贈与税はいくらまで非課税?年間110万円と「相続時精算課税」の新ルール
孫や子供にお金を渡す時の税金対策。暦年贈与の注意点、2024年から変わった相続時精算課税制度、教育資金の一括贈与特例、配偶者への2000万円贈与(おしどり贈与)まで。
執筆:しぐ ・ 更新日: 2026-06-14
「孫の教育費を出してあげたい」「子供が家を買う資金を援助したい」というとき、忘れてはいけないのが贈与税です。
贈与税は相続税の抜け道を塞ぐために設けられており、税率は相続税よりも高めに設定されています。何も考えずに1,000万円渡すと、約177万円もの贈与税がかかります。ただし国も「若い世代にお金を活用してほしい」という観点から、様々な非課税枠・特例を用意しています。
この記事では、基本の暦年贈与(年110万円)、2024年に大きく変わった相続時精算課税制度、用途別の一括贈与特例、おしどり贈与まで詳細に解説します。
1. 贈与税の基本と税率
贈与税は、1年間(1月1日〜12月31日)に受け取った財産の合計額に対してかかります。財産をもらった側(受贈者)が翌年3月15日までに申告・納税します。
贈与税の税率(一般税率:特例以外の贈与)
| 課税価格(基礎控除後) | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | — |
| 300万円以下 | 15% | 10万円 |
| 400万円以下 | 20% | 25万円 |
| 600万円以下 | 30% | 65万円 |
| 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
| 1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
| 3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
| 3,000万円超 | 55% | 400万円 |
特例税率(20歳以上の子・孫が父母・祖父母から受ける贈与)
| 課税価格(基礎控除後) | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | — |
| 400万円以下 | 15% | 10万円 |
| 600万円以下 | 20% | 30万円 |
| 1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
| 1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
| 3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
| 4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
| 4,500万円超 | 55% | 640万円 |
特例税率は一般税率より低く、直系の親・祖父母から子・孫への贈与に適用されます。
贈与税の計算例
| 受け取り額 | 課税対象(−110万円) | 贈与税額(特例税率) |
|---|---|---|
| 200万円 | 90万円 | 9万円(10%) |
| 500万円 | 390万円 | 48.5万円(15%×390−10) |
| 1,000万円 | 890万円 | 177万円(30%×890−90) |
| 2,000万円 | 1,890万円 | 585.5万円(45%×1890−265) |
2. 王道の節税「暦年贈与(年110万円)」
年間に受け取った財産の合計額が110万円以下なら贈与税ゼロ・申告も不要です。これが暦年贈与の基礎控除です。
活用のポイント
- 受け取る側(受贈者)ごとの枠:子3人に各110万円で330万円/年を無税移転
- 複数の贈与者から受け取る場合は合算:父100万円 + 母100万円 = 200万円で課税対象
- 10年間で1,100万円、20年間で2,200万円を無税移転可能
連年贈与認定のリスク
「毎年100万円を10年間あげる」という合意(定期金贈与)と認定されると、総額1,000万円に対して課税される可能性があります。
対策:
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 毎年贈与契約書を作成 | その年ごとに新たな贈与として記録を残す |
| 金額をわずかに変える | 毎年必ず同額は定期性を疑われやすい |
| 時期をずらす | 毎年同時期のみ避ける |
| 銀行振込の記録保存 | 現金手渡しより記録が明確 |
生前贈与加算(2024年改正:3年→7年へ延長)
贈与者が亡くなる前の贈与は相続財産に「持ち戻し」されます。
| 相続開始(死亡)の時期 | 加算期間 |
|---|---|
| 2026年まで | 相続前3年(従来どおり) |
| 2027〜2030年 | 移行期(3年超〜順次延長) |
| 2031年以降 | 相続前7年(完全移行) |
ただし、延長された加算期間(相続前3年より前〜7年目)の贈与については、合計100万円を差し引いた金額が加算対象になります。健康なうちから計画的に贈与することが重要です。
