に入るのは年収およそ2,224万円からで、そこからは手取り増加率がさらに下がります。

令和8年改正で基礎控除が104万円に拡大したため、独身・40歳未満・賞与なしなら年収525万円まで(40〜64歳なら531万円まで)は課税所得が195万円以下(例:年収500万円=課税所得179.7万円)に収まり、所得税の限界税率は5%です。10%帯に入るのは年収526万円から(40〜64歳なら532万円から)です。年収674万円から(40〜64歳なら680万円から)は課税所得が330万円を超え、所得税の限界税率が10%から20%に跳ね上がります。これが「700万円前後から昇給の実感が鈍くなる」大きな原因です。

ただし手取りの増え方は年収が上がるほど一方的に鈍るわけではありません。独身・40歳未満・賞与なしなら、年収762万円で厚生年金の標準報酬月額が上限に達すると社会保険料の限界負担が下がるため、800万円台の手取り増加率は約67%まで戻ります。年収1,300万円までで、もっとも鈍いのは674〜762万円の帯(約60%)です。

具体例:年収590万円 → 610万円(+20万円)の場合

増加20万円に対する控除金額
所得税増加(限界10%帯)約1.6万円
住民税増加(10%)約1.6万円
社会保険料増加(標準報酬月額の等級は据え置き)約0.1万円
手取り増加約16.7万円(増加分の約83%)

月換算すると約+1.4万円です。この例で手残りが大きいのは、590万円と610万円で標準報酬月額の等級(50万円)が変わらないためです。社会保険料は等級をまたぐたびに段階的に増えるので、同じ+20万円でも等級が上がる年収では手取り増がこれより小さくなります。帯全体(526〜673万円)でならすと手取り増加率は約70%です。


9. 扶養の有無による差

扶養控除・配偶者控除が適用されると、課税所得が下がり所得税・住民税が軽減されます。

控除の種類所得税の控除額年収500万円の節税年収800万円の節税
配偶者控除(所得900万円以下)38万円約52,000円約111,000円
一般扶養控除(16〜18歳)38万円約52,000円約111,000円
特定扶養控除(19〜22歳)63万円約86,000円約174,000円
障害者控除27〜75万円約40,000〜102,000円約81,000〜206,000円

※節税額は「所得税の控除額 × 所得税限界税率 ×1.021(復興特別所得税込み) + 住民税の控除額 × 10%」に住民税の調整控除の増加分を足した額です。住民税の控除額は所得税より小さく、配偶者・一般扶養は33万円、特定扶養は45万円、障害者控除は一般26万円・特別障害者30万円・同居特別障害者53万円(所得税は順に27万円・40万円・75万円)です。所得税の限界税率は年収800万円帯で約20%です。年収500万円帯は、令和8年改正で基礎控除が104万円に拡大した結果、課税所得が約179.7万円=所得税5%帯に収まるため、控除による所得税の軽減は5%で計算されます(住民税は一律10%)。そのため500万円の節税額は800万円帯(20%帯)より小さくなります。

※調整控除の増加分が乗るのは、控除を引いたあとの住民税の課税所得が低い人だけです(調整控除の計算式)。年収500万円では、特定扶養控除で+9,000円(人的控除の差18万円×5%)、同居特別障害者控除で+11,000円(同22万円×5%)が乗ります。配偶者控除・一般扶養控除(同5万円)は、年収500万円だと控除後の住民税の課税所得が約207.7万円までしか下がらず、乗り始める線(205万円)を超えているため乗りません。一般障害者・特別障害者・勤労学生(同1万円・10万円・1万円)も年収500万円では乗りません。年収800万円の列は、どの控除でも乗りません。

※この表は独身と比べた値なので、その控除のほかに人的控除がない人の額です。⚠️ほかにも人的控除がある人は額も線も変わります=たとえば16〜18歳の子1人を扶養している年収500万円の人は、配偶者控除で5,000円が乗ります(「乗りません」は独身ベースの話です)。特定扶養控除も、配偶者控除がある年収500万円の親では9,000円でなく11,500円です。自分の額の出し方は調整控除の計算式を参照してください。

