社会保険料とは?いくら払っているのか・なぜ高いのかを仕組みから完全解説
社会保険料の内訳・標準報酬月額の仕組み・年収別の負担額・副業時の影響から、退職・FIRE後にどう変わるかまで、手取りを最も圧迫する固定費の構造を分解します。
執筆:しぐ ・ 更新日: 2026-09-30
「税金より社会保険料のほうが高くない?」
その直感は正しいです。年収600万円の会社員の場合、所得税は年間約15万円前後。一方、社会保険料は年間約88万円前後。知らないうちに一番払っているのが社会保険料です。
この記事では、社会保険料の内訳・年収別の負担額・賞与の出方による違い・副業や休業中の扱い・受けられる給付・退職後の変化まで、全体像を分解します。標準報酬月額の等級の仕組み(境目を1円超えたときの段差、4〜6月の残業代で等級が上がる例)は標準報酬月額とは?、社会保険料がなぜ税金より重いのか(料率が上がってきた経緯、会社負担を含めた総額、年収ごとの所得税・住民税との倍率)は社会保険料はなぜ高い?で詳しく扱います。
1. 社会保険料の正体:4つの種類
会社員が毎月天引きされている社会保険料は、主に4種類に令和8年度新設の「子ども・子育て支援金」を加えた構成です。
| 保険の種類 | 本人負担率(目安) | 40〜64歳 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 健康保険料 | 約4.925%(協会けんぽ東京) | 同じ | 医療費の自己負担を3割に |
| 厚生年金保険料 | 9.15% | 同じ | 将来の老齢・障害・遺族年金 |
| 雇用保険料 | 約0.5% | 同じ | 失業給付・育休手当など |
| 子ども・子育て支援金(令和8年度新設) | 約0.115% | 同じ | 子育て世帯への給付財源 |
| 介護保険料 | 約0.81% | 追加発生 | 介護サービスの財源 |
| 合計(40歳未満) | 約14.7% | — | — |
| 合計(40〜64歳) | 約15.5% | — | — |
① 健康保険料(約5%)
病気やケガのとき医療費の自己負担を3割に抑える制度です。保険料率は都道府県ごとに異なり、東京(協会けんぽ)は約4.925%(令和8年度/2026)。これに令和8年度新設の子ども・子育て支援金0.115%が健康保険料に合算されるため、本人負担は実質約5.0%です。組合健保(大企業系)では率が異なる場合があります。
② 厚生年金保険料(9.15%)
社会保険料の中で最も重いのが厚生年金です。将来の老齢年金だけでなく、障害年金・遺族年金の財源にもなります。保険料率は18.3%(労使合計)で、その半分9.15%を本人が負担します。
厚生年金には上限(2026年度は標準報酬月額65万円)があり(2027年9月から段階的に引き上げ。§4参照)、報酬月額63万5,000円以上の方は65万円ベースで計算されます(賞与なしなら年収でおおむね762万円。賞与がある場合は§4で試算しています)。そのため高年収帯では社会保険料の年収比がやや下がります。
③ 雇用保険料(0.5%)
失業時の給付(基本手当)・育児休業給付・介護休業給付・教育訓練給付の財源です。金額は小さいですが、産休・育休中の給付に直結します。
④ 介護保険料(約0.81%)
40歳になった月から健康保険料に上乗せで徴収されます。介護サービスを受けたときの費用の財源です。
2. なぜこんなに高いのか?
給与明細に載っている社会保険料は本人負担分です。会社も健康保険・厚生年金は同額を負担し、雇用保険は本人より多く負担し、子ども・子育て拠出金は会社だけが負担しています。年収600万円なら本人負担は年約88.1万円・会社負担は年約92.4万円で、合わせて年約180.5万円の保険料が支払われています(会社だけが負担する労災保険料は含みません)。
本人負担だけで比べても、年収600万円なら社会保険料は所得税(約15万円)の約5.9倍、所得税と住民税の合計(約46万円)の約1.9倍で、天引き全体(約134万円)の約3分の2を占めます(§9)。「税金が高い」と感じる人の多くは、実は社会保険料に圧迫されています。
会社負担を含めた内訳、料率が上がってきた経緯、年収ごとに社会保険料と税金のどちらが重いか(逆転する年収)は社会保険料はなぜ高い?にまとめています。
3. 標準報酬月額とは何か?
