変動から固定への借り換えは損か得か?損益分岐シミュレーション【2026年7月版】
日銀利上げで変動金利が不安。今フラット35(3.14%)へ借り換える「保険」は元が取れる?変動が何%・何年で上がれば固定が得になるかを、諸費用込みの損益分岐で数値化します。
執筆:しぐ ・ 更新日: 2026-07-22
日銀の政策金利が1.0%(2026年6月16日利上げ)まで上がり、「このまま変動で大丈夫か」と不安になっている方が増えています。今のうちに固定へ乗り換える"保険"を買うべきか——迷いどころです。
ただし2026年7月時点で、フラット35の最頻金利は3.14%。変動の**0.9〜1.5%**よりずっと高い水準です。固定に換えた瞬間から毎月の返済は増えます。
この記事を読むと、その「増える分=保険料」を、将来の変動金利上昇による損失回避が上回るのは変動が何%まで・何年後までに上がった場合かが、諸費用の回収込みの具体的な数字でわかります。数値はすべて当サイトのローン計算エンジン(元利均等)で算出しています。
1. なぜ「変動→固定」は借り換えた瞬間に損するのか
固定への借り換えは、目先の返済額が必ず増える"保険料の先払い"です。
残債3,000万円・残期間30年で、金利別の毎月返済額を計算エンジンで出すと次の通りです。
| 金利タイプ | 適用金利(2026年7月目安) | 毎月返済 | 30年の総返済額 | 利息合計 |
|---|---|---|---|---|
| 変動(据置き想定) | 1.0% | 96,492円 | 34,737,068円 | 4,737,068円 |
| 固定(フラット35) | 3.14% | 128,758円 | 46,352,739円 | 16,352,739円 |
変動1.0%のまま返せば毎月96,492円ですが、今フラット35(3.14%)に換えると毎月128,758円。差は 128,758 − 96,492 = 月32,266円、年間で 32,266 × 12 = 約38.7万円 の負担増です。
これは損ではなく「金利が上がっても返済額が変わらない安心」を買う保険料です。問題は、その保険料に見合うだけ将来の変動金利が上がるのか、という一点に尽きます。
2. 前提となる金利水準(2026年7月現在)
2023年以前の「変動0.3%台」の時代は終わり、変動も固定も一段上がっています。
- 日銀政策金利:1.0%(2026年6月16日利上げ)
- 変動金利(新規最優遇):0.9〜1.5%(利上げ後の一般水準)
- フラット35(21〜35年・融資率9割以下)最頻金利:3.14%(2026年7月時点。6月は3.21%)
固定は変動より2%以上高い状態です。だからこそ「変動→固定」は、単なる金利下げの借り換え(借り換えメリットの記事で扱う一般論)とは逆向きで、今より高い金利をあえて選ぶ判断になります。
なお本記事のフラット35 3.14%は、新機構団信込み・融資率9割以下の最頻金利です。借り換えでは省エネ性能などによる金利引き下げ(フラット35S)は利用できないため、新規借入より高くなる場合があります。
金利は月次で改定されます。フラット35の最新値は住宅金融支援機構の公式サイトで、ご自身の変動金利は返済予定表または銀行のWeb明細で必ず確認してください。
3. 損益分岐の考え方:比べるのは「総支払額」
固定が得かどうかは、毎月の額ではなく30年トータルの総支払額で判定します。
比較する2つの選択肢はこうです。
- A:変動を据え置き続行(将来、金利が段階的に上がるリスクを負う)
- B:今すぐフラット35(3.14%)へ借り換え(毎月増えるが、以後は金利が動かない)
Bには借り換え諸費用がかかります。目安は借入額のおおむね2.5〜3%で、事務手数料(借入額×約2.2%=3,000万で約66万円)+登録免許税+司法書士報酬+全額繰上返済手数料などの合計です。本記事では残債3,000万円に対し約80万円(約2.7%)として計算します(内訳は借り換えメリットの記事§3と整合)。なお事務手数料が定額型の金融機関を選べば諸費用は大きく下がり、その分だけ後述の損益分岐点も下がります。
つまり損益分岐は、Bの総返済額 + 諸費用80万円 と Aの総支払額 のどちらが小さいか、で決まります。
4. シミュレーション①:変動が「一定水準で高止まり」した場合