配偶者の所得による段階的変化:

「配偶者控除の壁」として知られる136万円・169万円・207万円の基準(令和8年改正で旧123万円・160万円・201万円から引き上げ。給与所得控除が74万円に拡大したことを反映)は、配偶者自身のパート収入の金額に応じて配偶者控除・配偶者特別控除の額が変わるしくみです。このうち169万円は所得税の満額が終わる線で、住民税の満額が終わるのは174万円です。

配偶者の給与収入主な影響
136万円以下配偶者控除38万円が満額適用
136万〜169万円配偶者特別控除が満額(所得税38万円・住民税33万円)
169万〜174万円所得税だけ36万円に減る。住民税は33万円のまま満額
174万〜207万円所得税・住民税とも配偶者特別控除が段階的に減少
207万円超配偶者特別控除ゼロ

10. ボーナスの手取り

ボーナス(賞与)にも所得税・住民税・社会保険料がかかります。ただし計算方法が月給と異なります。

賞与の所得税計算方法(源泉徴収):

賞与から社会保険料を差し引いた額に、前月の給与を基準に導き出した税率(賞与の源泉徴収税率表を使用)を掛けます。

例:月給40万円(前月)、賞与100万円の場合

  • 社会保険料天引き後:約100万円 − 14.69万円 = 85.31万円
  • 社保控除後の前月給与:約34.1万円(40万円 × (1 − 14.69%))
  • 社保控除後の前月給与34.1万円・扶養0人 → 賞与の源泉徴収税率表(令和8年分)より約8.168%
  • 所得税天引き:85.31万円 × 8.168% ≈ 7.0万円
  • 手取り賞与:約78.3万円(手取り率78.3%)

※ 賞与の源泉徴収率は「賞与額と前月給与の倍率」ではなく、前月の社会保険料控除後の給与額と扶養人数だけで決定します(前月給与の10倍超の場合は例外計算)。

月給が高いほど賞与の源泉徴収率も上がります。年収1,000万円前後の場合、賞与手取り率は70〜75%程度まで下がることがあります。


11. 月収30万円の手取り

年収ベースではなく月収ベースで考えてみます。

月収30万円(ボーナスなし・年収360万円相当)の独身会社員の場合:

項目月額
総支給300,000円
健康保険料約15,120円
厚生年金保険料約27,450円
雇用保険料約1,500円
所得税(概算・令和8年分月額表)約6,320円
住民税(概算・前年も年収360万円の場合)約12,760円
手取り合計約236,850円
手取り率約79%

月々の手取りは約23.7万円が目安です。所得税は源泉徴収の段階でやや多めに引かれ、年末調整で戻る分があるため、年間の実質手取りは約287万円(月平均では約24万円)です。


12. 手取りが「変わる条件」一覧

同じ年収でも以下の条件で手取りが変わります。

条件手取りへの影響
扶養家族数扶養控除分だけ課税所得が下がり節税
住宅ローン控除最大で年数十万円の所得税還付
ふるさと納税上限額までなら実質負担は原則2,000円で控除効果(確定申告で、寄付により課税所得が所得税の税率帯の境目を割り込むときなどは2,000円を超えることがある)
iDeCo掛金が全額所得控除、年数万円節税
健康保険組合の種類協会けんぽ vs 健保組合で料率が異なる
勤務地(住民税)均等割の金額が自治体ごとに異なる
年齢(40〜64歳)介護保険料が追加で約0.8〜0.9%発生

