年金の手取り額はいくら?税金・保険料の天引き地獄と「在職老齢年金」の罠
年金200万円の手取りは約178〜183万円(社会保険料13〜19万円の場合)。65歳からの税金計算式、働くと年金が減らされる在職老齢年金の仕組み、非課税になる遺族年金・障害年金まで解説。
執筆:しぐ ・ 更新日: 2026-09-28
「65歳になったら年金をもらって悠々自適…」そんな計画を立てている現役世代に厳しい現実を突きつけるのが、年金からの天引きです。
会社員の給料と同じく、公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)からも税金と社会保険料が引かれます。額面で「年200万円(月約16.7万円)」もらえても、税・介護保険料・医療保険料が引かれて手取りは月15万円前後にとどまることも珍しくありません。特に、住民税非課税世帯の境界線を超えると介護保険料が一気に増えるなど、年金収入が増えるほど負担も増える構造があります。
この記事では、公的年金等控除の計算式、在職老齢年金の仕組み、手取り別シミュレーション、繰り下げ受給と税金の関係まで詳細に解説します。
1. 年金は「雑所得」として課税される
公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は雑所得(公的年金等)として課税対象です。ただし「公的年金等控除」という特別な控除が適用されるため、給与収入と同じ計算にはなりません。
計算の流れは以下の通りです。
年金収入 − 公的年金等控除 = 公的年金等に係る雑所得
雑所得 − 基礎控除(基本62万円・低中所得はさらに加算)− 各種控除 = 課税所得
課税所得 × 税率(所得税 + 住民税)= 税額
所得税の基礎控除は令和8年の税制改正で見直され、合計所得金額に応じた段階制になりました(本則62万円。令和8年分・令和9年分は合計所得489万円以下なら104万円、489万円超655万円以下なら67万円と、低中所得層ほど手厚く加算)。一方、住民税の基礎控除は改正前のまま変わらず、合計所得2,400万円以下なら43万円です(2,400万円超は29万円、2,450万円超は15万円、2,500万円超はゼロ=地方税法34条2項・314条の2第2項)。多くの年金生活者(合計所得が少ない層)は、令和8年分・令和9年分なら所得税側で104万円という大きい基礎控除が使えます。
⚠️この記事の所得税は、令和8年分・令和9年分の基礎控除(合計所得489万円以下なら104万円・489万円超655万円以下なら67万円)で計算しています。令和10年分(2028年分)以後は、合計所得132万円以下なら99万円・132万円超なら62万円に変わります(租税特別措置法41条の16の2第1項)。年金の受給は数十年続くので、2028年分以後の年を計算するときは基礎控除を置き換えてください。住民税の基礎控除(合計所得2,400万円以下なら43万円)はこの改正では動きません。
2. 公的年金等控除の計算式
65歳以上(多くの受給者が該当)
| 年金収入(合計額) | 控除額 |
|---|---|
| 330万円以下 | 110万円 |
| 330万円超〜410万円以下 | 年金収入 × 25% + 27.5万円 |
| 410万円超〜770万円以下 | 年金収入 × 15% + 68.5万円 |
| 770万円超〜1,000万円以下 | 年金収入 × 5% + 145.5万円 |
| 1,000万円超 | 195.5万円(上限) |
330万円以下の年金(多くの受給者がここに該当)は一律110万円の控除が適用されます。
65歳未満
| 年金収入(合計額) | 控除額 |
|---|---|
| 130万円以下 | 60万円 |
| 130万円超〜410万円以下 | 年金収入 × 25% + 27.5万円 |
| 410万円超〜770万円以下 | 年金収入 × 15% + 68.5万円 |
| 770万円超〜1,000万円以下 | 年金収入 × 5% + 145.5万円 |
| 1,000万円超 | 195.5万円(上限) |
65歳未満では控除が60万円(65歳以上より50万円少ない)のため、同じ年金額でも税負担が重くなります。
3. 手取り額の詳細計算
ケース1:65歳・年金200万円・独身・扶養なし
| 計算ステップ | 金額 |
|---|---|
| 年金収入(額面) | 2,000,000円 |
| ▲ 公的年金等控除 | ▲ 1,100,000円 |
