株式投資の税金ガイド|20.315%の壁と「総合課税」の損益分岐点
投資信託や株式の利益にかかる税金の仕組みを解説。申告分離課税と総合課税のどちらが得か、損益通算のメリット、特定口座(源泉徴収あり・なし)の賢い選び方、ETFと投資信託の税制の違いまで。
執筆:しぐ ・ 更新日: 2026-05-29
株式投資や投資信託の利益には原則として20.315%の税金がかかります。ただし配当金については課税所得が900万円以下の場合、「総合課税」を選んで配当控除を活用した方が税負担が軽くなるケースがあります。
また、証券口座の種類(源泉徴収あり・なし)、損益通算・繰越控除の活用、NISAとの使い分けなど、税制を正しく理解することで手取りを増やせる余地があります。
1. 株式投資にかかる税金の基本構造
日本の税制では、株式・投資信託から得られる利益は大きく2つに分類されます。
| 分類 | 内容 | 対象 | 税率(原則) |
|---|---|---|---|
| 譲渡所得 | 売却して得た利益(キャピタルゲイン) | 株式・投資信託・ETFの売却益 | 20.315% |
| 配当所得 | 保有中に得られる利益(インカムゲイン) | 配当金・分配金 | 20.315% |
20.315%の内訳は、所得税15% + 住民税5% + 復興特別所得税0.315%です。
年収・利益規模別の税額シミュレーション
| 株式売却益 | 20.315%での税額 | 手取り額 |
|---|---|---|
| 50万円 | 約10.2万円 | 約39.8万円 |
| 100万円 | 約20.3万円 | 約79.7万円 |
| 300万円 | 約60.9万円 | 約239.1万円 |
| 500万円 | 約101.6万円 | 約398.4万円 |
| 1,000万円 | 約203.2万円 | 約796.8万円 |
2. 特定口座(源泉徴収あり・なし)の選び方
証券口座を開設する際に選択が必要な「特定口座の種類」は、税務上の管理方法と確定申告の要否が変わります。
| 口座の種類 | 確定申告 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 特定口座(源泉徴収あり) | 原則不要 | 確定申告不要。会社に副業がバレない。扶養から外れない。 | 利益が出るたびに税金が引かれる(資金効率ダウン)。還付を受ける機会を逃しやすい。 |
| 特定口座(源泉徴収なし) | 必要(利益20万円超) | 利益確定まで税金を払わなくてよい(複利効果が高まる)。 | 確定申告が必要。扶養から外れるリスクあり。 |
| 一般口座 | 必要(原則) | 未公開株など特殊な取引のみ利用場面がある | 損益の自己計算・申告が必要(非常に手間がかかる) |
源泉徴収あり口座を選ぶべき人
- 会社員で副業投資を会社に知られたくない人
- 扶養控除(配偶者控除・親族扶養)を維持したい人
- 確定申告の手間を省きたい人
源泉徴収あり口座では、利益がいくら出ようと「合計所得金額」には算入されないため、扶養控除・健康保険料に影響しません。
源泉徴収なし口座を選ぶべき人
- 専業トレーダー・確定申告に慣れている人
- 損益通算や繰越控除を毎年活用したい人
- 税の支払いを先送りして資金効率を上げたい人
3. 配当金の課税方式の選択
配当金には3つの課税方式があり、年収・状況によって有利な方式が異なります。
| 課税方式 | 税率 | 特徴 |
|---|---|---|
| 申告不要 | 20.315% | 手続きが最も簡単。源泉徴収で完結。損失との相殺はできない。 |
| 申告分離課税 | 20.315% | 確定申告で譲渡損失との損益通算が可能。 |
| 総合課税 | 累進税率 | 配当控除で税金が戻る可能性がある。所得が高いと逆に増税になる。 |
総合課税を選ぶべき課税所得の目安
総合課税を選ぶと「配当控除」(国内株式配当の10%を所得税から控除)が使えます。
| 課税所得の合計 | おすすめの課税方式 | 実効税率の目安(所得税) |
|---|---|---|
