標準報酬月額とは?社会保険料の計算方法と等級の仕組みを解説

標準報酬月額の等級制の仕組みと決まり方を解説。4〜6月に支払われる残業代が保険料と給付にどう響くかや、傷病手当金との関係も知りたい会社員向けの記事です。

給与明細を見ると「健康保険料」「厚生年金保険料」として毎月数万円が引かれていますが、その計算の基準になっているのが「標準報酬月額」です。実際の月収がそのまま使われているわけではなく、等級に区切られた「標準的な報酬額」に基づいて保険料が決まります。

この仕組みを知ると「4〜6月は残業しない方がいい」という話の意味(実際に見られるのは4〜6月に支払われた給与です)や、等級の境目を1円超えたときに手取りがいくら減るか、傷病手当金・出産手当金がいくらになるかを自分で計算できるようになります。年収別の社会保険料の総額は社会保険料とは?、税金と比べてなぜ重いのかは社会保険料はなぜ高い?で扱います。


1. 標準報酬月額とは何か

標準報酬月額は、健康保険・厚生年金の保険料を計算するための「等級制のものさし」です。毎月支払われる給与(基本給・残業代・通勤手当等の合計)の平均を、あらかじめ決められた等級に当てはめることで保険料が決まります。

実際の例を見ると仕組みがわかりやすくなります。

厚生年金の等級標準報酬月額報酬月額の範囲厚生年金保険料(本人分)
14等級20万円19.5万円以上21万円未満約18,300円
17等級26万円25万円以上27万円未満約23,790円
20等級32万円31万円以上33万円未満約29,280円
24等級41万円39.5万円以上42.5万円未満約37,515円
29等級56万円54.5万円以上57.5万円未満約51,240円
32等級(上限)65万円63.5万円以上約59,475円

※等級と上限は2026年度のものです(上限65万円は2020年9月から。2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円へ段階的に引き上げられます)。等級番号は厚生年金保険のものです。健康保険は全50等級で番号が異なります(標準報酬月額20万円なら健康保険17等級・厚生年金14等級)。

たとえば月収27万円でも28万円でも、どちらも同じ等級として扱われ、同じ保険料になります。また、2026年度は報酬月額63万5,000円以上の人は全員上限の65万円等級として計算されます。


2. 標準報酬月額の決め方:2つのタイミング

標準報酬月額は年に1回の見直し(定時決定)と、給与変更時の随時改定の2パターンで改定されます。

定時決定(毎年4〜6月に支払われた給与の平均)

毎年4・5・6月の3ヶ月に支払われた給与の平均をもとに、9月からの1年間に適用する標準報酬月額を決めます。報酬の支払の基礎となった日数が17日未満の月は、この平均から除きます(厚生労働省令で定める人は11日。健康保険法41条1項)。

時期内容
4〜6月この3ヶ月に支払われた報酬の平均が算定基準
7月事業主が「算定基礎届」を年金事務所に提出
9月〜翌8月新しい標準報酬月額に基づく保険料が適用

「4〜6月は残業を減らした方がいい」という話はここから来ています。4〜6月に支払われる残業代が多いと、その分が9月以降の社会保険料に反映されて増額されるためです。基準は4〜6月に「支払われた」給与なので、末締め翌月払いの会社なら3〜5月に働いた分の残業代が対象になります。ただし残業代が減れば手取りも減るため、どちらが得かはケースバイケースです。

残業代で等級が1つ上がる例

たとえば報酬月額(残業代・通勤手当などを含む月の給与)がふだん38万5,000円の人に、4〜6月だけ月1万円多く残業代が支払われると、3ヶ月の平均が39万5,000円になり、標準報酬月額は38万円から41万円に上がります。4〜6月に支払われた残業代は合計3万円でも、健康保険(子ども・子育て支援金を含む)と厚生年金の本人負担は月4,257円、9月から翌年8月までの1年間で51,084円増えます(40歳未満・協会けんぽ東京)。

一方、増えた厚生年金保険料は将来の年金にも反映されます。老齢厚生年金の報酬比例部分(2003年4月以後の加入期間)は「平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数」で計算されるので、標準報酬月額が3万円高い月が12ヶ月あると、年金額は年1,973円(3万円×12ヶ月×5.481/1000)増える計算です。過去の報酬を今の賃金水準に直す「再評価」は考えない単純計算です。

