贈与税はいくらまで非課税?年間110万円と「相続時精算課税」の新ルール

孫や子供にお金を渡す時の税金対策。暦年贈与の注意点、2024年から変わった相続時精算課税制度、2026年3月で終わった教育資金の一括贈与特例、配偶者への2000万円贈与(おしどり贈与)まで。

「孫の教育費を出してあげたい」「子供が家を買う資金を援助したい」というとき、忘れてはいけないのが贈与税です。

贈与税は相続税の抜け道を塞ぐために設けられており、税率は相続税よりも高めに設定されています。何も考えずに1,000万円渡すと、約177万円もの贈与税がかかります。ただし国も「若い世代にお金を活用してほしい」という観点から、様々な非課税枠・特例を用意しています。

この記事では、基本の暦年贈与(年110万円)、2024年に大きく変わった相続時精算課税制度、用途別の一括贈与特例、おしどり贈与まで詳細に解説します。


1. 贈与税の基本と税率

贈与税は、1年間(1月1日〜12月31日)に受け取った財産の合計額に対してかかります。財産をもらった側(受贈者)が翌年3月15日までに申告・納税します。

贈与税の税率(一般税率:特例以外の贈与)

課税価格(基礎控除後)税率控除額
200万円以下10%—
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1,000万円以下40%125万円
1,500万円以下45%175万円
3,000万円以下50%250万円
3,000万円超55%400万円

特例税率(贈与を受けた年の1月1日に18歳以上の子・孫が父母・祖父母から受ける贈与)

課税価格(基礎控除後)税率控除額
200万円以下10%—
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

特例税率は一般税率より低く、直系の親・祖父母から子・孫への贈与に適用されます。

贈与税の計算例

受け取り額課税対象(−110万円)贈与税額(特例税率)
200万円90万円9万円(10%)
500万円390万円48.5万円(15%×390−10)
1,000万円890万円177万円(30%×890−90)
2,000万円1,890万円585.5万円(45%×1890−265)

2. 王道の節税「暦年贈与(年110万円)」

年間に受け取った財産の合計額が110万円以下なら贈与税ゼロ・申告も不要です。これが暦年贈与の基礎控除です。

活用のポイント

  • 受け取る側(受贈者)ごとの枠:子3人に各110万円で330万円/年を無税移転
  • 複数の贈与者から受け取る場合は合算:父100万円 + 母100万円 = 200万円で課税対象
  • 10年間で1,100万円、20年間で2,200万円を無税移転可能

連年贈与認定のリスク

「毎年100万円を10年間あげる」という合意(定期金贈与)と認定されると、総額1,000万円に対して課税される可能性があります。

対策:

対策内容
毎年贈与契約書を作成その年ごとに新たな贈与として記録を残す
金額をわずかに変える毎年必ず同額は定期性を疑われやすい
時期をずらす毎年同時期のみ避ける
銀行振込の記録保存現金手渡しより記録が明確

生前贈与加算(2024年改正:3年→7年へ延長)

贈与者が亡くなる前の贈与は相続財産に「持ち戻し」されます。

相続開始(死亡)の時期加算期間
2026年まで相続前3年(従来どおり)
2027〜2030年移行期(3年超〜順次延長)
2031年以降相続前7年(完全移行)

ただし、延長された加算期間(相続前3年より前〜7年目)の贈与については、合計100万円を差し引いた金額が加算対象になります。健康なうちから計画的に贈与することが重要です。


3. 2024年改正で大きく変わった「相続時精算課税制度」

制度の概要

相続時精算課税は、生前に大きな金額を贈与しやすくする制度です。

  • 2,500万円まで非課税で贈与できる(一括・複数年にわたっても合計2,500万円まで)
  • 2,500万円超の部分は一律20%の贈与税がかかる
  • 贈与した財産は、将来の相続時に相続財産に足し戻して課税(精算課税=後で精算する)

2024年改正:年110万円の基礎控除が新設

従来の相続時精算課税は「相続税の先送り」に過ぎず、節税効果が薄いと批判されていました。2024年の改正で年110万円の基礎控除が追加され、使い勝手が劇的に向上しました。