社会保険料は、実際の月収そのものではなく「標準報酬月額」という等級で計算されます。毎年4〜6月に支払われた報酬の平均で等級が決まり(定時決定)、その年の9月から翌年8月までの保険料に使われます。昇給・降給などで報酬が大幅に変わった場合(2等級以上の変動)は、途中で等級が変わります(随時改定)。
等級で決まるので、境目をまたぐと保険料が階段状に上がります。40歳未満・協会けんぽ東京なら、報酬月額が39万4,999円から39万5,000円に1円増えるだけで、本人の社会保険料は年約5.1万円増え、手取りは年約4.4万円減ります。厚生年金の標準報酬月額には上限があり、2026年度は65万円です(§4)。
境目ごとの段差の一覧と段差の出し方、4〜6月の残業代で等級が上がる具体例と、増えた保険料が将来の年金にどれだけ返るか、繁忙期がある人が1年間の平均で決めてもらう仕組みは標準報酬月額とは?にまとめています。
4. 年収別の社会保険料一覧
「自分の年収だと社会保険料は毎月いくら引かれるのか」を、年収別に一覧にしました。金額は当サイトの手取り計算エンジンで算出した本人負担の年間額(40歳未満・協会けんぽ東京・年収を12等分した月給前提〈賞与なし〉)です。社会保険料は本人の給与(標準報酬)で決まるため、扶養家族の有無では変わりません。「健康保険」列には令和8年度新設の子ども・子育て支援金(本人0.115%)を含みます。
年間の社会保険料目安(本人負担・40歳未満・概算)
| 年収 | 健康保険 | 厚生年金 | 雇用保険 | 合計(年) | 月額換算 | 年収比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 約15.7万円 | 約28.5万円 | 約1.5万円 | 約45.8万円 | 約3.8万円 | 約15.3% |
| 400万円 | 約20.6万円 | 約37.3万円 | 約2.0万円 | 約59.9万円 | 約5.0万円 | 約15.0% |
| 450万円 | 約23.0万円 | 約41.7万円 | 約2.3万円 | 約67.0万円 | 約5.6万円 | 約14.9% |
| 500万円 | 約24.8万円 | 約45.0万円 | 約2.5万円 | 約72.3万円 | 約6.0万円 | 約14.5% |
| 550万円 | 約28.4万円 | 約51.6万円 | 約2.8万円 | 約82.8万円 | 約6.9万円 | 約15.1% |
| 600万円 | 約30.2万円 | 約54.9万円 | 約3.0万円 | 約88.1万円 | 約7.3万円 | 約14.7% |
| 650万円 | 約32.1万円 | 約58.2万円 | 約3.3万円 | 約93.5万円 | 約7.8万円 | 約14.4% |
| 700万円 | 約35.7万円 | 約64.8万円 | 約3.5万円 | 約104.0万円 | 約8.7万円 | 約14.9% |
| 750万円 | 約37.5万円 | 約68.1万円 | 約3.8万円 | 約109.3万円 | 約9.1万円 | 約14.6% |
| 800万円 | 約41.1万円 | 約71.4万円 | 約4.0万円 | 約116.5万円 | 約9.7万円 | 約14.6% |
| 900万円 | 約45.4万円 | 約71.4万円 | 約4.5万円 | 約121.2万円 | 約10.1万円 | 約13.5% |
| 1,000万円 | 約50.2万円 | 約71.4万円 | 約5.0万円 | 約126.6万円 | 約10.5万円 | 約12.7% |
※各列は万円単位で四捨五入して表示しています。「合計(年)」欄は丸める前の実額で計算しているため、内訳(健康保険+厚生年金+雇用保険)を足した額と丸めの都合でわずかにずれる場合があります。金額を参照する際は「合計(年)」欄を基準にしてください。