| 雑所得 | 900,000円 |
| ▲ 基礎控除(所得税・令和8年分・令和9年分/合計所得489万円以下) | ▲ 1,040,000円 |
| ▲ 社会保険料控除(下の介護保険料+国民健康保険料) | ▲ 130,000〜190,000円 |
| 課税所得(所得税) | 0円 |
| 所得税 | 0円(課税所得0・基礎控除内に収まる) |
| 住民税(課税所得28万〜34万円=雑所得90万円−基礎控除43万円−社会保険料。所得割10%から調整控除2,500円を引き、均等割5,000円を足す) | 約30,500〜36,500円 |
| 介護保険料(標準的な自治体) | 約70,000〜90,000円/年 |
| 国民健康保険料(65〜74歳・自治体差大) | 所得割+均等割で約60,000〜100,000円/年 |
| 手取り合計(目安) | 約1,780,000〜1,830,000円 |
| 月額手取り | 約14.8〜15.3万円 |
※社会保険料(介護保険料と国民健康保険料の合計)が多いほど住民税は少なくなります。住民税の範囲の上端は社会保険料13万円のとき、下端は19万円のときで、手取りの上端は社会保険料13万円のときです。
税金は思ったより少ない一方、介護保険料・医療保険料の合計が年13万〜19万円規模になる点が年金生活者の負担のポイントです。
ケース2:65歳・年金300万円・独身・扶養なし
| 計算ステップ | 金額 |
|---|---|
| 年金収入(額面) | 3,000,000円 |
| ▲ 公的年金等控除 | ▲ 1,100,000円 |
| 雑所得 | 1,900,000円 |
| ▲ 基礎控除(所得税・令和8年分・令和9年分/合計所得489万円以下) | ▲ 1,040,000円 |
| ▲ 社会保険料控除(下の介護保険料+国民健康保険料) | ▲ 180,000〜250,000円 |
| 課税所得(所得税) | 610,000〜680,000円 |
| 所得税(5%帯・復興税込み) | 約31,100〜34,700円 |
| 住民税(課税所得122万〜129万円=雑所得190万円−基礎控除43万円−社会保険料。所得割10%から調整控除2,500円を引き、均等割5,000円を足す) | 約124,500〜131,500円 |
| 介護保険料(目安) | 約100,000〜130,000円/年 |
| 国民健康保険料(65〜74歳・目安) | 約80,000〜120,000円/年 |
| 手取り合計(目安) | 約2,590,000〜2,650,000円 |
| 月額手取り | 約21.6〜22.1万円 |
※課税所得・税額の範囲の上端は社会保険料18万円のとき、下端は25万円のときで、手取りの上端は社会保険料18万円のときです。
年金収入別の手取り早見表(65歳以上・独身・扶養なし)
| 年金収入(額面) | 社会保険料(介護保険料+国民健康保険料)の仮定 | 手取り目安 | 手取り率 |
|---|---|---|---|
| 100万円 | 0〜2万円 | 約98〜100万円 | 約98〜100% |
| 150万円 | 7〜11万円 | 約139〜143万円 | 約93〜95% |
| 200万円 | 13〜19万円 | 約178〜183万円 | 約89〜92% |
| 250万円 | 16〜22万円 | 約220〜225万円 | 約88〜90% |
| 300万円 | 18〜25万円 | 約259〜265万円 | 約86〜88% |
| 400万円 | 25〜35万円 | 約338〜347万円 | 約85〜87% |
※社会保険料は自治体と所得で大きく変わるので、行ごとに幅を仮定しています(200万円・300万円の行は上のケース1・2と同じ仮定)。手取りは、年金収入から仮定した社会保険料と、所得税(公的年金等控除・基礎控除・社会保険料控除を引いた課税所得に5%+復興特別所得税)・住民税(所得割10%から調整控除を引き、均等割5,000円を足す)を引いた額で、手取りの上端は社会保険料が少ないほうの仮定のときです。100万円・150万円の行は、所得(雑所得)が45万円以下なので所得税・住民税がかからない前提です。
年金が増えるほど手取り率は低下します。
上の2つのケースと早見表は、いずれも令和8年分・令和9年分の所得税の基礎控除で計算しています。令和10年分(2028年分)以後は基礎控除が合計所得132万円以下なら99万円・132万円超なら62万円に下がるため、雑所得(年金収入から公的年金等控除を引いた額)がその基礎控除額を超える帯では所得税が増え、手取りは上表より小さくなります(住民税の基礎控除は合計所得2,400万円以下なら43万円で、こちらは変わりません)。