年間贈与額改正前の扱い改正後の扱い
110万円以下2,500万円枠を消費・持ち戻しあり申告不要・持ち戻しなし
110〜2,500万円非課税で贈与可能・持ち戻しあり非課税で贈与可能・持ち戻しあり
2,500万円超20%の贈与税が発生20%の贈与税が発生

2024年以降、年110万円の枠は持ち戻し不要となりました。暦年贈与の「7年以内持ち戻しリスク」がなく、かつコツコツ贈与できるという点で、長期的な生前贈与計画の主軸になりうる制度です。

暦年課税 vs 相続時精算課税の比較

比較項目暦年課税相続時精算課税(2024年〜)
年間非課税枠110万円110万円(新設基礎控除)+ 2,500万円(特別控除)
持ち戻し(生前贈与加算)7年以内あり(改正後)年110万円の基礎控除部分はなし。それを超える部分は、2,500万円の特別控除の範囲内も含めてあり
税率(超過分)累進税率10〜55%一律20%
手続き110万円以下は申告不要初年度に選択届出書の提出が必要
向いている場面長期にわたる小額贈与大きな一括贈与 + 長期コツコツ

4. 用途限定の一括贈与特例

特定の用途に限り、年110万円の枠とは別に大きな金額を非課税で贈与できます。

教育資金の一括贈与(2026年3月31日で終了)

祖父母などから30歳未満の子・孫へ、教育資金として最大1,500万円までを非課税で一括贈与できた特例は、令和8年(2026年)3月31日までとされていた適用期限が延長されずに終了しました。2026年4月1日以後の贈与には使えません。3月31日までにこの特例の適用を受けた分には、引き続き特例が適用されます(国税庁 No.4510)。

これから孫などの教育費を援助する場合は、§6の「必要な都度、直接支払う」形であれば、この特例がなくても贈与税はかかりません。

結婚・子育て資金の一括贈与(最大1,000万円)

項目内容
対象者18歳以上50歳未満の子・孫
非課税上限1,000万円(うち結婚関連は300万円まで)
対象費用結婚式費用・不妊治療費・分娩費・産後ケアなど
手続き専用口座を開設・領収書提出
期限2027年3月31日までの贈与(国税庁 No.4511)
注意点50歳時点での残額に贈与税がかかる

住宅取得等資金の贈与(最大1,000万円)

項目内容
対象者贈与を受けた年の1月1日に18歳以上の子・孫
非課税上限省エネ住宅1,000万円・その他500万円(時限措置)
期限2026年12月31日までの贈与(2026年9月時点。国税庁 No.4508)
対象費用マイホームの新築・取得・増改築
手続き確定申告のみ(専用口座不要で使いやすい)
条件受贈者の合計所得が2,000万円以下など

上の特例の中で最も手続きが簡単です。確定申告で申告するだけで非課税になります。


5. おしどり贈与(配偶者控除)

婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産(または購入資金)を贈与する場合、最高2,000万円まで非課税になります。基礎控除110万円と合わせて2,110万円まで非課税で自宅の名義を変更できます。

メリット

メリット内容
相続財産の圧縮生前に不動産を移転することで相続財産を減らせる
二次相続対策配偶者に自宅を移しておくと一次相続(夫死亡)後の資産が減る
自宅売却時の控除自宅売却の3,000万円特別控除を夫婦ダブルで活用できる可能性

デメリット・コスト

コスト相続の場合贈与の場合
登録免許税0.4%2.0%(5倍)
不動産取得税課税なし固定資産税評価額×3〜4%
手間少ない名義変更手続きが必要

不動産評価額が3,000万円の場合、相続なら登録免許税12万円、贈与なら60万円(差額48万円)。さらに不動産取得税が数十万円かかります。

相続税の心配がない家庭(基礎控除以下)では、贈与のコストが相続税節税効果を上回ることが多いため、おしどり贈与のメリットが少ない場合があります。


6. 生活費・学費はその都度払えば非課税

意外と知られていませんが、扶養義務者から生活費・教育費として必要な都度・直接これらに充てるための贈与は、金額に関わらず非課税です。

非課税になる例

ケース金額の目安
大学生の子供への仕送り(生活費)月10万円(年120万円)程度まで
孫の大学入学金を祖父が直接振り込む数十〜150万円程度
娘の結婚式費用を親が式場に支払う数百万円
出産費用を親が病院に支払う実費
病院の治療費を家族が直接支払う実費