13. 節税の優先順位

手取りを増やすには「稼ぐ」か「控除を使う」かの二択です。控除の活用は確実な節税効果があります。

優先度手段対象者年間節税効果
1ふるさと納税住民税の所得割がある人返礼品(上限額の30%以内)− 自己負担(上限内なら原則2,000円)
2iDeCo老後資金を積立したい人年収500万:年約4.2万円、800万:年約8.4万円(独身で人的控除が基礎控除だけ・企業年金のない会社員の上限 月2.3万円の場合)
3住宅ローン控除住宅購入者最大年24万円(13年間)
4配偶者控除配偶者の収入136万円以下(136万円超は配偶者特別控除に切り替わり、満額が続くのは所得税169万円・住民税174万円まで)・本人の所得900万円以下年収500万で年約5.2万円
5医療費控除年間医療費が10万円と総所得金額等×5%の少ない方を超える人的控除が基礎控除だけなら超過分 ×(所得税の限界税率×1.021+住民税10%)が目安(配偶者控除・扶養控除などほかの人的控除があると住民税側は増減)
6生命保険料控除生命・医療保険加入者上限は所得税12万円・住民税7万円(3枠満額なら20%帯で年約3.2万円)

14. 年収別の生活モデル(都市部・独身)

手取りがわかっても、生活費を引いた「実際の自由になるお金」はさらに少なくなります。

年収月手取り家賃(東京・独身)基本生活費月の余剰
300万円約20.0万円7〜9万円8〜10万円1.0〜5.0万円
400万円約26.4万円8〜10万円8〜10万円6.4〜10.4万円
500万円約32.9万円9〜12万円9〜11万円9.9〜14.9万円
600万円約38.9万円10〜14万円9〜11万円13.9〜19.9万円
800万円約49.6万円12〜18万円10〜12万円19.6〜27.6万円
1,000万円約60.6万円15〜22万円11〜14万円24.6〜34.6万円

※基本生活費:食費・光熱費・通信費・交際費・交通費の概算。

手取りの差よりも生活費(特に家賃)の設定が、実質的な余剰資金を大きく左右します。年収600万円でも家賃15万円なら余剰は月13〜15万円、年収400万円で家賃7万円なら月9〜11万円で、額面200万円の差が月4万円前後まで縮みます。


15. よくある誤解

Q. 税率が上がると稼いだ分が損になる?

いいえ。超過累進課税のため、「超えた分だけ」高い税率が適用されます。どれだけ稼いでも、稼いだことによるマイナスはありません(限界税率100%超は存在しません)。ただし追加収入の手取り率は下がります。

Q. 600万円を超えた瞬間に税率が上がる?

600万円という数字自体に壁はありません。「段階的に」限界税率が上昇します。ただし課税所得が330万円を超えた時点(独身・40歳未満・賞与なしなら年収674万円、40〜64歳なら680万円)で限界税率が10%→20%に跳ね上がるため、体感上はこの前後で昇給の効果が弱まります。

Q. ボーナスは月給より手取り率が悪い?

一般に、ボーナスは前月の月給を基準にした源泉徴収税率が適用されるため、年末調整後の確定所得税との差が出やすいです。ボーナス月は仮の源泉徴収が引かれ、年末調整で精算されます。結果として手取り率に大差はありません。

Q. 副業収入があると社会保険料も増える?

副業が給与所得(別のアルバイト等)の場合は社会保険が二重加入になる可能性があります。副業が業務委託・フリーランス等の場合、社会保険料は原則として本業の給与ベースで計算されます(副業分は加算されません)。ただし確定申告により所得税・住民税の増加は避けられません。


まとめ

  • 手取りは「年収 − 所得税 − 住民税 − 社会保険料」で計算される
  • 給与所得控除(最大195万円)・基礎控除(所得税は所得に応じ62〜104万円/住民税43万円。合計所得2,350万円超で所得税側、2,400万円超で住民税側も段階的に縮む)・社会保険料控除が課税所得を下げる
  • 社会保険料は年収の14〜15%(本人負担)、所得税より重いことが多い
  • 年収300〜500万円帯は手取り率78〜80%前後、600万円超から徐々に下がり始める
  • 独身・40歳未満・賞与なしなら年収674万円(40〜64歳なら680万円)で所得税の限界税率が10%→20%に変わり、昇給の体感が変わる
  • 扶養あり・住宅ローン控除・iDeCoで年数万〜数十万円の節税が可能
  • 実質的な余剰資金は手取りより「家賃(住居費)の選択」に大きく左右される