4. 住民税非課税世帯の境界線
年金生活者にとって「住民税非課税世帯」かどうかは非常に重要な境界線です。非課税世帯に該当すると以下の優遇があります。
- 介護保険料が大幅に軽減(第1〜第2段階)
- 医療費の高額療養費限度額が下がる
- 各種給付金・補助金の受取対象になりやすい
住民税非課税の目安
| 区分 | 年金収入の非課税目安(65歳以上) |
|---|---|
| 単身(扶養0人) | 155万円以下(所得45万円以下) |
| 配偶者あり(扶養1人) | 211万円以下(所得101万円以下) |
| 障害者・寡婦・ひとり親(世帯構成を問わない) | 245万円以下(合計所得135万円以下。地方税法24条の5第1項2号・295条1項2号) |
⚠️上の表の155万円・211万円は、東京23区など1級地の場合の額です。この2行が使う均等割の非課税限度額は、自治体の級地区分ごとに定める基本額(35万円を超えない範囲)と加算額(21万円を超えない範囲)で決まるため(地方税法295条3項・地方税法施行令47条の3)、2級地・3級地はこれより低い年金収入から課税が始まります。所得割の非課税限度額(地方税法附則3条の3第1項・第4項)は全国共通です。最終行の135万円は本人の属性で決まる非課税枠で、こちらも全国共通です(上のケース1の住民税も、本人が障害者・寡婦・ひとり親に当たるなら0円です)。上の表の1行目に当たる人(65歳以上・単身で同一生計配偶者も扶養親族もおらず、障害者・寡婦・ひとり親にも当たらない人)は、年金収入が155万円をわずかに超えると住民税が課税され始め、介護保険料が第3段階以上になって一気に負担が増えます。⚠️この155万円の線は世帯構成・本人の属性・自治体の級地区分の3つで動きます=表のとおり、扶養親族が1人いれば211万円(この2つは1級地の額)、障害者・寡婦・ひとり親に当たるなら245万円(こちらは全国共通)です。
5. 社会保険料の天引き:3種類の負担
年金からは税金だけでなく、以下の社会保険料も天引き(特別徴収)されます。
介護保険料(65歳以上)
65歳になると第1号被保険者として市区町村に保険料を納めます。年金受給額が年18万円以上の場合、年金から直接天引きされます。
| 所得段階 | 年収目安 | 標準的な月額保険料 |
|---|---|---|
| 第1段階(非課税・最低生活保護等) | 低所得 | 約1,500〜2,000円 |
| 第2段階(住民税非課税・前年所得80万円以下) | 〜約150万円 | 約2,500〜3,500円 |
| 第3段階(住民税非課税・80万円超) | 約150〜155万円 | 約3,500〜5,000円 |
| 第4段階(住民税課税・基準額) | 約155〜250万円 | 約5,500〜7,000円 |
| 第5段階 | 約250〜300万円 | 約7,000〜9,000円 |
| 第6段階以上 | 300万円超 | 9,000〜15,000円以上 |
介護保険料の基準額は自治体によって異なります(月4,000〜9,000円程度の差)。⚠️上の表の「年収目安」は単身・扶養なしの場合の目安です。段階を分けているのは年金額そのものではなく住民税が課税かどうかなので、§4のとおり扶養親族がいる人・障害者・寡婦・ひとり親に当たる人は、同じ年金額でも下の段階にとどまります。
後期高齢者医療保険料(75歳以上)
75歳になると後期高齢者医療制度に移行し、保険料が変わります。所得割(所得 × 8〜10%前後)+ 均等割(約42,000〜60,000円)の構造です。
年金収入200万円の場合の目安:年間8〜12万円程度(都道府県により大きく異なる)。
健康保険料(65〜74歳の国民健康保険加入者)
75歳未満で会社の健康保険に未加入の場合、国民健康保険に加入します。所得割が加算されるため、年金収入が増えるほど保険料も増加します。
6. 在職老齢年金:働くと年金が減る仕組み
定年後も厚生年金に加入しながら働く場合、給与と年金の合計が一定額を超えると年金の一部が支給停止になります。これが在職老齢年金(ざいしょくろうれいねんきん)です。
計算方法(令和8年度・2026年4月〜)
基準額:月額65万円(令和7年の年金制度改正により、高齢者の就労を促す目的で令和7年度の51万円から大幅に引き上げ。2026年4月施行)
