資産管理会社(マイクロ法人)はいくらから得?個人の税金と比較した損益分岐点
法人化の損得は事業利益と前提で変わる。役員報酬を抑えた社会保険料の削減、経費の範囲(社用車・出張手当)、維持費(赤字でも均等割7万円)を、事業利益500万・800万・1,000万円の個人事業主と比べて試算。
執筆:しぐ ・ 更新日: 2026-09-15
株式投資や不動産投資で利益が出始めると、個人の税金の高さ(最大55%)に悩まされます。そこで検討されるのが、資産管理会社(プライベートカンパニー)の設立です。
法人化すれば、税金が安くなるだけでなく、経費の幅が広がり、家族への所得分散や相続対策にもなります。しかし法人には「維持費」や「社会保険料」という重いコストがかかるため、メリットがデメリットを上回るかどうかを事前に計算することが不可欠です。
この記事では、個人事業と法人の損益分岐点、社会保険料削減の仕組み、法人特権の経費、含み益課税というリスク、そして実際の手取りシミュレーションまで詳しく解説します。
1. 個人 vs 法人の税率比較
法人化で得をする事業利益の水準は、前提で大きく動きます。§5の前提で試算すると、事業利益500万円ではまだ法人化のほうが約21万円不利で、損得が並ぶのは610万円前後です(法人に残したお金を個人で受け取るときの税金は含めない比較)。⚠️また、損得を大きく左右するのは税率差より社会保険料の削減額です(§2・§5)。
課税所得別の実効税率比較
| 課税所得 | 個人(所得税+所得税額への2.1%の上乗せ+住民税の実効税率) | 法人(法人税+地方税等。その所得の部分にかかる税率) | 税率だけを比べた場合(所得全体の平均どうし) |
|---|---|---|---|
| 400万円以下 | 15.1〜19.5% | 約21% | 個人のほうが低い |
| 400〜800万円 | 19.5〜25.4% | 約23% | 課税所得約500万円までは個人のほうが低い |
| 800万〜4,000万円 | 25.4〜43.7% | 約34% | 法人のほうが低い |
| 4,000万円超 | 43.7%〜(増えるほど55.945%に近づく) | 約34% | 法人のほうが低い |
※個人側は課税所得全体の平均(実効税率)で、所得税の速算表・所得税額への2.1%の上乗せ・住民税10%から計算した値です。この上乗せは、2026年分は復興特別所得税2.1%、2027年分(令和9年分)から2047年分(令和29年分)までは復興特別所得税1.1%+防衛特別所得税1.0%です(令和8年法律第12号)。合計は2.1%のままなので、その間は上の実効税率も変わりません。⚠️よく見る「最大55%(上乗せ込みで55.945%)」は追加の1円にかかる限界税率で、課税所得が4,000万円を超えた部分にしかかかりません。平均は4,000万円ちょうどで43.7%です。 ※法人側の税率は、その所得の部分にかかる税率の目安です(個人の列のような所得全体の平均ではありません)。資本金1億円以下の中小法人に標準税率(法人税15%/23.2%、地方法人税=法人税の10.3%、法人住民税の法人税割=法人税の7.0%、法人事業税3.5%/5.3%/7.0%、特別法人事業税=法人事業税の37%)を当て、事業税を損金に入れた実効税率で、400万円以下の部分が約21.4%、400万円超800万円以下が約23.2%、800万円超が約33.6%です。所得全体の平均に直すと、所得800万円なら約22.3%(400万円×21.4%+400万円×23.2%)、4,000万円なら約31.3%で、右端の列はこの平均どうしを比べています。2026年4月1日以後に始まる事業年度からは、法人税額が年500万円を超える部分(所得がおよそ2,400万円を超える部分)に防衛特別法人税(4%)が加わるので、その所得帯の法人の税率はこの表より高くなります(国税庁「防衛特別法人税の創設」)。§5の試算は、事業税を損金に入れる効果を含めない計算です。 ※⚠️法人化の損得は、この税率差だけでは決まりません。下の「損益分岐点のイメージ」と§2のとおり、実際には社会保険料の削減額と維持コスト(均等割・税理士費用)が判断を左右します。