注意点

  • 「社会通念上認められる範囲」が条件。過大な仕送り(生活費の名目で毎月50万円など)はNG
  • 余った分を貯金・投資に回してはいけない(消費するものへの充当が条件)
  • 「数年分まとめて渡す」のはNGで「都度払い」が必要

教育資金の一括贈与特例は2026年3月31日で終了しましたが、教育費をこの「その都度払い」で援助する形は、引き続き使えます。


7. 贈与の証拠・記録の残し方

税務調査で「贈与の実態がない」と判断されると、名義預金として相続財産に戻されます。記録の残し方が重要です。

最低限行うべきこと

  1. 銀行振込で記録を残す(現金手渡しは記録が残らない)
  2. 贈与契約書を毎年作成する(形式は簡単なもので可。日付・金額・贈与者・受贈者を記載)
  3. 受け取る側の口座を受贈者自身が管理する(通帳・印鑑・カードを贈与者が持っていると名義預金と判定される)
  4. 贈与税の申告を積極的に行う(110万円超の年は必ず申告。あえて111万円を贈与し申告することで贈与の証拠にする方法もある)

8. 贈与税のシミュレーション

暦年贈与・20年間の移転シミュレーション(子2人・孫2人への贈与)

年間:子2人 × 110万円 + 孫2人 × 110万円 = 440万円/年(非課税)

年数累計移転額
5年2,200万円
10年4,400万円
20年8,800万円

20年間で8,800万円を無税で移転できます(健康で長生きすることが前提)。

相続時精算課税+年110万円の活用例

親が子に2,500万円の一括贈与(相続時精算課税)を行い、その後毎年110万円を贈与し続けるモデル:

年数後累計移転額(うち持ち戻しなし)
即座2,500万円(相続時精算課税・持ち戻しあり)
10年後+1,100万円(年110万円×10年・持ち戻しなし)
20年後+2,200万円(年110万円×20年・持ち戻しなし)

2,500万円の一括移転後も、毎年110万円ずつ持ち戻しなしで移転し続けられます。


9. よくある質問

Q. 祖父から孫に100万円、祖母から孫に100万円贈ってもいいか?

合計200万円になるため、110万円超の90万円が課税対象です(贈与税9万円)。受け取る側(孫)の1年間の受取合計が基準です。

Q. 110万円以内なら何も手続きしなくていいか?

申告は不要ですが、贈与の記録(契約書・振込記録)は残すことを推奨します。後の税務調査で「贈与の実態がない」と否定されないための証拠になります。

Q. 教育資金の一括贈与特例はまだ使えるか?

2026年4月1日以後の贈与には使えません。令和8年(2026年)3月31日までとされていた適用期限が延長されずに終了しました。3月31日までに特例の適用を受けた分は、引き続き特例が適用されます。これから教育費を援助するなら、§6の条件(扶養義務者が、必要な都度、直接教育費に充てるために渡す)を満たせば贈与税はかかりません。

Q. 贈与した後に贈与者が亡くなった場合の扱いは?

暦年課税の贈与は、相続前7年以内(2024年改正後、段階移行中)の分が相続財産に持ち戻されます。相続時精算課税は、年110万円の基礎控除部分は持ち戻しなしで、それを超える部分は2,500万円の特別控除の範囲内も含めて相続財産に加算されます。


まとめ

  • 贈与税の基礎控除は年110万円(受贈者1人あたり、申告不要)
  • 暦年贈与は長期・複数人への計画的贈与に向いている(7年以内は持ち戻しリスクあり)
  • 2024年から相続時精算課税も年110万円の基礎控除が新設され持ち戻しなしに(大幅強化)
  • 住宅取得等資金(最大1,000万円)・結婚・子育て資金(最大1,000万円)の非課税特例は用途限定。教育資金の一括贈与特例は2026年3月31日で終了した
  • 生活費・学費の都度払いは金額に関わらず非課税(専用口座不要・最もシンプル)
  • おしどり贈与(配偶者控除2,000万円)は相続税対策だが不動産移転コストに注意

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