(基本月額 + 総報酬月額相当額 − 65万円) ÷ 2 = 支給停止月額
- 基本月額:加給年金を除いた老齢厚生年金の月額
- 総報酬月額相当額:月給 + 直近1年の賞与÷12
「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計が65万円以下であれば、年金はそのまま全額支給されます。基準額の引き上げで、以前は減額対象だった層も全額受け取れるケースが増えました。
計算例
| ケース | 年金月額 | 給与月額 | 合計 | 支給停止額 | 実際の支給 |
|---|---|---|---|---|---|
| ケースA | 15万円 | 20万円 | 35万円 | 0円(65万円以下) | 15万円全額 |
| ケースB | 15万円 | 40万円 | 55万円 | 0円(65万円以下) | 15万円全額 |
| ケースC | 20万円 | 50万円 | 70万円 | (70-65)÷2=2.5万円 | 17.5万円 |
| ケースD | 25万円 | 60万円 | 85万円 | (85-65)÷2=10万円 | 15万円 |
| ケースE | 30万円 | 60万円 | 90万円 | (90-65)÷2=12.5万円 | 17.5万円 |
在職老齢年金の対策
| 対策 | 概要 | 注意点 |
|---|---|---|
| 給与+年金の合計を月65万円未満に調整 | 合計を基準額以下にキープ | 収入自体が制限される |
| 短時間勤務(厚生年金非加入) | 週20時間未満で厚生年金に加入しない | 雇用保険も対象外になりやすい |
| 個人事業主・業務委託に切替 | 厚生年金ではなく国民年金のみ | 社会保険の手厚さが変わる |
7. 遺族年金・障害年金は非課税
すべての年金が課税されるわけではありません。以下は所得税・住民税の課税対象外です。
| 年金の種類 | 課税区分 |
|---|---|
| 老齢基礎年金 | 課税(雑所得) |
| 老齢厚生年金 | 課税(雑所得) |
| 遺族基礎年金 | 非課税 |
| 遺族厚生年金 | 非課税 |
| 障害基礎年金 | 非課税 |
| 障害厚生年金 | 非課税 |
遺族年金・障害年金は「生活保障・損害補償」という性格があるため、所得税法上の課税対象外とされています。確定申告も不要で、社会保険料の計算基準となる「所得」にも含まれません。
手取り額 = 額面額という、数少ない例外です。ただし介護保険料の計算に使う「合計所得金額」の算定では、2024年改正で一定の考慮がされる場合があります。
8. 繰り下げ受給と税金の関係
年金の受け取り開始を遅らせる「繰り下げ受給」は、受給額を最大84%増やせる制度です(75歳まで繰り下げの場合)。しかし増額分がそのまま手取りに反映されるわけではありません。
繰り下げによる年金増加と税負担の変化
| 受給開始年齢 | 増加率 | 年金200万円→増額後 | 税・保険料増加(目安) | 手取り増 |
|---|---|---|---|---|
| 65歳(標準) | 0% | 200万円 | — | — |
| 68歳 | +25.2% | 250万円 | +5〜8万円/年 | +42〜45万円/年 |
| 70歳 | +42% | 284万円 | +8〜12万円/年 | +72〜76万円/年 |
| 75歳 | +84% | 368万円 | +20〜30万円/年 | +130〜148万円/年 |
繰り下げ受給の損益分岐点(手取りベース)
額面ベースでは「約11〜12年で元が取れる」と言われます。手取りベースは、上表の「手取り増」(税・保険料の増加を差し引いた後の純増額)で、65歳から受け取らずに見送った分を取り戻す計算になります:
- 70歳まで繰り下げ:見送った分(年金の手取り約178万円×5年=約890万円)を、手取り増(年72〜76万円)で取り戻すのは70歳から約12年後=約82〜83歳
- 75歳まで繰り下げ:見送った分(約178万円×10年=約1,780万円)を、手取り増(年130〜148万円)で取り戻すのは75歳から約12〜14年後=約87〜89歳
また繰り下げで年金が増えると、住民税非課税世帯の境界を超えることがあります。その場合:
- 介護保険料の負担段階が上がる
- 医療費窓口負担が1割から2割に上がる(75歳以上の2割負担の基準:課税所得28万円以上かつ年金収入200万円以上の単身など。下記Callout参照)