年収・扶養で手取りをシミュレーション

年収・扶養・各種控除を入力して、あなたの実際の手取り額と税負担の内訳を確認できます。


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この記事の根拠(出典)

本記事で使っている税率・控除額・保険料率は、以下の一次情報(2026年9月時点)で確認しています。制度は改正されるため、最新の内容は各リンク先でご確認ください。

  • 令和8年分の所得税の基礎控除(合計所得489万円以下104万円/489万円超655万円以下67万円/655万円超62万円)と、給与所得控除の最低保障74万円(給与収入220万円以下):国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」(PDF)(1ページ目 ⑴イ の基礎控除額の表と ⑵イ の給与所得控除の表。給与収入への換算665万5,556円・850万円も同じ表にあります)/国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」(令和8年12月1日施行・令和8年分以後の所得税に適用)
  • 給与所得控除の計算式(給与収入360万円・660万円・850万円で式が変わり、850万円超は195万円で頭打ち):国税庁「No.1410 給与所得控除」。同ページ(令和8年4月1日現在法令等)には、令和8年分・令和9年分(220万円まで74万円)と令和7年分(190万円まで65万円)の表が並んでいます(220万円超の式は両方の表で同じです)
  • 所得税の速算表(課税所得195万円・330万円・695万円・900万円・1,800万円・4,000万円で区切る5%〜45%の7段と控除額)と、課税所得の1,000円未満切捨て:国税庁「No.2260 所得税の税率」
  • 所得税額に2.1%を上乗せする復興特別所得税(復興特別所得税額=基準所得税額×2.1%):国税庁「個人の方に係る復興特別所得税のあらまし」。⚠️同ページの課税期間「平成25年から平成49年(令和19年)まで」は改正前の記載で、令和8年法律第12号による延長と分割が反映されていません。改正後の条文は次の2本で読めます。⚠️e-Gov法令検索は版を指定しないと現行版が開き、改正前の「百分の二・一」「令和十九年」が表示されます。下は2027年1月1日施行版を指定したURLです:復興財確法(2027年1月1日施行版)(第13条「基準所得税額に百分の一・一の税率を乗じて計算した金額」=1.1%/第9条第1項「平成二十五年から令和二十九年までの各年分」=課税期間の延長)/防衛特措法(2027年1月1日施行版)(第5条の9「基準所得税額に百分の一の税率」=1.0%/第5条の5第1項「令和九年分以後の各年分…当分の間」)。令和9年分から令和29年分までは1.1%と1.0%に分かれますが、合計2.1%は変わりません
  • 健康保険料率9.85%(本人4.925%)・介護保険料率1.62%(本人0.81%)・子ども・子育て支援金率0.23%(本人0.115%)と、標準報酬月額の等級表(健康保険は上限139万円):全国健康保険協会「令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)」(PDF)/全国健康保険協会「令和8年度保険料率のお知らせ」。⚠️料率は都道府県支部ごとに異なります(令和8年度の全国平均は9.90%)。本記事は東京支部の率で試算しています
  • 厚生年金保険料率18.300%(本人負担は折半の9.150%)と、標準報酬月額の上限65万円:日本年金機構「保険料額表(令和2年9月分〜)」/同ページから開ける令和8年度版の保険料額表(PDF)に、等級1の8.8万円から等級32の65万円までと、労使合計18.300%・折半額9.150%の保険料額が載っています
  • 雇用保険料率(一般の事業・労働者負担5/1,000=0.5%):厚生労働省「令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内」(PDF)(令和7年度の5.5/1,000から引下げ)