個人は累進課税で限界税率が最大55.945%まで上がりますが(平均の実効税率は課税所得4,000万円で43.7%)、中小企業(資本金1億円以下)の法人税は年800万円以下の利益部分が約15%(実効税率20%台)、800万円超も約23%(実効税率30%台)です。
損益分岐点のイメージ
| 事業利益 | 判断の目安(§5の前提。法人に残したお金を個人で受け取るときの税金は含めない比較) |
|---|---|
| 300万円以下 | 法人化のデメリット(維持費・税理士費)がメリットを上回る可能性が高い(§5の前提で約37万円の損) |
| 300〜500万円 | 法人化のほうが不利になりやすい(§5の前提で500万円なら約21万円の損) |
| 500〜800万円 | 前提しだいで損得が入れ替わる(§5の前提では610万円前後で並ぶ) |
| 800万円超 | 社会保険料の削減が固定費を上回りやすい水準(§5の前提で800万円なら約35万円の得。社会保険料が約75万円減る一方、税金と税理士費用は法人のほうが多くかかる) |
| 1,000万円超 | 消費税の免税期間終了前に法人成りを検討 |
2. マイクロ法人最大のメリット「社会保険料の最適化」
法人化の最大のメリットは、税金よりも社会保険料の削減にあります。特に個人事業主として国民健康保険・国民年金を払っている人にとって、マイクロ法人は劇的な効果をもたらします。
仕組み:役員報酬を月4.5万円に設定する
自分の法人から自分に払う役員報酬を、社会保険の等級が最低になる「月額45,000円(年収54万円)」に設定します。すると社会保険料は、会社負担分を含めて年間約27万円(本人負担は約13万円)で済みます。
個人事業主と法人化の社会保険料比較
| 事業利益 | 個人事業主(国保+国民年金) | マイクロ法人役員(月4.5万円設定) | 削減額 |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 約48.5万円 | 約26.7万円 | 約21.8万円 |
| 500万円 | 約69.7万円 | 約26.7万円 | 約43.0万円 |
| 700万円 | 約90.8万円 | 約26.7万円 | 約64.1万円 |
| 1,000万円 | 約117.1万円 | 約26.7万円 | 約90.4万円 |
※個人事業主は、事業利益から青色申告特別控除65万円を引いた所得をもとにした東京23区の令和8年度の国民健康保険料(40歳未満・単身。所得割は所得から43万円を引いた額の10.58%、均等割は67,073円。1,000万円の行は基礎分67万円・後期高齢者支援金分26万円の上限に達しています)と、国民年金保険料(令和8年度・月17,920円)の合計です。マイクロ法人は、協会けんぽ東京の令和8年度の料率で、健康保険(子ども・子育て支援金を含め10.08%)を標準報酬月額5.8万円に、厚生年金(18.3%)を8.8万円に掛けた労使合計約26.3万円に、会社だけが負担する子ども・子育て拠出金(0.36%)約0.4万円を足しています。40〜64歳は、どちらにも介護保険料が加わります。
事業利益500万円の個人事業主が法人化して役員報酬を月4.5万円にすると、社会保険料だけで年間約43万円の削減効果があります。ただし§5のとおり、税理士費用や法人税等を含めると、事業利益500万円ではまだ法人化のほうが不利です。
生活費の補い方
役員報酬を4.5万円に抑えた場合、生活費が不足します。一般的な補い方は次の通りです。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 法人から配当 | 法人の利益を配当として受け取る(法人税後の利益に課税) |
| 法人経費の活用 | 社宅・出張手当などで実質的な生活費を法人経費に移す |
| 個人事業の別収入 | 副業など個人側の別収入で補う |
二刀流(会社員+マイクロ法人)の場合
本業(会社員)で社会保険に加入している場合、マイクロ法人側では「非常勤役員(報酬ゼロ)」にすることで、法人側の社会保険料負担をゼロにできます。
