米国株配当の外国税額控除とは?計算式・いくら戻るか・確定申告の書き方

米国株・ETFの配当は現地10%+日本20.315%の二重課税。外国税額控除で取り戻せる金額の計算式、年収別に戻る額のシミュレーション、確定申告の書き方、ADR手数料、住民税申告不要制度廃止の影響まで解説します。

S&P500や高配当ETF(VYM・HDV・SPYD)など米国株投資が広まる中、配当金を受け取ったとき「思ったより手取りが少ない」と感じる人が増えています。

それもそのはず。米国株の配当金には「米国で10%」+「日本で20.315%」という二重の税金がかかるためです。100ドルの配当に対して手取りは約71〜72ドルになる計算で、単純に約28〜29%が税金として消えます。

この払いすぎた税金の一部を取り戻す方法が、確定申告で行う外国税額控除です。ただし、仕組みを理解せずに申告すると「手間だけかかって1円も戻らない」「国民健康保険料が上がって損をした」という事態になる可能性もあります。

この記事では、二重課税の仕組み、外国税額控除の計算式、申告すべきかどうかの判断基準、2024年以降の制度変更の影響まで詳細に解説します。


1. 二重課税の仕組み

米国株配当に二重で税金がかかる理由

課税のタイミング課税国税率内容
配当金支払い時米国10%米国源泉徴収税(源泉徴収される)
国内証券口座受け取り時日本20.315%所得税15.315% + 住民税5%

※所得税15.315%に含まれる0.315%は、所得税15%にかかる上乗せ2.1%です。この上乗せは2026年分が復興特別所得税2.1%、2027年分(令和9年分)から2047年分(令和29年分)までは復興特別所得税1.1%+防衛特別所得税1.0%に分かれますが、合計は2.1%のままです(令和8年法律第12号)。この記事で「復興特別所得税」「防衛特別所得税」と書き分けているのは、この2つのことです。

計算例:配当100ドル(レート150円 = 15,000円)の場合

ステップ計算残額
配当額面15,000円15,000円
米国税(10%)徴収▲1,500円13,500円
日本の税(20.315%)徴収▲2,742円10,758円
手取り—10,758円(71.7%)

日本の税だけ(20.315%)なら手取りは11,948円になるはずです。差額の1,190円が「余分に払っている税金」の相当分です。

NISA口座の場合

NISA口座では日本の税金(20.315%)はかかりませんが、米国の源泉徴収(10%)は避けられません。NISAに外国税額控除は使えないため、米国税は取り戻せないコストとして残ります。

口座タイプ米国税(10%)日本の税(20.315%)外国税額控除
特定口座(課税)差し引かれる差し引かれる使える
NISA口座差し引かれるかからない使えない

2. 外国税額控除の計算式:全額は戻らない場合がある

「米国で払った10%が全額戻ってくる」と思われがちですが、取り戻せる金額には上限(控除限度額)があります。

控除限度額の計算式

その年の所得税額 × (国外所得総額 ÷ 所得総額) = 控除限度額

簡単に言うと「日本で納めた所得税のうち、外国所得に対応する割合の分まで」しか控除できません。

実際の計算例

条件数値
年間所得税額30万円
米国株配当金(円換算)50万円
総所得600万円
控除限度額 = 30万円 × (50万円 ÷ 600万円) = 2.5万円

米国で払った税金が5万円(50万円×10%)でも、控除限度額は2.5万円のため、2.5万円しか取り戻せません。残り2.5万円は「控除しきれない」分になります。

控除限度額を超えた場合の処理

控除しきれなかった分の行き先内容
復興特別所得税から控除2047年分(令和29年分)まで。所得税の控除限度額を超えた分が対象です(復興財確法14条1項)
防衛特別所得税から控除2027年分(令和9年分)以後。所得税と復興特別所得税の控除限度額の合計を超えた分が対象です(防衛特措法5条の11第1項)
住民税から控除(道府県・市町村)まず道府県民税から控除し、そこでも余った分が市町村民税から控除されます。限度額はどちらも所得税の控除限度額に割合を掛けた額で、道府県民税12%・市町村民税18%(政令指定都市に住む人は6%・24%)です(地方税法37条の3・314条の8、同法施行令7条の19第3項・48条の9の2第4項)
3年間の繰越控除今年の枠に収まらない分を翌年以降に繰り越す