3. 2024年改正で大きく変わった「相続時精算課税制度」
制度の概要
相続時精算課税は、生前に大きな金額を贈与しやすくする制度です。
- 2,500万円まで非課税で贈与できる(一括・複数年にわたっても合計2,500万円まで)
- 2,500万円超の部分は一律20%の贈与税がかかる
- 贈与した財産は、将来の相続時に相続財産に足し戻して課税(精算課税=後で精算する)
2024年改正:年110万円の基礎控除が新設
従来の相続時精算課税は「相続税の先送り」に過ぎず、節税効果が薄いと批判されていました。2024年の改正で年110万円の基礎控除が追加され、使い勝手が劇的に向上しました。
| 年間贈与額 | 改正前の扱い | 改正後の扱い |
|---|---|---|
| 110万円以下 | 2,500万円枠を消費・持ち戻しあり | 申告不要・持ち戻しなし |
| 110〜2,500万円 | 非課税で贈与可能・持ち戻しあり | 非課税で贈与可能・持ち戻しあり |
| 2,500万円超 | 20%の贈与税が発生 | 20%の贈与税が発生 |
2024年以降、年110万円の枠は持ち戻し不要となりました。暦年贈与の「7年以内持ち戻しリスク」がなく、かつコツコツ贈与できるという点で、長期的な生前贈与計画の主軸になりうる制度です。
暦年課税 vs 相続時精算課税の比較
| 比較項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税(2024年〜) |
|---|---|---|
| 年間非課税枠 | 110万円 | 110万円(新設基礎控除)+ 2,500万円(特別控除) |
| 持ち戻し(生前贈与加算) | 7年以内あり(改正後) | 年110万円部分はなし。2,500万円超部分はあり |
| 税率(超過分) | 累進税率10〜55% | 一律20% |
| 手続き | 110万円以下は申告不要 | 初年度に選択届出書の提出が必要 |
| 向いている場面 | 長期にわたる小額贈与 | 大きな一括贈与 + 長期コツコツ |
4. 用途限定の一括贈与特例
特定の用途に限り、年110万円の枠とは別に大きな金額を非課税で贈与できます。
教育資金の一括贈与(最大1,500万円)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 30歳未満の子・孫・ひ孫 |
| 非課税上限 | 1,500万円(学校等への直接支払い分) |
| 対象費用 | 入学金・授業料・塾代・留学費用など |
| 手続き | 信託銀行等に専用口座を開設・領収書提出 |
| 期限 | 30歳まで(期限内に使い切れなければ残額課税) |
| 注意点 | 口座管理が面倒・手数料が発生する場合あり |
塾代や留学費用も対象なのが大きなメリット。ただし「領収書提出」という管理の手間があります。
結婚・子育て資金の一括贈与(最大1,000万円)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 18歳以上50歳未満の子・孫 |
| 非課税上限 | 1,000万円(うち結婚関連は300万円まで) |
| 対象費用 | 結婚式費用・不妊治療費・分娩費・産後ケアなど |
| 手続き | 専用口座を開設・領収書提出 |
| 注意点 | 50歳時点での残額に贈与税がかかる |
住宅取得等資金の贈与(最大1,000万円)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 18歳以上の子・孫 |
| 非課税上限 | 省エネ住宅1,000万円・その他500万円(時限措置) |
| 対象費用 | マイホームの新築・取得・増改築 |
| 手続き | 確定申告のみ(専用口座不要で使いやすい) |
| 条件 | 受贈者の合計所得が2,000万円以下など |
3つの一括特例の中で最も手続きが簡単です。確定申告で申告するだけで非課税になります。
5. おしどり贈与(配偶者控除)
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産(または購入資金)を贈与する場合、最高2,000万円まで非課税になります。基礎控除110万円と合わせて2,110万円まで非課税で自宅の名義を変更できます。
メリット
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 相続財産の圧縮 | 生前に不動産を移転することで相続財産を減らせる |
| 二次相続対策 | 配偶者に自宅を移しておくと一次相続(夫死亡)後の資産が減る |
| 自宅売却時の控除 | 自宅売却の3,000万円特別控除を夫婦ダブルで活用できる可能性 |
デメリット・コスト
| コスト | 相続の場合 | 贈与の場合 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 0.4% | 2.0%(5倍) |
| 不動産取得税 | 課税なし | 固定資産税評価額×3〜4% |
| 手間 | 少ない | 名義変更手続きが必要 |