まず、変動が今後ずっと一定の金利だったと仮定し、どの水準を超えたら固定が得になるかを見ます。
固定(B)の基準は、フラット35総返済46,352,739円+諸費用80万円=約4,715万円。これに対し、変動(A)を各水準で30年据え置いた総支払額を並べます。
| 変動の生涯平均金利 | 変動の総支払額 | 固定(3.14%+諸費用80万)との比較 |
|---|---|---|
| 2.0% | 39,918,903円 | 変動が約723万円安い |
| 2.5% | 42,673,057円 | 変動が約448万円安い |
| 3.0% | 45,533,236円 | 変動が約162万円安い |
| 3.28% | 47,180,289円 | ほぼ互角(損益分岐点) |
| 3.3% | 47,299,163円 | 固定が約15万円安い |
分岐点は変動の生涯平均が約3.28%(生涯平均=30年間の平均金利であって、変動が到達するピークではありません)。ここを超えて初めて、今フラット35へ借り換えた方がトータルで得になります。
注目すべきは、変動が今の固定と同じ3.0%(一定)まで上がっても、まだ変動据置きの方が約162万円安い点です。理由は2つ。変動3.0%は固定3.14%より金利が0.14ポイント低いこと、そして固定側には諸費用80万円のハンデが乗ることです。
自分の残債・残期間で分岐点がどこに来るかは、下記のツールで試算できます。
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5. シミュレーション②:変動が「段階的に上がる」現実的なシナリオ
「一定水準」より現実に近いのは、変動が毎年少しずつ上がるケースです。ここでも据置きが健闘します。
変動を今の1.0%スタートとし、毎年一定幅で上昇して上限で頭打ちになる想定を、エンジンの各金利返済額を年ごとに積み上げて計算しました(残高を毎年その時点の金利で再計算)。
| シナリオ(変動1.0%スタート) | 30年の総支払額 | 固定3.14%+諸費用80万(約4,715万円)との比較 |
|---|---|---|
| 上がらず1.0%のまま | 34,737,068円 | 変動が約1,242万円安い |
| 毎年+0.25%で2.0%まで上昇 | 39,104,835円 | 変動が約805万円安い |
| 毎年+0.25%で3.0%まで上昇 | 42,581,318円 | 変動が約457万円安い |
| 毎年+0.25%で4.0%まで上昇 | 45,174,131円 | 変動が約198万円安い |
| 毎年+0.5%で4.0%まで上昇 | 47,868,365円 | 固定が約72万円安い |
| 毎年+0.5%で5.0%まで上昇 | 51,534,331円 | 固定が約438万円安い |
ポイントは、毎年0.25%ずつ、10年以上かけて4.0%まで上がるという相当な上昇でも、変動据置きの方がまだ約198万円安いことです。固定が明確に得になるのは「毎年0.5%ペース(3年で+1.5%)で4%以上まで急騰する」ような、かなり速く・高くの上昇に限られます。
このシミュレーションは、§4でいう「生涯平均」が現実の金利の道筋でどうなるかを示したものです。同じ到達点でも、ゆっくり上がるほど生涯平均は低くなり、据置きが有利に働きます。
なお、多くの銀行の変動ローンには5年ルール・125%ルール(返済額の見直しは5年ごと・増額は前回の1.25倍まで)があり、金利が急騰しても毎月の請求額の増え方はこの試算より緩やかになります(ただし差額は未払利息として後に繰り越されます)。詳しくは固定vs変動の記事を参照してください。
6. 固定に換えても得しにくい典型ケース(正直な注意)
次のような条件では、固定への借り換えは損になりやすいので慎重に判断してください。
- 残期間が短い(10年以下):残り期間が短いほど、金利上昇が総額に効く余地が小さくなります。高い固定に換える保険料の方が上回りやすくなります。
- 残債が小さい:残債が少ないほど利息の総額そのものが小さく、諸費用80万円前後の回収が重くのしかかります。
- 変動がさほど上がらない見通し:シミュレーション①②の通り、生涯平均3.28%を超えないと固定は元が取れません。