繰越控除が重要です。「今年は住宅ローン控除で枠がないが来年は昇給・ボーナスで所得税が増える」という場合、今年申告しておくと来年以降に取り戻せます。


3. 申告すべきかどうかの判断基準

外国税額控除を申告するかどうかは、「還付される税金 vs 増える保険料」で判断します。

会社員(社会保険加入)の場合

給与から引かれる厚生年金・健康保険は「標準報酬月額(給与)」で決まるため、配当所得を申告しても保険料は原則上がりません。配偶者控除の所得制限(配偶者の合計所得62万円以下=給与年収136万円以下、令和8改正後)には影響する可能性があります(社会保険の扶養の年収基準は130万円未満〔60歳以上・障害者は180万円未満〕で、税制とは別物)。

基本的には申告するメリットが大きいです。

自営業・フリーランス・退職後(国民健康保険加入)の場合

確定申告で配当所得を申告すると、合計所得金額が増え、国民健康保険料・介護保険料・後期高齢者医療保険料が増加します。

シミュレーション内容
配当所得50万円を申告還付税額:約1〜2万円
国民健康保険料の増加年間4〜8万円増(所得割率7〜10%)
実質的な損益-2〜6万円(損)

数千〜数万円の税金を取り戻すために申告したら、保険料が数万円上がって損をするケースが多発しています。必ず「還付される税額 > 増える保険料」を確認してから申告してください。


4. 2024年制度変更:住民税申告不要制度の廃止

2022年分(令和4年分)の所得まで

「所得税は確定申告(還付あり)、住民税は申告不要(保険料への影響を避ける)」という使い分けが可能でした。これを「住民税申告不要制度」と呼びます。

2024年度(令和6年度)住民税から廃止

この使い分けが廃止されました。確定申告で配当所得を申告すると、自動的に住民税・国民健康保険料の算定対象にも含まれます。

制度2022年分の所得まで2023年分の所得(2024年度住民税)以降
所得税申告・住民税申告不要可能不可
所得税・住民税ともに申告可能可能
確定申告なし可能可能

この変更により、特に国保加入者の「外国税額控除申告の損益計算」がより重要になりました。


5. ADR(米国預託証券)の手数料問題

英国株(BTI・UL)や中国株(BABA)を米国市場で取引する場合、ADR(American Depositary Receipt)という仕組みが使われ、配当金受取時にADR管理手数料(1株あたり数セント〜2セント)がかかります。

手数料は経費として申告できる

ADR手数料は「必要経費」として確定申告で差し引けます。ただし特定口座では自動計算されません。

手順内容
1. 支払通知書の確認Dividend Statementに手数料が記載
2. 計算1株あたり手数料 × 保有株数 × 支払い回数
3. 申告書への記入「配当所得」欄で収入金額から差し引く

手間に対して金額が小さい(年間数百〜数千円)ケースが多いため、費用対効果を考えて判断しましょう。


6. 申告書の書き方(e-Tax)

確定申告書作成コーナーで「外国税額控除」欄に入力します。証券会社の「特定口座年間取引報告書」を手元に用意してください。

ステップ1:外国税額控除を選択

「税額控除」→「外国税額控除等」をクリック。

ステップ2:明細書への入力

入力項目内容
国名「アメリカ合衆国(米国)」
源泉・申告の区分「源泉」にチェック
所得の種類「配当」
所得の計算期間1月1日〜12月31日
税種目「源泉所得税」
相手国での課税標準配当金の額面金額(円換算)
外国所得税額現地で引かれた税額(円換算)

ステップ3:繰越分の入力

前年以前から繰り越している控除余裕額がある場合、「前年からの繰越額」を前年の申告書(別表)から確認して入力します。

円換算のレート

配当金の収入金額の円換算は、支払日のTTB(電信買いレート)を使います。証券会社の年間取引報告書に記載されている場合はその数値を使用します。


7. 年収別の外国税額控除シミュレーション

米国株配当50万円(=$3,333相当)・年収別の還付試算

年収その年の所得税額(配当分を含む)所得総額(給与所得+配当)所得税の控除限度額所得税から控除できる額
300万円約10.1万円252万円約2.0万円約2.0万円
500万円約16.5万円406万円約2.0万円約2.0万円
700万円約34.6万円570万円約3.0万円約3.0万円
1,000万円約88.0万円855万円約5.1万円5万円(米国税は配当50万円×10%=5万円なので全額)