- 高額療養費の限度額が上がる
これらの影響を含めると、実質的な手取り増加は額面上の増加より小さくなります。
9. 働く年金受給者の収入シミュレーション
定年後も働きながら年金を受け取るケースの実際の手取りを試算します。
モデルケース:65歳・年金月15万円(年180万円)+ 給与月25万円(年300万円)
| 収入区分 | 額面 | 天引き合計(目安) | 手取り(目安) |
|---|---|---|---|
| 老齢年金(在職カット後) | 約180万円 | 約20〜25万円 | 約155〜160万円 |
| 給与収入 | 約300万円 | 約60〜65万円(税+社会保険) | 約235〜240万円 |
| 合計 | 約480万円 | 約80〜90万円 | 約390〜400万円 |
※在職老齢年金のカット:15万円 + 25万円 = 40万円。基準額65万円以下なのでカットなし。
合計が65万円以下なら年金はそのまま全額もらえます。このモデルでは給与月25万円 + 年金月15万円 = 40万円で基準内に収まります。
※給与で働き厚生年金・健康保険(被用者保険)に加入する場合、健康保険料は給与から天引きされます。一方、介護保険料(第1号・65歳以上)と年金にかかる所得税・住民税は年金から天引きされます。上表はこの区分での目安です。
10. 年金のふるさと納税活用
年金収入でも住民税を納めている場合、ふるさと納税が使えます。
| 年金収入(単身・65歳以上) | ふるさと納税上限(目安) |
|---|---|
| 200万円 | 約9,000円 |
| 300万円 | 約3.1万円 |
| 400万円 | 約4.9万円 |
※国民健康保険料と介護保険料を年金収入の約7%と仮定し、ほかに所得がない場合の目安です(ふるさと納税の限度額の記事の年金生活者の表と同じ前提)。保険料がこれより多い人は、住民税が少なくなる分だけ上限も下がります。
住民税非課税世帯の方はふるさと納税の控除がほとんど受けられないため、住民税がかかっている世帯が対象です。ワンストップ特例を利用すれば確定申告不要で手続きできます(公的年金以外の所得があって住民税の申告が必要な人や、医療費控除などを受けるために確定申告や住民税の申告をする人は、ワンストップ特例を使えません)。
11. 確定申告が必要なケース
年金受給者でも確定申告が必要・有益な場合があります。
確定申告が必要なケース
| 状況 | 理由 |
|---|---|
| 公的年金の受給額が年400万円超 | 源泉徴収のみでは不足する場合 |
| 公的年金以外の所得が年20万円超 | 確定申告が要らない条件から外れ、所得税が出るなら合算して申告が必要 |
| 外国の法令にもとづく年金を受け取っている(国内で源泉徴収の対象にならない) | 確定申告が要らない条件から外れ、所得税が出るなら申告が必要 |
| 医療費控除・社会保険料控除を追加適用したい | 源泉徴収では適用されない控除を取るため |
公的年金等の収入が400万円以下で、その全部が源泉徴収の対象で、公的年金以外の所得(給与所得も含む)の合計が20万円以下なら、確定申告は要りません。額が少ないため源泉徴収されない国内の公的年金は、「全部が源泉徴収の対象」の判定から除かれます。2か所以上から年金を受け取っていても、この3つを満たせば要りません(医療費控除などで還付を受けるための確定申告はできます)。ただし公的年金以外の所得がある人は、確定申告が要らなくても住民税の申告が必要な場合があります。
申告すると得をするケース
- 医療費が多い年:医療費控除。足切りは「10万円」と「総所得金額等の5%」の低いほう(所得税法73条1項)なので、総所得金額等が200万円未満なら10万円に届かなくても対象です。年金収入200万円・65歳以上なら公的年金等控除110万円を引いた雑所得は90万円で、足切りは4.5万円まで下がります。⚠️ただしこの水準では所得税が0円(基礎控除104万円が雑所得90万円を上回るため)。戻ってくるのではなく、翌年の住民税が安くなるという効き方です(同一生計配偶者〔生計を一にする配偶者で所得が一定以下の人〕も扶養親族もおらず、障害者・寡婦・ひとり親にも当たらない人なら、住民税は基礎控除43万円なので課税所得が残り〔上のケース1の社会保険料なら28万〜34万円〕、控除を引いた後も課税所得が5万円以上残る範囲では控除額の約10%だけ軽くなります。配偶者がいても、その所得が一定を超えていればこちらに入ります)。