参考に、残債2,000万円・残期間20年の補助ケースをエンジンで計算すると、変動1.0%据置きの総支払は22,074,927円、フラット35(3.14%)は26,958,340円。この規模の諸費用は借入額の約2.7%=約55万円が目安で、これを加えると固定は約543万円割高。変動が毎年0.25%で3.14%まで上がっても総支払24,954,993円で、なお固定より約255万円安く済みます。残債・残期間が小さいほど固定の分が悪くなることがわかります。
7. それでも固定への借り換えを検討する価値があるケース
数字上は不利でも、固定が「安心料」として合理的になる場面もあります。
- 金利が1〜2%上がると家計が回らなくなる(返済比率が高い・貯蓄が薄い)
- 数年以内に収入が下がる予定がある(定年・転職・世帯の働き方変更)
- 残期間が20年超で長く、上昇リスクにさらされる期間が長い
これらは「損益分岐で勝つか」より「最悪シナリオでも払い切れるか」を優先する判断です。総支払で多少割高でも、返済額を確定できること自体に価値があります。
8. よくある質問
Q. 変動が今の固定と同じ3.14%まで上がったら、固定に換えておくべきだった?
必ずしもそうではありません。変動は今の低金利からスタートして時間をかけて3.14%に近づくため、序盤の利息が軽く済みます。シミュレーション①の通り、生涯平均が約3.28%を超えて初めて固定が得になります。到達点だけでなく「いつ・どのくらいの速さで」上がるかが効きます。
Q. 諸費用を抑えれば損益分岐は下がりますか?
はい。諸費用が小さいほど固定側のハンデが減るため、分岐点の金利は下がります。事務手数料が定額の金融機関を選ぶ、電子契約で印紙税を抑えるなど、諸費用を圧縮すると固定の不利が和らぎます。ただし変動の生涯平均が3%前後にとどまる限り、固定が明確に得になるのは限定的です。
Q. 固定にすると住宅ローン控除は変わりますか?
借り換え後も、新ローンが旧ローンの返済のためであること・返済期間が10年以上あることなどの条件を満たせば控除は継続できます(借入額が旧残高を超える場合は、超過分が控除対象外になるだけで継続自体は可能です)。ただし控除率0.7%は市場金利とは無関係で、固定・変動どちらでも同じルールです。詳細は住宅ローン控除の記事を確認してください。
Q. 全額借り換えず、一部だけ固定にする方法は?
金融機関によっては借入を変動と固定に分ける「ミックスローン」を選べます。上昇リスクを一部だけヘッジしたい場合の折衷案になりますが、それぞれに事務手数料がかかる点は要確認です。
まとめ
- 残債3,000万・残30年を今フラット35(3.14%)へ換えると毎月約3.2万円増=保険料の先払い
- 諸費用約80万円込みで固定が得になるのは、変動の生涯平均が約3.28%を超えた場合のみ
- 変動が毎年0.25%ずつ4.0%まで上がっても、据置きの方がなお約198万円安い
- 固定が得になるのは「毎年0.5%ペースで4%超まで急騰」など速く・高い上昇に限られる
- 残期間が短い・残債が小さい・上昇が緩やかなケースでは固定は割高になりやすい
- 数字で不利でも、急騰時に払い切れないなら固定化は"安全のための合理的な選択"
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この記事の根拠(出典)
- 住宅金融支援機構「フラット35の借入金利の推移」(最新の最頻金利は毎月改定されるため公式で確認):https://www.flat35.com/kinri/index.php
- 日本銀行「金融政策」(政策金利の最新は公式で確認):https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/index.htm
- 国税庁「No.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1213.htm
※金利は月次・年度で改定されます。適用時点の最新値は各公式で必ずご確認ください。毎月返済・総返済額は当サイトのローン計算エンジン(元利均等)で算出しています。
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