毎年の繁忙期で4〜6月に支払われる給与が多くなり、「4〜6月に支払われた給与の平均で出した標準報酬月額」と「前年7月〜当年6月の1年間に支払われた給与の平均で出した標準報酬月額」が2等級以上離れ、その差が業務の性質上例年生じる場合は、会社(事業主)が算定基礎届と一緒に申し立てて、1年間の平均で決めてもらう仕組みがあります(申立てには本人の同意書も添えます)。上の例は1等級の差なので、この仕組みは使えません。

随時改定(大きな昇給・降給があったとき)

昇給や降給で報酬が大幅に変わった場合(2等級以上の変動)、定時決定を待たずに随時改定が行われます。変更後3ヶ月分の給与平均で新しい等級が決まります。

昇給した翌月から3ヶ月後に社会保険料が増える場合があるのは、この随時改定が原因です。


3. 標準報酬月額が高いとどうなる

標準報酬月額が高くなると保険料も増えますが、将来の給付や休業時の補償も同時に増えます。

項目標準報酬月額が高い場合の影響
健康保険料(月)増える(労使折半)
厚生年金保険料(月)増える(労使折半)
将来の老齢厚生年金増える(報酬比例部分が高くなる)
傷病手当金増える(支給開始日以前12ヶ月の標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 2/3 が日額。加入12ヶ月未満は下の計算例の後の特例)
出産手当金増える(傷病手当金と同じ式で日額を計算)
育児休業給付金標準報酬月額では決まらない(雇用保険の「休業開始時賃金日額」=休業開始前6ヶ月の賃金÷180で決まる)

傷病手当金の計算例

業務外の病気やケガで連続3日間仕事を休んだ(待期)あと、4日目以降に働けなかった日について、健康保険から傷病手当金が支給されます。

傷病手当金(1日あたり) = 支給開始日以前12ヶ月の標準報酬月額の平均 ÷ 30日(10円未満四捨五入) × 2/3(1円未満四捨五入)

12ヶ月の標準報酬月額がずっと30万円の人なら:30万円 ÷ 30日 = 10,000円、× 2/3 ≒ 1日6,667円で、30日分なら約20万円です。標準報酬月額50万円の人が通算1年6ヶ月まで受け取ったときの総額の目安は社会保険料とは?の§6にあります。

加入してから支給開始日までが12ヶ月に満たない場合(転職直後など)は、「支給開始日の月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均」と「協会けんぽの全被保険者の標準報酬月額の平均額(支給開始日が2025年4月1日以降なら32万円)」のうち、低いほうを使います(協会けんぽの場合)。


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4. 保険料の計算方法

標準報酬月額が決まると、保険料は次のように計算されます。

健康保険料(本人分) = 標準報酬月額 × 保険料率 ÷ 2
厚生年金保険料(本人分) = 標準報酬月額 × 9.15%

標準報酬月額30万円・東京都(協会けんぽ)の場合(2026年概算):

種類保険料率(全体)本人負担(月)
健康保険約9.85%約14,775円
子ども・子育て支援金約0.23%約345円
介護保険(40〜64歳のみ)約1.62%約2,430円
厚生年金18.3%約27,450円
合計(40歳未満=介護保険なし)—約42,570円
合計(40〜64歳=介護保険あり)—約45,000円

40歳未満なら本人負担は月約4.3万円です。会社も同額を負担するため、表の保険料だけで、労使合わせると40歳未満で月約85,140円、40〜64歳で月約90,000円が拠出されます(このほかに雇用保険料と、会社だけが負担する子ども・子育て拠出金〈標準報酬月額の0.36%〉があります)。


5. 等級の境目を1円超えると手取りはいくら減るか

等級の境目をまたぐと保険料が不連続に上がります。境目の1円下と境目ちょうどで比べると、次のとおりです。

報酬月額(1円違い)標準報酬月額社会保険料(本人・年)所得税+住民税(年)手取り(年)
15万4,999円 → 15万5,000円15万円 → 16万円+17,029円−1,800円−15,217円
28万9,999円 → 29万円28万円 → 30万円+34,057円−4,900円−29,145円
39万4,999円 → 39万5,000円38万円 → 41万円+51,085円−7,200円−43,873円
48万4,999円 → 48万5,000円47万円 → 50万円+51,085円−9,600円−41,473円