厚生年金は標準報酬月額65万円が上限(2026年度)のため、賞与なしのこの表では、年収およそ762万円以上になると本人負担が約71.4万円で頭打ちになります。だから高年収帯ほど社会保険料の年収比が下がっていきます(年収300万円の約15.3%に対し、年収1,000万円では約12.7%)。
40〜64歳(介護保険の第2号被保険者)はここに介護保険料(本人約0.81%)が上乗せされ、合計はおおむね「年収 × 0.81%」だけ増えます(例:年収500万円なら年約4万円増の約76.3万円)。65歳以降は介護保険料の徴収方法が変わり、原則として年金からの天引きになります。
厚生年金の頭打ちは「年収」ではなく「月給」と「賞与1回」で決まる
上の表は賞与なしの前提です。厚生年金の上限は、月給の側(2026年度は標準報酬月額65万円)と賞与の側(1回150万円)に別々にかかるため、年収が同じでも賞与の出方で厚生年金保険料が変わります。年収1,000万円で比べると次のとおりです。
| 年収1,000万円の受け取り方(賞与は年2回・同額) | 月給(報酬月額) | 賞与1回 | 厚生年金(本人・年) | 社会保険料の合計(本人・年) | 手取り(年) |
|---|---|---|---|---|---|
| 賞与なし(12等分) | 約83.3万円 | なし | 約71.4万円 | 約126.6万円 | 約727.4万円 |
| 賞与2ヶ月分 | 約71.4万円 | 約71.4万円 | 約84.4万円 | 約139.6万円 | 約718.4万円 |
| 賞与4ヶ月分 | 62.5万円 | 125万円 | 約91.0万円 | 約146.0万円 | 約713.9万円 |
| 賞与6ヶ月分 | 約55.6万円 | 約166.7万円 | 約88.9万円 | 約144.6万円 | 約714.9万円 |
※当サイトの手取り計算エンジンで試算(40歳未満・協会けんぽ東京・令和8年度の料率・単身・令和8年分の所得税と住民税)。「賞与◯ヶ月分」は、年収を(12+◯)等分した1ヶ月分を月給とし、残りを賞与として年2回に同額で分けています。
賞与なしだと、月給約83.3万円のうち上限の65万円を超える部分には厚生年金がかかりません。同じお金を賞与に回すと、1回150万円まではその分にも厚生年金がかかるため、賞与4ヶ月分では賞与なしより厚生年金が年約19.6万円多くなります。賞与6ヶ月分で少し下がるのは、1回約166.7万円のうち150万円を超える部分にはかからないためです。健康保険料はどの行も年約50万円前後でほとんど変わりません(健康保険の上限は標準報酬月額139万円、賞与は年度の累計573万円で、この年収では届かないため)。
年収800万円で同じ比較をすると、厚生年金は賞与なしで年約71.4万円、賞与4ヶ月分でも約73.2万円で、差は約1.8万円にとどまります。賞与なしでも月給は約66.7万円で、上限の65万円を超える部分が小さいためです。
自分の厚生年金が上限に当たっているかは、明細で確かめられます。2026年度は、毎月の厚生年金保険料が59,475円なら月給の側は上限(65万円×9.15%)、賞与明細の厚生年金保険料が137,250円ならその回の賞与は上限(150万円×9.15%)です。賞与にかかった厚生年金保険料も「標準賞与額」として、将来の老齢厚生年金(報酬比例部分)の計算に入ります。
なお、厚生年金の標準報酬月額の上限は、2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円へ段階的に引き上げられます(2025年の年金制度改正法による厚生年金保険法20条の改正)。この節の表と59,475円は、2026年度の上限65万円で計算しています。
あなたの社会保険料を試算する
年収・家族構成を入力して、厚生年金・健康保険などの社会保険料と手取りへの影響を一括で確認できます。
5. 副業すると社会保険料は増えるのか?