住民税だけを下げるなら、確定申告でなく市区町村への住民税の申告でも受けられます(地方税法317条の2第1項・第3項。期限は3月15日。様式や窓口は自治体で異なるため確認してください)。⚠️次の人は、住民税も安くなりません。①同一生計配偶者か扶養親族(16歳未満を含む)がいる人=雑所得90万円が、住民税の所得割がかからない水準(「35万円×人数+42万円」=本人を含めて2人なら112万円。人数は「本人+同一生計配偶者+扶養親族」で、増えるほど高くなります)以下なので、所得割がもともとかかりません(地方税法附則3条の3第1項・第4項)。均等割がかかるかどうかは住む市区町村の基準で決まります(→§4)。②障害者・寡婦・ひとり親に当たる人=前年の合計所得が135万円以下なら、住民税は均等割も所得割もかかりません(地方税法24条の5第1項2号・295条1項2号)。雑所得90万円はこれ以下です
- 生命保険料控除・社会保険料控除の申告漏れ
- 住宅ローン控除(住宅を買った年以外も引き続き適用できる)
- ふるさと納税(ワンストップ特例を使わなかった場合)
まとめ
- 65歳以上の公的年金等控除は年330万円以下で一律110万円(年収の多くはここに収まる)
- 年金200万円の手取りは約178〜183万円(月約14.8〜15.3万円)
- 税金より重い負担は介護保険料・医療保険料(合計年13万〜19万円規模)
- 住民税非課税世帯の境界を超えると保険料負担が段差で増える。境界は単身・扶養なしで障害者・寡婦・ひとり親にも当たらない人なら年金155万円前後で、扶養親族が1人いれば211万円、障害者・寡婦・ひとり親なら245万円(前の2つは東京23区など1級地の額で、級地区分によって下がる。245万円は全国共通)
- 働いて給与+年金の合計が月65万円(令和8年度・2026年4月〜)を超えると在職老齢年金でカット(消滅・返ってこない)
- 遺族年金・障害年金は非課税で手取り = 額面
- 繰り下げ受給は税・保険料増を考慮した手取りベースでも、元を取るのは繰り下げ受給開始から約12年(70歳繰り下げで約82〜83歳、75歳繰り下げで約87〜89歳)かかる
働きながら年金を受け取る方の給与手取りを計算
給与で働きながら年金を受け取る方は、給与部分の手取りを計算ツールで試算できます。年金部分の税・社会保険料は本記事の計算式・早見表をご利用ください(当ツールは給与収入向けで、公的年金等控除には非対応です)。
この記事の根拠(出典)
本記事の住民税の申告と、年金受給者が確定申告を要しない条件は、以下の一次情報(2026年9月27日・28日確認)にもとづいています。制度は改正されるため、最新の内容は各リンク先でご確認ください。
- 公的年金等の収入が400万円以下で、その全部(額が少ないため源泉徴収されない国内の年金を除く)が源泉徴収の対象なら、公的年金等に係る雑所得以外の所得(給与所得も含む)の合計が20万円以下のとき確定申告を要しないこと:国税庁「No.2020 確定申告」(注)/e-Gov法令検索「所得税法」第121条第3項・第203条の7
- 公的年金等以外の所得が20万円以下で確定申告が要らない場合でも住民税の申告が必要な場合があること/外国の法令にもとづく年金を受け取っている人は、この確定申告不要制度を使えないこと:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」(注2・注3)
- ワンストップ特例を使えるのは、所得税の確定申告の義務がない(または給与所得者などが確定申告を要しない規定の適用を受ける)と見込まれ、ふるさと納税の控除を受ける目的以外に住民税の申告書を出す必要もないと見込まれる人であること/住民税の申告書を出すと、ワンストップ特例の申請はなかったものとみなされること:e-Gov法令検索「地方税法」附則第7条第8項・第13項第2号
- 確定申告が要らない場合でも、医療費控除などで所得税の還付を受けるための確定申告はできること:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」
- 住民税の申告書は3月15日までに市区町村へ出し、医療費控除額も記載する事項であること。給与(または公的年金等)のほかに所得がない人でも、医療費控除を受けようとするときは3月15日までに申告書を出すこと:e-Gov法令検索「地方税法」第317条の2第1項・第3項
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