この場合、法人の利益はすべて会社に残し(内部留保)、将来の役員退職金として積み立てたり、経費に充当したりします。役員退職金は退職所得控除が使えるため、受け取り時の税負担も小さくなります。
3. 経費の範囲が圧倒的に広がる
個人事業では認められにくい経費も、法人なら認められやすくなります。
① 借上社宅(家賃)
個人事業では自宅兼事務所の家賃を経費にする場合、仕事に使っている面積(例:30%)しか認められません。法人の場合、「法人名義で借り上げ社宅」にすることで家賃の50〜80%を経費にできます。
借上社宅の計算ルール
役員から徴収する賃料相当額(小規模住宅の場合)は次の算式で計算します。
賃料相当額 = (固定資産税評価額×0.2%) + (12円×建物の床面積÷3.3㎡) + (敷地の固定資産税評価額×0.22%)
市場家賃がたとえば月15万円の物件でも、賃料相当額は2〜3万円程度になることが多く、差額12〜13万円を法人経費にできます。
| 市場家賃 | 賃料相当額(目安) | 経費計上額(月) | 年間節税効果(法人税23%) |
|---|---|---|---|
| 10万円 | 1.5〜2万円 | 8〜8.5万円 | 約22万円 |
| 15万円 | 2〜3万円 | 12〜13万円 | 約33万円 |
| 20万円 | 2.5〜4万円 | 16〜17.5万円 | 約44万円 |
② 出張手当(日当)
出張規定を作成すれば、出張時に「日当(例:1日3,000〜5,000円)」を支給できます。法人側は全額経費になり、個人側は所得税・住民税がかかりません(非課税所得)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出張手当の相場 | 国内日帰り:2,000〜5,000円/日、宿泊:3,000〜10,000円/日 |
| 法人側 | 全額損金算入(消費税の課税仕入れにもなる) |
| 個人側 | 所得税・住民税がかからない(社会保険料の計算対象外) |
| 必要な書類 | 出張規定の整備、出張報告書の作成 |
月に10日出張して1日5,000円なら月5万円・年60万円が実質無税で受け取れる計算です。
③ 社用車(カーリース・購入)
法人名義の車は原則として全額経費にできます。ただし私用で使っていると否認されるリスクがあるため、運転日報の作成と業務使用の記録が必須です。
| 車種 | 注意点 |
|---|---|
| 普通乗用車 | 業務使用記録があれば全額経費可 |
| 高級車(ベンツ等) | 「顧客送迎等の業務上の必要性」を説明できる場合のみ。資産管理会社では否認されやすい |
| EVカー | リース料を全額経費化しつつ、環境税優遇も享受できる場合あり |
4. 赤字でもかかる法人の固定コスト(デメリット)
法人には「赤字=税金ゼロ」とはならない固定コストが存在します。
① 法人住民税の均等割(年7万円)
利益がゼロでも、赤字でも、法人が存在するだけで年間約7万円(資本金1,000万円以下・従業員50人以下の場合)の地方税がかかります。
| 資本金・従業員規模 | 均等割(目安) |
|---|---|
| 1,000万円以下・50人以下 | 約7万円/年 |
| 1,000万円以下・50人超 | 約14万円/年 |
| 1,000万円超・1億円以下 | 約18〜22万円/年 |
② 税理士・会計費用
法人の決算申告は個人の確定申告より大幅に複雑です。
| サービス形態 | 費用目安 |
|---|---|
| 年1回のみ決算申告(スポット) | 15〜30万円 |
| 顧問契約(月次+決算) | 月3〜5万円 + 決算料10〜20万円 = 年50〜80万円 |
| 自力(会計ソフトのみ) | 月5,000〜10,000円(税務調査リスクは自己責任) |
③ その他の維持コスト
| コスト項目 | 費用 |
|---|---|
| 登記費用(住所変更・役員変更等) | 1〜3万円/件 |
| 印鑑証明・登記簿謄本 | 数百〜数千円/件 |
| 法人口座の維持費 | 無料〜月数千円(銀行による) |