副業が雑所得・事業所得の場合
社会保険料は「給与」をベースに計算されます。副業の利益(雑所得・事業所得)は社会保険料の計算に入りません。副業で月10万円稼いでも、社会保険料は本業の給与だけで決まります。
| 副業の収入形態 | 社会保険料への影響 |
|---|---|
| 業務委託・フリーランス(雑所得・事業所得) | 原則として影響なし |
| フリマ・ネット副業(雑所得) | 原則として影響なし |
| アルバイト・パート(給与所得) | 勤務時間・報酬によっては副業先で社会保険加入義務が発生 |
例外:副業先でも「雇用」されている場合
副業先でも社会保険の加入条件を満たすと、両方の報酬を合算した標準報酬月額で計算されます。
社会保険の加入義務が発生する目安(短時間労働者の場合):
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 雇用期間が2ヶ月超(見込み)
- 学生でないこと(定時制・通信制・夜間の学生、休学中の人、卒業後も同じ勤め先で働く予定の人などは、学生でも加入の対象)
- 勤務先の従業員数が51人以上(2024年10月〜。2027年10月から段階的に縮小)
- 2026年9月30日までは、これに加えて月額賃金が8.8万円以上
6. 社会保険料は「損」なのか?
「こんなに払って元が取れるのか?」という疑問は自然です。ただし社会保険料は単純な損得だけでは語れません。
社会保険で得られる主な給付
| 保険の種類 | 主な給付 | 特記事項 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 医療費3割負担 | 現役世代は3割負担(70〜74歳は2割) |
| 健康保険 | 高額療養費制度 | 1か月の自己負担に上限(年収500万円・70歳未満で医療費100万円なら約93,000円。2026年8月からの額で、年53万円の年間上限もある) |
| 健康保険 | 傷病手当金 | 病気で休業→標準報酬月額(原則12ヶ月平均)÷30×2/3の日額を通算1年6ヶ月まで支給 |
| 健康保険 | 出産手当金 | 産前42日・産後56日間、傷病手当金と同じ式の日額を支給 |
| 厚生年金 | 老齢厚生年金 | 国民年金(基礎年金)に上乗せ |
| 厚生年金 | 障害年金 | 障害状態になった場合に支給(国民年金より手厚い) |
| 厚生年金 | 遺族年金 | 死亡した場合に遺族に支給 |
| 雇用保険 | 基本手当(失業給付) | 退職後の生活費として、賃金日額(離職前6ヶ月の賃金÷180)の50〜80%(離職時60〜64歳は45〜80%)を所定給付日数90〜360日分(360日は障害者などの就職困難者で、離職時45〜64歳・被保険者であった期間1年以上の場合) |
| 雇用保険 | 育児休業給付 | 育休中に休業開始時賃金日額(休業前6ヶ月の賃金÷180)の67%(181日目以降は50%)が支給 |
傷病手当金の価値
特に見落とされやすいメリットです。業務外の病気やケガで連続3日間仕事を休んだ(待期)あと、4日目以降に仕事に就けなかった日について、標準報酬月額をもとにした日額が通算1年6ヶ月まで支給されます。日額は「支給開始日以前12ヶ月の標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 2/3」です(加入12ヶ月未満は別の決め方。標準報酬月額とは?の§3)。
12ヶ月の標準報酬月額がずっと50万円(年収600万円・賞与なしの等級)の場合:
- 日額 = 50万円 ÷ 30日 ≒ 16,670円(10円未満四捨五入)× 2/3 ≒ 11,113円 → 30日分で約33万円
- 通算1年6ヶ月分をすべて受け取ると、総額は600万円を超える
この給付を受ける権利を得るだけで、社会保険料の元が取れると考える人も多いです。
7. 産前産後・育児休業中の保険料免除
産前産後休業中
産前42日〜産後56日間は、事業主が申請することで健康保険・厚生年金保険料が労使ともに免除されます。本人負担分も会社負担分もゼロになります。
育児休業中(子が3歳になるまで)
育休中も申請により保険料が免除されます(2022年改正で月内に14日以上取得した場合も対象)。育休から復職後は保険料が復活しますが、育休中に等級が下がった場合は「育児休業等終了時改定」で保険料を下げる仕組みもあります。
8. 標準報酬月額を下げる方法はあるか?