| 〜195万円 | 総合課税 | 5% − 配当控除10% = 実質0%以下 → 全額還付 |
| 195万〜330万円 | 総合課税 | 10% − 配当控除10% = 実質0% |
| 330万〜695万円 | 総合課税 | 20% − 配当控除10% = 実質10% |
| 695万〜900万円 | 総合課税 | 23% − 配当控除10% = 実質13% |
| 900万円〜 | 申告分離課税 | 15.315%(固定)で申告分離の方が有利 |
具体例:課税所得250万円・配当金10万円の場合
| 方式 | 税金の流れ | 手取り |
|---|---|---|
| 申告不要 | 源泉徴収20,315円で完了 | 79,685円 |
| 総合課税 | 所得税率10% × 10万円 = 1万円 − 配当控除1万円 = 0円 → 源泉分2,031円還付 | 約102,000円(+約20,000円の増加) |
J-REIT・外国株は配当控除の対象外
配当控除が使えるのは国内株式と国内株式型投資信託のみです。
| 投資対象 | 配当控除 | 推奨する課税方式 |
|---|---|---|
| 国内株式 | 使える | 低所得なら総合課税、高所得なら申告分離 |
| J-REIT分配金 | 使えない | 申告分離か申告不要 |
| 外国株・外国ETFの配当 | 使えない | 外国税額控除と組み合わせて検討 |
| 国内株式型投資信託の分配金 | 一部使える | 外国株比率により変わる |
4. 損失が出た時の「損益通算」と「繰越控除」
損益通算(複数口座の相殺)
複数の証券口座で利益と損失が出た場合、確定申告で合算することで税金を取り戻せます。
例:
- A証券:利益100万円 → 税金約20.3万円徴収済み
- B証券:損失80万円
確定申告で通算:正味利益20万円に対する税金(約4.1万円)のみ払えばよい → 差額の約16.2万円が還付。
| 状況 | 申告不要 | 確定申告(損益通算) |
|---|---|---|
| 利益100万円・損失80万円 | 20.3万円が取られたまま | 約4.1万円→差額16.2万円還付 |
| 利益200万円・損失150万円 | 40.6万円が取られたまま | 約10.2万円→差額30.4万円還付 |
繰越控除(損失を3年間持ち越す)
その年に相殺しきれなかった損失は、最大3年間繰り越せます。
例:
- 1年目:100万円の損失(確定申告で繰越申告を行う)
- 2年目:60万円の利益 → 繰越損失100万円 − 利益60万円 = 残り損失40万円
- 3年目:50万円の利益 → 利益50万円 − 繰越損失40万円 = 課税対象10万円
この場合、2年間で110万円の利益があっても課税されるのは10万円だけです。
5. ETFと投資信託の税制の違い
ETFの分配金
ETFは決算ごとに分配金を出す構造を持つため、配当収入として税金がかかります。分配金を再投資したい場合は、税引き後の金額で自分で買い直す必要があります。
投資信託(再投資型)の優位性
インデックスファンド(eMAXIS Slim等の再投資型)は分配金を出さずにファンド内で自動再投資します。この場合、分配の都度税金が引かれず、複利効果が最大化されます。
| タイプ | 分配金課税 | 長期複利効果 |
|---|---|---|
| ETF(分配あり) | 分配のたびに20.315% | やや低い(税金が引かれてから再投資) |
| 投資信託(再投資型) | 売却時まで非課税 | 高い(課税の繰延効果) |
| NISA口座(どちらも) | 非課税 | 最大 |
長期投資では再投資型投資信託のNISA口座活用が税効率の面で最も有利です。
6. NISAとの使い分け
基本方針:NISA枠を最優先で埋める
| 口座 | 利益・配当の課税 | 損益通算 |
|---|---|---|
| NISA(新NISA) | 非課税 | 不可(損失は他と通算できない) |
| 特定口座(課税) | 20.315% | 可能 |
NISAでは損失の損益通算ができないため、値下がりリスクが高い銘柄はNISA以外の口座で保有した方が損益通算の恩恵を受けられる場合があります。