| 社会保険料(役員報酬分・労使合計) | 役員報酬45,000円設定なら年約27万円(本人負担の約13万円を含む) |
総固定コストの目安
| コスト項目 | 年額 |
|---|---|
| 均等割 | 約7万円 |
| 税理士費用(決算のみ) | 約15〜30万円 |
| 社会保険料(役員45,000円設定・労使合計) | 約27万円 |
| 合計 | 約49〜64万円 |
この固定コストを社会保険料削減効果や税率差で上回る必要があります。
5. 手取りシミュレーション:個人事業 vs 法人化
3つのケースは、すべて同じ前提で計算しています(前提は表の下にまとめています)。
ケース1:事業利益500万円(自営業者・社保は国保)
| 項目 | 個人事業主 | マイクロ法人化 |
|---|---|---|
| 事業利益 | 500万円 | 500万円 |
| 役員報酬 | — | 54万円(月4.5万円。自分に払うので「手元に残る額」に含まれる) |
| 社会保険料 | 約69.7万円(国保+国民年金) | 約26.7万円(労使合計+子ども・子育て拠出金) |
| 税理士費用 | — | 25万円 |
| 法人の課税所得 | — | 約407.5万円(500万−54万−13.5万−25万) |
| 所得税+住民税 | 約49.2万円 | 0円(役員報酬54万円は給与所得控除の範囲内) |
| 個人事業税 | 約10.5万円 | — |
| 法人税等 | — | 約91.4万円 |
| 法人住民税の均等割 | — | 7万円 |
| 手元に残る額(個人+法人) | 約370.6万円 | 約349.9万円 |
| 差額 | — | 約−20.7万円 |
ケース2:事業利益800万円
| 項目 | 個人事業主 | マイクロ法人化 |
|---|---|---|
| 事業利益 | 800万円 | 800万円 |
| 役員報酬 | — | 54万円(月4.5万円。自分に払うので「手元に残る額」に含まれる) |
| 社会保険料 | 約101.4万円(国保+国民年金) | 約26.7万円(労使合計+子ども・子育て拠出金) |
| 税理士費用 | — | 25万円 |
| 法人の課税所得 | — | 約707.5万円(800万−54万−13.5万−25万) |
| 所得税+住民税 | 約132.4万円 | 0円 |
| 個人事業税 | 約25.5万円 | — |
| 法人税等 | — | 約166.0万円 |
| 法人住民税の均等割 | — | 7万円 |
| 手元に残る額(個人+法人) | 約540.7万円 | 約575.3万円 |
| 差額 | — | 約+34.6万円 |
ケース3:事業利益1,000万円
| 項目 | 個人事業主 | マイクロ法人化 |
|---|---|---|
| 事業利益 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 役員報酬 | — | 54万円(月4.5万円。自分に払うので「手元に残る額」に含まれる) |
| 社会保険料 | 約117.1万円(国保+国民年金) | 約26.7万円(労使合計+子ども・子育て拠出金) |
| 税理士費用 | — | 25万円 |
| 法人の課税所得 | — | 約907.5万円(1,000万−54万−13.5万−25万) |
| 所得税+住民税 | 約190.3万円 | 0円 |
| 個人事業税 | 約35.5万円 | — |
| 法人税等 | — | 約228.5万円 |
| 法人住民税の均等割 | — | 7万円 |
| 手元に残る額(個人+法人) | 約657.1万円 | 約712.8万円 |
| 差額 | — | 約+55.7万円 |