  • 住民税の所得割10%(道府県民税4%+市町村民税6%)・均等割4,000円(1,000円+3,000円)と、均等割と併せて徴収される森林環境税(国税)1,000円:総務省「個人住民税」(政令指定都市は道府県民税2%+市民税8%で合計は同じ)
  • 住民税の基礎控除43万円(合計所得2,400万円以下の場合。所得税の基礎控除とは額が別で、令和8改正でも43万円に据え置かれています):e-Gov法令検索「地方税法」(第34条第2項第1号〔道府県民税〕・第314条の2第2項第1号〔市町村民税〕。どちらの条も合計所得2,400万円以下を「四十三万円」と定め、2,400万円超は29万円・2,450万円超は15万円・2,500万円超は0円と縮みます)
  • ふるさと納税の控除が3本立てであること(①所得税の寄附金控除=総所得金額等の40%が上限/②住民税・基本分10%=同30%が上限/③住民税・特例分=住民税所得割額の20%が上限)と、③が上限に達すると実質負担が2,000円を超えること:総務省「ふるさと納税のしくみ|税金の控除について」/国税庁「No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)」
  • iDeCoの拠出限度額(企業型確定拠出年金にも他の企業年金にも加入していない会社員は月23,000円=年27.6万円):e-Gov法令検索「確定拠出年金法施行令」(第36条第2号「二万三千円」)。⚠️令和7年の年金制度改正で、2026年12月の拠出分から限度額が引き上げられる予定です
  • 賞与の源泉徴収税額が「前月の社会保険料控除後の給与」と扶養親族等の数で決まる算出率の表で計算されること:国税庁「No.2523 賞与に対する源泉徴収」/国税庁「令和8年分 源泉徴収税額表」(「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」15〜16ページ)
  • 配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除の額と、その所得要件:国税庁「No.1191 配偶者控除」(本人の合計所得900万円以下38万円/900万円超950万円以下26万円/950万円超1,000万円以下13万円)/国税庁「No.1180 扶養控除」(一般38万円・特定扶養63万円)/令和8年分の所得要件(配偶者・扶養親族の合計所得62万円=給与収入136万円)と配偶者特別控除の逓減表は上記「あらまし」の2〜3ページ。住民税側の控除額(配偶者控除・一般扶養は33万円、特定扶養は45万円。配偶者特別控除は配偶者の合計所得100万円=給与収入174万円まで満額33万円が続き、所得税が満額38万円を維持する合計所得95万円=給与収入169万円より1段広い)はe-Gov法令検索「地方税法」第314条の2第1項第10号・第10号の2イ(1)・第11号
  • ふるさと納税の寄附金控除は、所得税では総所得金額などから引く所得控除であること/所得税の税率は課税所得195万・330万・695万・900万・1,800万・4,000万円を境目に上がること(=寄付で境目を割り込むと、割り込んだ分は1つ下の税率でしか所得税が戻らない理由):e-Gov法令検索「所得税法」第78条第1項・第89条第1項(2026年9月30日確認)
  • 住民税の特例分の割合は、住民税の課税総所得金額から人的控除差調整額(5万円に配偶者・扶養などに応じた額を足した額と、所得税の基礎控除から48万円を引いた額の合計)を引いた額で決まり、住民税ではふるさと納税は所得控除でない(税額控除)ため、寄付をしてもこの額は減らないこと(=所得税の戻りが下がっても住民税側は埋めない理由):e-Gov法令検索「地方税法」市町村民税=第314条の2(所得控除の列挙に寄附金が無い)・第314条の3第2項・第314条の6第1号イ・第314条の7第1項・第11項/道府県民税=第34条・第35条第2項・第37条の2第1項・第11項/割合の読み替え=附則第5条の6第1項・第2項(2026年9月30日確認)

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