※独身・賞与なしの給与(社会保険料は協会けんぽ東京・40歳未満。当サイトの計算エンジン)に、米国株の配当を申告分離課税(所得税15%)で申告した場合です。「その年の所得税額」は給与分と配当分(50万円×15%=7.5万円)の合計で、復興特別所得税は含みません。控除限度額は §2 の式「その年の所得税額 ×(国外所得総額 ÷ 所得総額)」で、たとえば年収700万円なら 34.6万円 × 50万円 ÷ 570万円 ≒ 3.0万円です。控除しきれなかった米国税は、§2 の表のとおり復興特別所得税・住民税から控除でき、それでも残る分は繰り越せます。

年収が高いほど所得税額が大きく、控除限度額も大きくなります。高年収の長期投資家ほど外国税額控除の恩恵が大きい傾向があります。

配当金額別の還付目安(年収700万円・国保ではない場合)

米国株配当金米国税(10%)控除限度額(目安)実際の還付
20万円2万円約1.1万円最大1.1万円
50万円5万円約3.0万円最大3.0万円
100万円10万円約6.8万円最大6.8万円
200万円20万円約16.1万円最大16.1万円

※上の表と同じ前提(配当は申告分離課税・所得税の控除限度額のみ)です。配当200万円の行は、合計所得が655万円を超えて所得税の基礎控除が67万円から62万円に下がる分も反映しています。


8. 外国税額控除を活用できない・向かないケース

ケース理由
NISA口座のみで投資二重課税なし(日本税がかからない)のため控除の対象外
国保加入者で配当が少額還付額 < 保険料増加額になる可能性が高い
住宅ローン控除で所得税がほぼゼロ控除限度額が非常に小さい(繰越はできる)
海外FXの利益のみFXの損益とは通算できない(配当特有の控除)

9. よくある質問

Q. 英国株・オーストラリア株など、米国以外の配当にも使えるか?

使えます。外国税額控除は米国に限らず、外国で課税された税金全般が対象です。英国株(源泉15%)、オーストラリア株(30%)なども控除申告の対象になります。

Q. 繰越控除を使うには毎年申告が必要か?

原則として、繰越控除を翌年以降に使うためには、繰越が発生した年の確定申告が必要です(申告書別表三の記載が必要)。申告しない年は繰り越せないため、毎年の申告継続が必要です。

Q. 外国税額控除を申告すると確定申告が複雑になるか?

e-Taxを使えば、入力項目に沿って進めるだけで計算は自動化されます。証券会社が「外国税額控除の参考資料」を発行している場合もあり、そちらをそのまま入力するケースも多いです。


まとめ

  • 米国株配当には「米国10% + 日本20.315%」の二重課税がかかる
  • 外国税額控除で米国税の一部〜全部を取り戻せる(上限は控除限度額)
  • 控除限度額 = 所得税額 × 国外所得 ÷ 総所得で計算(高年収ほど有利)
  • 2024年度(令和6年度)の住民税から、所得税だけ申告して住民税は申告不要にする使い分けができなくなり、申告すると住民税・保険料にも影響
  • 国保加入者は「還付額 > 増加する保険料」になるかを必ず確認してから申告
  • 3年間の繰越控除制度を活用することで今年枠がなくても来年以降に使える
  • NISA口座の配当は米国税(10%)がかかるが外国税額控除は使えない

控除限度額の計算に使う所得税額を確認する

このツールに外国税額控除の計算機能はありません(配当金額を入力する欄はありません)。ただし控除限度額は「その年の所得税額 ×(国外所得÷所得総額)」で決まるため、年収を入れて所得税額を出せば、本記事の式に当てはめて上限を自分で計算できます。


この記事の根拠(出典)

本記事の社会保険の扶養の年収基準は、以下の一次情報(2026年9月29日確認)にもとづいています。制度は改正されるため、最新の内容はリンク先でご確認ください。


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