※試算の前提:東京23区・40歳未満・単身・ほかに所得なし。個人事業主は令和8年分の所得税(基礎控除は合計所得に応じて104万/67万/62万円)と住民税(所得割10%・調整控除・均等割5,000円)で計算し、青色申告特別控除65万円を使い、個人事業税(事業主控除290万円・税率5%)がかかる業種とします。社会保険料は§2の表と同じ計算です。マイクロ法人は資本金1,000万円以下・従業員なしで、法人の課税所得は事業利益から役員報酬・会社負担の社会保険料(約13.5万円)・税理士費用(§4の表の範囲内の年25万円)を引いた額です。法人税等は、法人税15%(所得800万円以下の部分)・23.2%(800万円超の部分)、地方法人税(法人税の10.3%)、法人住民税の法人税割(法人税の7.0%)、法人事業税3.5%/5.3%/7.0%、特別法人事業税(法人事業税の37%)で計算しました。事業税を翌年の経費・損金に入れる効果と、消費税は含めていません。 ※「手元に残る額」は、個人の手取りと、法人に残るお金の合計です。法人に残ったお金を個人で使うには、役員報酬や配当として受け取る必要があり、そのときにまた税金がかかります(この表には含めていません)。 ※個人事業税がかからない業種なら、差額はケース1で約−31.2万円、ケース2で約+9.1万円、ケース3で約+20.2万円まで小さくなります。
出典:国税庁 No.5759 法人税の税率/東京都主税局 法人事業税・法人都民税(法人事業税・法人税割の税率、地方法人税10.3%)/東京都主税局 特別法人事業税/東京都主税局 個人事業税/練馬区 国民健康保険料の計算方法(令和8年度)/日本年金機構 国民年金保険料
この前提では、事業利益500万円では法人化のほうが不利で、利益が多いほど法人化の差額が大きくなります(法人に残したお金を個人で受け取るときの税金は含めない比較)。
6. 含み益課税という「爆弾」
株式や仮想通貨を法人で持つ場合の最大のリスクが期末時価評価課税です。
| 比較 | 個人 | 法人 |
|---|---|---|
| 含み益への課税 | 売却しない限りかからない | 決算期末に時価評価し含み益に法人税がかかる |
| 対象資産 | — | 売買目的有価証券、短期的売買目的の暗号資産など |
| リスク | — | 時価が上がったが現金がない場合の「黒字倒産」 |
具体例:1億円で買ったビットコインが期末に2億円になっていたとします。売っていないにもかかわらず、1億円の利益が計上され、法人税・地方税などで3,000万円を超える税金(ほかに所得がない中小法人に標準税率と防衛特別法人税を当てると約3,600万円)を現金で納付しなければなりません。
法人の暗号資産の期末時価評価課税は段階的に緩和されてきました。令和5年度(2023年度)税制改正で自社発行・継続保有(譲渡制限あり)の暗号資産が対象外になり、令和6年度(2024年度)税制改正で他社発行でも継続保有(譲渡制限が公表される一定要件を満たし届出をしたもの=特定譲渡制限付暗号資産)は原価法を選べる(=期末時価評価の対象外)ようになりました。ただし短期売買目的の有価証券や、短期売買目的で保有する暗号資産は依然として期末時価評価の対象です。
7. 法人形態の選択:合同会社 vs 株式会社
資産管理会社なら、知名度より維持コストを重視して合同会社(LLC)がおすすめです。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 15万円〜 | 6万円 |
| 定款認証費用 | 約5万円 | 不要(0円) |
| 設立費用合計 | 約20〜25万円 | 約6〜10万円 |
| 役員の任期 | あり(2〜10年ごとに重任登記必要) | なし(無期限) |
| 決算公告 | 義務あり(官報掲載費など) | 義務なし |
| 対外的な信用度 | 高い | やや低い(対法人取引には問題なし) |
AmazonジャパンやAppleジャパンも合同会社です。外部からの資金調達(VCなど)を予定しない純粋な資産管理会社なら合同会社一択でしょう。
設立の流れ(合同会社の場合)
| ステップ | 作業内容 | 目安費用 |
|---|---|---|
| 1. 定款作成 | 目的・商号・所在地・社員の出資額を記載 | — |
| 2. 出資金の払込 | 個人口座に設立出資金を振り込む(1円〜可) | — |
| 3. 登記申請 | 法務局に登記申請書を提出 | 登録免許税6万円 |
| 4. 各種届出 | 税務署(法人設立届)・都道府県・市区町村・年金事務所 | — |