原則として社会保険料は計算式どおりに決まり、個人が任意に変更することはできません。ただし以下のような合法的な工夫があります。
| 方法 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 産前産後・育休中の免除申請 | 休業期間中は申請で免除 | 返ってくるわけではなく「払わなくてよい」 |
| 4〜6月に支払われる残業代を抑える(末締め翌月払いなら3〜5月の残業) | 定時決定の算定基礎を下げる | 業務上難しい場合が多い。残業代も減るうえ、標準報酬月額が下がると将来の老齢厚生年金(標準報酬月額とは?の§2)や傷病手当金・出産手当金(§6)も下がる |
| 育児休業等終了時改定 | 育休後の給与が下がった場合に申請 | 復職後の実態に合わせた改定 |
9. ケーススタディ:年収600万円の社会保険料詳細
前提条件
- 年収600万円(月収50万円×12ヶ月・賞与なし)
- 独身・40歳未満
- 東京(協会けんぽ)
月次の保険料内訳
| 項目 | 標準報酬月額 | 保険料率 | 本人負担(月) |
|---|---|---|---|
| 健康保険(東京) | 50万円 | 4.925% | 約24,625円 |
| 子ども・子育て支援金 | 50万円 | 0.115% | 約575円 |
| 厚生年金 | 50万円 | 9.15% | 約45,750円 |
| 雇用保険 | 月収全額 | 0.5% | 約2,500円 |
| 合計(月) | — | — | 約73,450円 |
この例は賞与なしです。賞与がある場合は、賞与からも同じ率で健康保険料・厚生年金保険料が引かれます(厚生年金は1回150万円まで。§4参照)。
年間・手取りまとめ
| 区分 | 年額 |
|---|---|
| 社会保険料(本人負担) | 約88万円 |
| 所得税(概算) | 約15万円 |
| 住民税(概算) | 約31万円 |
| 天引き合計 | 約134万円 |
| 手取り | 約466万円 |
天引きの約66%が社会保険料です。
10. iDeCo・ふるさと納税との関係
社会保険料は原則として控除による削減ができませんが、iDeCoやふるさと納税で所得税・住民税を下げることで手取りを改善できます。
| 制度 | 社会保険料への影響 | 所得税・住民税への影響 |
|---|---|---|
| iDeCo | なし(標準報酬月額は変わらない) | 掛金全額が所得控除。課税所得が下がる |
| ふるさと納税 | なし | 上限内なら寄付額(-2,000円)が原則として住民税・所得税から控除(確定申告で、寄付により課税所得が所得税の税率帯の境目を割り込むときなどは、控除はこれより少なくなることがある) |
iDeCoの掛金は所得控除になるため、年収600万円(人的控除が基礎控除だけで課税所得約244万円=所得税10%帯)で月2.3万円(企業年金のない会社員の上限)掛けた場合、年間約5.6万円の節税効果があります(所得税が約28,200円〔復興特別所得税込み〕+住民税が27.6万円×10%=27,600円)。配偶者控除・扶養控除などがある人は所得税の課税所得が下がるぶん所得税側の効果が小さくなります(年収600万円で配偶者控除があれば合計は約4.7万円)。社会保険料自体は変わりませんが、税金部分を削ることで実質手取りを改善できます。
11. 退職・FIRE後に社会保険料はどう変わる?