高配当株投資はNISAの成長投資枠が最適
NISAの成長投資枠(年240万円、生涯1,200万円)に高配当株を入れると、配当金が非課税になります。
| 条件 | 課税口座 | NISA(成長投資枠) |
|---|---|---|
| 配当利回り3%・保有額1,000万円 | 年間配当30万円 → 税引後24万円 | 年間配当30万円 → 全額手取り |
| 20年間の受取配当合計(概算) | 約480万円 | 約600万円(差額約120万円) |
7. 住民税申告不要制度廃止後の注意点(2024年以降)
2024年度(令和6年度)の住民税から、所得税と住民税で異なる課税方式を選択できなくなりました。
変更前(〜2023年):
- 所得税:総合課税(配当控除で還付)
- 住民税:申告不要(国民健康保険料への影響を防ぐ)
変更後(2024年〜):
- 所得税と住民税で同じ課税方式しか選択できない
- 総合課税を選ぶと、住民税も総合課税になり、国民健康保険料・介護保険料の算定基準に含まれる
判断フロー
| 加入する保険 | 総合課税の検討 |
|---|---|
| 会社の社会保険(健康保険) | 配当控除の節税メリットを積極的に検討できる |
| 国民健康保険 | 保険料増加を試算してから判断(増加額が節税額を超える場合は不利) |
8. 外国税額控除
外国株(米国株等)の配当には、配当を出す国で源泉徴収が発生します。米国株の場合は10%が米国側で徴収され、日本側でさらに20.315%がかかる「二重課税」になります。
外国税額控除の仕組み:
確定申告で外国税額控除を申告すると、外国側で徴収された税金の一部を日本の所得税から控除できます。
| 条件 | 課税の流れ |
|---|---|
| 控除申告なし | 米国10%徴収 + 日本20.315% = 二重課税 |
| 外国税額控除あり | 米国10%分を日本の税金から差し引き可能 |
外国税額控除は確定申告でのみ適用できます。申告不要(源泉徴収あり口座で放置)を選ぶと、二重課税のままになります。
9. よくある質問
Q. 株式投資の損益は給与所得と通算できますか?
できません。株式投資の損益(上場株式・投資信託)は申告分離課税で、給与所得との通算はできません。株式同士・株と配当の通算は可能です。
Q. NISAで損失が出た場合は?
NISAの損失は損益通算も繰越控除もできません。NISA口座の損失は事実上なかったものとして扱われます。
Q. 配当金を総合課税で確定申告した場合、扶養はどうなりますか?
扶養される側が確定申告で総合課税を選ぶと、その配当所得が合計所得金額に算入されます。配偶者控除の上限(配偶者の合計所得62万円以下=給与年収136万円以下、令和8改正後)に影響する場合は注意が必要です。
Q. 特定口座の源泉徴収を受けた後でも確定申告できますか?
できます。源泉徴収あり口座でも、損益通算や配当控除・外国税額控除の適用のために確定申告することは可能です。申告することで還付を受けられる場合があります。
Q. 投資信託の分配金を再投資した場合でも確定申告が必要ですか?
再投資型(分配なし)の場合、分配金を受け取っていないため申告は不要です。分配ありの場合は受け取りの都度課税対象になります。
まとめ
- 株式・投資信託の利益には原則20.315%(所得税15%+住民税5%+復興税0.315%)が課税される
- 配当金は課税所得900万円以下なら総合課税+配当控除で税負担を軽減できる(2024年以降は住民税も同方式になるため、国保加入者は保険料増加の確認が必要)
- 損益通算で複数口座の利益と損失を相殺し、払いすぎた税金を取り戻せる
- 繰越控除は損失を最大3年間持ち越せるが、毎年申告が必要
- 長期投資では再投資型投資信託のNISA活用が最も税効率が高い
- 外国株配当には外国税額控除を申告することで二重課税を緩和できる
配当金の税金をシミュレーション
総合課税と分離課税、どちらが得か計算してみましょう。
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