不動産評価額が3,000万円の場合、相続なら登録免許税12万円、贈与なら60万円(差額48万円)。さらに不動産取得税が数十万円かかります。
相続税の心配がない家庭(基礎控除以下)では、贈与のコストが相続税節税効果を上回ることが多いため、おしどり贈与のメリットが少ない場合があります。
6. 生活費・学費はその都度払えば非課税
意外と知られていませんが、扶養義務者から生活費・教育費として必要な都度・直接これらに充てるための贈与は、金額に関わらず非課税です。
非課税になる例
| ケース | 金額の目安 |
|---|---|
| 大学生の子供への仕送り(生活費) | 月10万円(年120万円)程度まで |
| 孫の大学入学金を祖父が直接振り込む | 数十〜150万円程度 |
| 娘の結婚式費用を親が式場に支払う | 数百万円 |
| 出産費用を親が病院に支払う | 実費 |
| 病院の治療費を家族が直接支払う | 実費 |
注意点
- 「社会通念上認められる範囲」が条件。過大な仕送り(生活費の名目で毎月50万円など)はNG
- 余った分を貯金・投資に回してはいけない(消費するものへの充当が条件)
- 「数年分まとめて渡す」のはNGで「都度払い」が必要
わざわざ教育資金の一括贈与特例(専用口座・領収書管理)を使わなくても、「その都度払い」で解決するケースも多いです。
7. 贈与の証拠・記録の残し方
税務調査で「贈与の実態がない」と判断されると、名義預金として相続財産に戻されます。記録の残し方が重要です。
最低限行うべきこと
- 銀行振込で記録を残す(現金手渡しは記録が残らない)
- 贈与契約書を毎年作成する(形式は簡単なもので可。日付・金額・贈与者・受贈者を記載)
- 受け取る側の口座を受贈者自身が管理する(通帳・印鑑・カードを贈与者が持っていると名義預金と判定される)
- 贈与税の申告を積極的に行う(110万円超の年は必ず申告。あえて111万円を贈与し申告することで贈与の証拠にする方法もある)
8. 贈与税のシミュレーション
暦年贈与・20年間の移転シミュレーション(子2人・孫2人への贈与)
年間:子2人 × 110万円 + 孫2人 × 110万円 = 440万円/年(非課税)
| 年数 | 累計移転額 |
|---|---|
| 5年 | 2,200万円 |
| 10年 | 4,400万円 |
| 20年 | 8,800万円 |
20年間で8,800万円を無税で移転できます(健康で長生きすることが前提)。
相続時精算課税+年110万円の活用例
親が子に2,500万円の一括贈与(相続時精算課税)を行い、その後毎年110万円を贈与し続けるモデル:
| 年数後 | 累計移転額(うち持ち戻しなし) |
|---|---|
| 即座 | 2,500万円(相続時精算課税・持ち戻しあり) |
| 10年後 | +1,100万円(年110万円×10年・持ち戻しなし) |
| 20年後 | +2,200万円(年110万円×20年・持ち戻しなし) |
2,500万円の一括移転後も、毎年110万円ずつ持ち戻しなしで移転し続けられます。
9. よくある質問
Q. 祖父から孫に100万円、祖母から孫に100万円贈ってもいいか?
合計200万円になるため、110万円超の90万円が課税対象です(贈与税9,000円)。受け取る側(孫)の1年間の受取合計が基準です。
Q. 110万円以内なら何も手続きしなくていいか?
申告は不要ですが、贈与の記録(契約書・振込記録)は残すことを推奨します。後の税務調査で「贈与の実態がない」と否定されないための証拠になります。
Q. 教育資金特例と暦年贈与は同時に使えるか?
使えます。教育資金の一括贈与1,500万円と、別途暦年贈与110万円は別枠です。ただし同じ贈与者(祖父)から同じ受贈者(孫)への贈与は合算されるため注意が必要です。
Q. 贈与した後に贈与者が亡くなった場合の扱いは?
暦年課税の贈与は、相続前7年以内(2024年改正後、段階移行中)の分が相続財産に持ち戻されます。相続時精算課税の年110万円部分は持ち戻しなし、2,500万円の特別控除部分は相続財産に加算されます。
まとめ
- 贈与税の基礎控除は年110万円(受贈者1人あたり、申告不要)
- 暦年贈与は長期・複数人への計画的贈与に向いている(7年以内は持ち戻しリスクあり)
- 2024年から相続時精算課税も年110万円の基礎控除が新設され持ち戻しなしに(大幅強化)
- 教育資金1,500万円・住宅取得1,000万円の一括特例は用途限定で使いやすい
- 生活費・学費の都度払いは金額に関わらず非課税(専用口座不要・最もシンプル)
- おしどり贈与(配偶者控除2,000万円)は相続税対策だが不動産移転コストに注意
贈与税と相続税をシミュレーション
生前贈与をした場合としなかった場合で、最終的な手残りがどう変わるか計算できます。
関連記事
本記事は一般的な情報提供を目的としており、税務・投資・法律などの専門的助言ではありません。内容は公的機関などの信頼できる情報をもとに作成していますが、制度や数値は変わる場合があります。実際の判断は公式情報や専門家でご確認ください(運営者情報・免責事項)。