会社を辞める・FIRE(早期リタイア)すると、勤務先の健康保険と厚生年金(労使折半)から外れ、自分で加入し直します。在職中との最大の違いは「会社が半分負担してくれる『労使折半』がなくなる」ことです。同じ保障でも自己負担額が増える点に注意が必要です。
健康保険:3つの選択肢
| 選択肢 | 保険料の決まり方 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 任意継続 | 退職時の保険料を全額自己負担(会社負担分も自分持ち・上限あり・最長2年) | 退職直後・扶養家族が多い人 |
| 国民健康保険 | 前年所得をもとに市区町村が計算(自治体差が大きい) | 前年所得が低い・退職2年目以降 |
| 家族の扶養 | 保険料ゼロ | 配偶者などの扶養に入れる収入要件を満たす人 |
どれが安いかは前年所得と家族構成で変わります。切り替え期限(任意継続は退職後20日以内、国保は14日以内が法定の届出期限)や実額の比較は 退職後の健康保険どうする?任意継続・国保・扶養の選び方 で詳しく試算しています。
年金:厚生年金 → 国民年金(第1号)
60歳未満で退職すると国民年金の第1号被保険者になり、保険料は定額の月17,920円(令和8年度)です。厚生年金のような報酬比例の上乗せ(老齢厚生年金)はこれ以上増えませんが、国民年金(第1号)として保険料を納め続ければ、基礎年金(老齢基礎年金)は満額に向けて積み上がります。配偶者の扶養に入れる条件を満たす場合は第3号被保険者となり、自分では保険料を負担せずに基礎年金を積み増せます。
FIRE特有の落とし穴:初年度は「前年の高所得」で負担が重い
国民健康保険料も住民税も前年の所得をもとに計算されるため、収入の高かった年の翌年にFIRE・退職すると、その年の収入がゼロでも国保料・住民税の請求が重くのしかかります。前年所得が高いほど国保料は高くなるため、FIRE初年度は任意継続の方が国保より安くなる場合が多く、国保料が下がる2年目以降に切り替える判断が現実的です(どちらが安いかは前年所得・自治体・扶養人数で変わるので必ず両方を試算してください)。生活防衛資金には、この「リタイア1年目にかかる社会保険料・住民税(前年分)」を必ず織り込んでおくことが、FIRE計画を崩さないコツです。
まとめ
- 社会保険料は健康保険・厚生年金・雇用保険・介護保険(40〜64歳)の4本立て
- 本人負担は額面の約14〜15%(厚生年金に上限があるので、年収が高いと割合は下がり、年収1,000万円では約12.7%)。年収600万円なら所得税の約5.9倍の重さ
- 標準報酬月額の等級制で計算されるため、少しの昇給で段階的に増えることがある(40歳未満・協会けんぽ東京なら、報酬月額39万5,000円の境目で、1円の差で本人の社会保険料が年約5.1万円増える)
- 4〜6月に支払われる給与(残業代を含む)が多いと定時決定で等級が上がり9月から増える(末締め翌月払いなら3〜5月に働いた分が対象)
- 厚生年金の上限は月給(2026年度は標準報酬月額65万円)と賞与1回(150万円)に別々にかかる。年収1,000万円の試算では、厚生年金は賞与なしで年約71.4万円、賞与4ヶ月分(年2回に分けて支給)で年約91.0万円
- 副業が雑所得・事業所得なら社会保険料は原則増えない
- 傷病手当金(通算1年6ヶ月・標準報酬月額をもとにした日額)・育児休業給付など給付の価値も大きい
- 産前産後・育休中は申請で労使ともに保険料免除になる
- 退職・FIRE後は労使折半がなくなり、健康保険(任意継続/国保/扶養)+国民年金(令和8年度・月17,920円)+前年分の住民税が自分の負担になる
年収別の社会保険料・手取りをシミュレーション
年収・家族構成・控除を入力して、社会保険料・所得税・住民税・手取りを一括で確認できます。
この記事の根拠(出典)
本記事の保険料率・等級・定時決定・傷病手当金の計算と、労災保険料の負担者は、以下の一次情報(2026年9月27日確認)にもとづいています。制度や料率は改定されるため、最新の内容は各リンク先でご確認ください。
- 協会けんぽ東京支部の料率(健康保険9.85%・介護保険を含むと11.47%・子ども・子育て支援金0.23%・厚生年金18.3%・会社だけが負担する子ども・子育て拠出金0.36%)と、標準報酬月額50万円・65万円などの等級:全国健康保険協会「令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)」