※当サイトの手取り計算エンジンで試算。報酬月額が1年を通してその額(年収はその12倍・賞与なし)、40歳未満・協会けんぽ東京・令和8年度の料率・単身。額面は年12円しか増えないので、手取りの増減=12円−社会保険料の増加+所得税・住民税の減少です。給与収入が660万円未満の人の給与所得は、所得税法の別表第五(4,000円刻みの表)で求めるため、境目の年収(報酬月額×12)がちょうど4,000円の倍数だと、1円下の年収は1つ下の刻みに入ります。そのため境目ちょうどのほうが給与所得が2,800円(年収348万円)〜3,200円(年収474万円・582万円)多くなり、そのぶん税の減り方は小さくなります(年収186万円の行は給与所得控除が一律74万円の範囲なので、この差はありません)。社会保険料の列は雇用保険(年収×0.5%を1円未満切り捨て)を含みます。年収が12円増えると雇用保険は0.06円増え、切り捨ての境をまたいで1円増えるため、健康保険+厚生年金の段差(下の式の値・§2の残業代の例の51,084円)より1円大きくなっています。

たとえば報酬月額39万5,000円の境目では、本人の社会保険料が年約5.1万円増え、税金が少し下がっても手取りは年約4.4万円減ります。

協会けんぽ東京の場合、社会保険料の段差はおおむね「標準報酬月額の上がり幅×14.19%×12ヶ月」です(健康保険+子ども・子育て支援金5.04%と厚生年金9.15%の合計。40〜64歳は介護保険0.81%を足して15.0%。厚生年金の上限(2026年度は65万円)以上どうし、または下限の8.8万円以下どうしの境目では、厚生年金の標準報酬月額が上限・下限で変わらないため、厚生年金分の段差はありません)。社会保険料が増えると社会保険料控除も増えて税金は少し下がりますが、段差の一部しか埋まりません。「昇給したのに手取りが増えない」と感じる原因の一つがこの階段構造です。


6. 標準報酬月額を知ることで何ができるか

標準報酬月額を把握しておくと、様々な場面で具体的な金額を事前に計算できます。

活用場面内容
育休・産休前の収入試算出産手当金(健保)の概算を計算できる(育児休業給付金は雇用保険の休業開始時賃金日額で決まるので、標準報酬月額からは計算しない)
病気・ケガで休業したときの収入試算傷病手当金の月額を確認できる
転職・昇給後の保険料の見通し等級が変わるタイミングと増加額を事前に把握できる
老後の年金の概算標準報酬月額の加入期間実績が厚生年金の受取額に直結する

7. 産前産後・育休中の保険料免除と標準報酬月額

産前産後休業と育休期間中に、申請で健康保険料・厚生年金保険料が労使ともに免除される仕組みは社会保険料とは?の§7にまとめています。

免除期間中も標準報酬月額は記録されるため、傷病手当金や将来の年金計算に影響はありません。育休から復職後に給与が変わった場合は「育児休業等終了時改定」を利用して保険料を調整できます。


まとめ

  • 標準報酬月額は給与の平均を等級化したもの:実際の月収より少ない・多いことがある
  • 毎年9月に改定(定時決定):4〜6月に支払われた報酬の平均が9月からの保険料を決める
  • 等級の境目を1円超えるだけで、本人の社会保険料が年約5.1万円増える境目がある(40歳未満・協会けんぽ東京で報酬月額39万5,000円)
  • 保険料は個人と会社で折半:標準報酬月額30万円なら個人負担は月約4.3万円(40歳未満・健保+子ども・子育て支援金+厚年)、40〜64歳は介護保険を含めて月約4.5万円
  • 標準報酬月額が高いほど保険料増・給付も増える:傷病手当金・出産手当金・将来年金に直結
  • 産前産後・育休中は申請で労使ともに保険料免除になる

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標準報酬月額に関するよくある質問

Q. 自分の標準報酬月額はどこで確認できますか?

自分の標準報酬月額は以下の方法で確認できます。第一に「給与明細」に記載されている社会保険料の金額から逆算する方法(保険料 ÷ 保険料率 = 標準報酬月額の概算)です。第二に「ねんきん定期便」(誕生日月に郵送)や「ねんきんネット」(日本年金機構の公式サービス)で過去の標準報酬月額の履歴と将来の年金見込みを確認できます。第三に、会社の人事・総務部門に問い合わせることでも確認できます。