| 5. 法人口座開設 | 銀行に法人口座を開設 | — |
登記申請から完了まで1〜2週間程度かかります。
8. 法人化が向く人・向かない人
法人化が向く人
| 条件 | 理由 |
|---|---|
| 年間事業利益が継続的に高い(§5の前提では610万円前後が分かれ目。法人に残したお金を受け取るときの税金は含めない) | 社会保険料の削減額が固定コストを上回る |
| 個人事業主(国保加入)で利益が多い | 社会保険料削減効果が最大になる |
| 家族を役員にできる(給料を払える) | 所得分散で税率を下げられる |
| 将来的に相続対策が必要 | 法人での資産蓄積→相続税対策になる |
| 売却予定のない長期投資(株・不動産) | 含み益課税リスクが低く、経費拡大メリットを享受できる |
法人化が向かない人
| 条件 | 理由 |
|---|---|
| 利益が年300万円以下 | 固定コスト(社会保険料を含めて年49〜64万円)がメリットを上回る可能性 |
| 会社員で副業利益が少額 | 二刀流で社保ゼロ化は可能だが、維持費対比が悪い |
| 短期売買で含み益が大きい | 期末時価評価課税で逆に増税になる可能性 |
| 事務処理が苦手で税理士を雇えない | 法人の記帳・申告は個人より格段に複雑 |
9. よくある質問
Q. 妻(家族)を役員にできますか?
可能です。会社員で副業禁止規定がある場合、配偶者を代表社員にして業務(経理・管理)を担当してもらう形をとる人が多いです。ただし、名義だけ借りて実態がないのに給料を払うと「仮装経理」として否認されます。実際に役務を提供している記録が必要です。
Q. 法人の赤字を翌年に繰り越せますか?
法人の赤字は最長10年間繰り越せます(青色申告法人の場合)。個人事業主の繰越(3年間)より長く、長期的な節税に有利です。
Q. 消費税の免税はどうなりますか?
新設法人は原則として設立後2年間は消費税免税事業者です。ただし資本金1,000万円以上で設立すると初年度から課税事業者になります。資本金は999万円以下に設定するのが一般的です。また特定期間(前事業年度の前半6ヶ月)の課税売上高が1,000万円超の場合は翌年から課税事業者になります。
Q. 不動産管理会社と何が違いますか?
不動産管理会社は所有する不動産の管理(家賃回収・修繕手配)を主業務とします。資産管理会社は有価証券の運用を主業務とします。税務上の扱いは似ていますが、不動産管理会社の方が金融機関からの融資を受けやすい傾向にあります。
Q. 法人に株式を移すと含み益に課税されますか?
個人名義の株式を法人に移す場合、「時価」での売買として扱われます。含み益がある場合は個人に譲渡所得税(20.315%)がかかります。最初から法人で購入・保有を始めるか、含み損がある状態で移すのが節税上有利です。
まとめ
- 損益分岐点は前提で大きく動く。§5の前提(東京23区・40歳未満・単身・個人事業税あり、法人に残したお金を個人で受け取るときの税金は含めない比較)では、事業利益500万円ではまだ約21万円不利で、610万円前後で並び、800万円で約35万円有利
- 最大のメリットは税率差よりも「社会保険料の削減」で、事業利益500万円なら年約43万円の差
- 借上社宅・出張手当・社用車など個人事業より広い経費範囲が利用できる
- 固定コスト(均等割7万円・税理士費用15〜30万円・社会保険料約27万円)で年49〜64万円がかかる
- 株式・暗号資産の含み益に期末時価評価課税がかかるリスクに注意
- 合同会社は設立費用6〜10万円と安く、資産管理会社に適している
- 副業から始めて、利益が損益分岐点を安定して超えてから法人成りを検討する
個人のままの手取りを確認する
このツールは個人の給与収入向けで、法人化した場合との比較には対応していません(法人税や役員報酬を入力する欄はありません)。まず個人のままの手取り・所得税・住民税・社会保険料を出し、本記事の法人化後の試算と並べて比べてください。
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