- 定時決定で決めた標準報酬月額は9月から翌年8月まで使うこと:e-Gov法令検索「健康保険法」第41条第2項
- 傷病手当金の日額(標準報酬月額÷30の10円未満四捨五入×2/3の1円未満四捨五入):全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
- 労災保険料は被保険者の負担が無く、事業主が負担すること(被保険者が負担するのは雇用保険の保険料の一部だけ):e-Gov法令検索「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」第31条第1項・第3項
- ふるさと納税の寄附金控除は、所得税では総所得金額などから引く所得控除であること/所得税の税率は課税所得195万・330万・695万・900万・1,800万・4,000万円を境目に上がること(=寄付で境目を割り込むと、割り込んだ分は1つ下の税率でしか所得税が戻らない理由):e-Gov法令検索「所得税法」第78条第1項・第89条第1項(2026年9月30日確認)
- 住民税の特例分の割合は、住民税の課税総所得金額から人的控除差調整額(5万円に配偶者・扶養などに応じた額を足した額と、所得税の基礎控除から48万円を引いた額の合計)を引いた額で決まり、住民税ではふるさと納税は所得控除でない(税額控除)ため、寄付をしてもこの額は減らないこと(=所得税の戻りが下がっても住民税側は埋めない理由):e-Gov法令検索「地方税法」市町村民税=第314条の2(所得控除の列挙に寄附金が無い)・第314条の3第2項・第314条の6第1号イ・第314条の7第1項・第11項/道府県民税=第34条・第35条第2項・第37条の2第1項・第11項/割合の読み替え=附則第5条の6第1項・第2項(2026年9月30日確認)
- 短時間労働者のうち、高校生・大学生などの学生は健康保険・厚生年金保険の被保険者にならないこと。ただし卒業後も同じ勤め先で働く予定の人、休学中の人、定時制・通信制・夜間の課程の学生などは除くこと:e-Gov法令検索「健康保険法」第3条第1項第9号(学生を除く規定)・e-Gov法令検索「健康保険法施行規則」第23条の6第1項・第2項/e-Gov法令検索「厚生年金保険法」第12条第5号(同)・e-Gov法令検索「厚生年金保険法施行規則」第9条の6第1項・第2項/日本年金機構「短時間労働者の要件に『学生でないこと』がありますが、『学生』とはどのような者を指すのですか。」(2026年9月30日確認)
- 短時間労働者の賃金要件(報酬が月8万8千円未満なら被保険者としない)は2026年10月1日に施行される改正で削られ、短時間労働者を被保険者としない要件は週の所定労働時間20時間未満と学生の2つになること(その施行日は2026年9月11日公布の政令で2026年10月1日と定まったこと)/企業規模要件は令和9年10月1日から段階的に縮小されること:厚生労働省(法令等データベース)「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律の一部の施行期日を定める政令」(令和8年9月11日 政令第275号)(PDF)/e-Gov法令API v2で取得した健康保険法第3条第1項第9号(law_revision_id 211AC0000000070_20261001_507AC0000000074)と厚生年金保険法第12条第5号(329AC0000000115_20261001_507AC0000000074)・同法に収録の平成24年法律第62号附則第17条の3の2(329AC0000000115_20271001_507AC0000000074)/厚生労働省「厚生労働省関係の主な制度変更(令和8年10月)について」(2026年9月30日確認)
関連記事
本記事は一般的な情報提供を目的としており、税務・投資・法律などの専門的助言ではありません。内容は公的機関などの信頼できる情報をもとに作成していますが、制度や数値は変わる場合があります。実際の判断は公式情報や専門家でご確認ください(運営者情報・免責事項)。