Q. 4〜6月に支払われる残業代を減らすことで社会保険料を節約できますか?

定時決定(毎年4〜6月に支払われた報酬の平均で9月からの保険料が決まる)の仕組みを使って、4〜6月に支払われる残業代を減らす(末締め翌月払いの会社なら3〜5月の残業を減らす)ことで、標準報酬月額を下げ、9月以降の社会保険料を抑えることは制度上可能です。ただし残業代が減る分、手取り収入自体も減るため、「社会保険料を抑えることで得する金額」と「残業を減らすことで失う手取り収入」を比較する必要があります。標準報酬月額が下がると、将来の老齢厚生年金や、傷病手当金・出産手当金の額も下がります(§3の表)。等級が1つ変わったときの年間の社会保険料の差は、隣の等級との標準報酬月額の差(刻み)で決まり、協会けんぽ東京・40歳未満なら本人負担はおおむね「刻み×14.19%×12ヶ月」です(例は§5の表)。刻みは等級によって6,000円〜6万円と違うので、自分の等級と隣の等級は協会けんぽの保険料額表で確かめてください。

Q. 標準報酬月額は下がることもありますか?

下がることもあります。随時改定は昇給だけでなく降給(給与が下がった場合)にも適用されます。給与が大幅に下がった場合、変更後3ヶ月の平均で標準報酬月額が下方改定され、社会保険料も下がります。また、育休から復職して給与が変わった場合は「育児休業等終了時改定」という特例の仕組みで、通常の随時改定の基準(2等級変動)を下回っても改定できる制度があります。

Q. 副業があると標準報酬月額は上がりますか?

会社員の標準報酬月額は「その会社から受け取る給与・賞与・通勤手当等の合計」を基準に計算されます。副業収入は基本的に標準報酬月額の計算に含まれません。ただし副業が「別の会社での給与収入(アルバイト・非常勤等)」の場合、条件によっては副業先でも社会保険加入が必要になる場合があり、その場合は副業先でも別途社会保険料が発生します。副業が雑所得・事業所得の場合は社会保険料への直接の影響はありません。


注意点:標準報酬月額と手取りの関係で見落としやすいこと

通勤手当が含まれる点

標準報酬月額の計算に含まれる「報酬」には、基本給だけでなく通勤手当・残業代・住宅手当・家族手当なども含まれます。所得税の非課税枠がある通勤手当(月15万円まで非課税)も、社会保険料の計算では課税対象として扱われます。「給与明細の課税支給額」と「社会保険料の計算基礎」が一致しない場合があるため、保険料の計算を正確に理解したい場合は報酬の定義を確認することが必要です。

昇給後に保険料が増えるタイムラグ

昇給があった場合、随時改定が発動するまでに数ヶ月のタイムラグがあります。昇給月から3ヶ月の給与平均で等級が変わり、その翌月から新しい保険料が適用されます。たとえば4月昇給なら4・5・6月平均→7月分の保険料から増額となり、給与明細に表れるのは原則として8月に支払われる給与からです(会社は前月分の保険料を給与から引くため)。「昇給したのにまだ保険料が上がっていない」という状態は正常であり、数ヶ月後に変わることを見越して家計計画を立てることが推奨されます。

上限等級(2026年度は月65万円)を超える場合の注意

標準報酬月額には上限があり(厚生年金は2026年度は月65万円。2027年9月から段階的に引き上げ)、これ以上に高収入でも保険料はこの上限を基準として計算されます。高収入の方は「実際の収入に対して保険料の比率が下がる」構造になりますが、同時に将来受け取れる老齢厚生年金も上限等級を基準とした計算になります。老後の資産形成を考える場合、年金の受取見込み額を「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認し、それ以上の老後資金を自分で積み上げる必要があるかどうかを把握することが重要です。


ポイントまとめ

標準報酬月額は手取りの減少原因にもなりますが、将来の給付の基盤でもあります。この両面を理解することが、社会保険料を「ただ引かれているお金」ではなく「将来の保障への積立」として捉えるためのポイントです。

標準報酬月額が関係する場面内容
毎月の保険料計算等級に基づいて自動計算される
9月の保険料改定4〜6月に支払われた報酬の平均で、その年の9月から更新
等級の境目1円の差で保険料が階段状に上がる(§5)
傷病手当金・出産手当金支給開始日以前12ヶ月の標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 2/3 が日額(加入12ヶ月未満は§3の特例)
育児休業給付金標準報酬月額では決まらない(雇用保険の休業開始時賃金日額で決まる)
将来の老齢厚生年金在職中の標準報酬月額の累積が受取額を決める
産前産後・育休中の保険料免除申請により本人・会社ともに免除

この記事の根拠(出典)

本記事の等級・保険料率・定時決定・傷病手当金の計算は、以下の一次情報(2026年9月27日確認)にもとづいています。制度や料率は改定されるため、最新の内容は各リンク先でご確認ください。


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