「106万円の壁」撤廃はいつから?2026年10月の変更点と手取りへの影響を解説
社会保険の106万円の壁(月額8.8万円の賃金要件)は、2026年9月11日公布の政令で2026年10月1日の撤廃が確定。10月からは原則として年収に関係なく週20時間以上などで加入が決まります。企業規模要件の縮小日程、保険料調整制度、残る130万円の壁と手取りの変化を整理します。
執筆:しぐ ・ 更新日: 2026-09-30
「106万円の壁がなくなるって本当?」——答えは本当です。社会保険に入るかどうかを決める「月額8.8万円(年約106万円)の賃金要件」は、2026年10月1日から加入の要件ではありません。
2025年(令和7年)6月に成立した年金制度改正法(令和7年法律第74号)で賃金要件の撤廃が決まり、法律はその施行日を「公布の日から3年以内の政令で定める日」としていました。その政令(令和8年政令第275号)が2026年9月11日に公布され、施行日は2026年10月1日に確定しています。厚生労働省は、全国の最低賃金が1,016円以上となり、週20時間働けば月8.8万円に届くことを撤廃の理由に挙げています。2026年10月1日からは、加入するかどうかは原則として年収に関係なく「週20時間以上働くかどうか」などで決まります。
ただしこれは「保険料を引かれなくなる」という話ではなく、むしろ社会保険に加入する人が増える方向の改正です。ここを取り違えないことが大切です。
また、よく混同される「130万円の壁」は今回の改正では撤廃されません。この記事では、何がいつ変わるのか、企業規模要件の段階的な廃止スケジュールと新しい保険料の軽減措置、そして自分の手取りがどう変わるのかを、目安の金額つきで整理します。
そもそも「106万円の壁」とは
ポイント:106万円の壁は、パート・アルバイトが社会保険に加入するかどうかを判定する5つの要件のうちの1つで、2026年10月1日からはこの要件がなくなります。
正社員でない短時間労働者(週の所定労働時間か月の所定労働日数が、勤め先の通常の労働者の4分の3未満の人)は、2026年9月30日までは次の5要件をすべて満たすと社会保険(厚生年金・健康保険)に加入する決まりで、2026年10月1日からは②がなくなって4要件になります。このうち「所定内賃金 月8.8万円以上」が、年換算で約106万円にあたるため「106万円の壁」と呼ばれてきました。
| 要件 | 内容 | 2026年10月1日から |
|---|---|---|
| ① 労働時間 | 週の所定労働時間が20時間以上 | 残る |
| ② 賃金 | 所定内賃金が月額8.8万円以上(年換算で約106万円) | なくなる(最低賃金の減額の特例の対象者だけは例外。下のCallout) |
| ③ 雇用期間 | 2か月を超える雇用の見込み | 残る |
| ④ 学生 | 学生でないこと(ただし定時制・通信制・夜間の学生、休学中の人、卒業後も同じ勤め先で働く予定の人などは、学生でも加入の対象) | 残る |
| ⑤ 企業規模 | 勤め先の被保険者数が51人以上 | 残る(2027年10月から段階的に縮小) |
ここで見落としやすいのが、②の「106万円」は所定内賃金ベースだという点です。賞与・残業代・通勤手当などは含めません。
つまり「106万」は、あくまで月8.8万円 × 12か月の目安であって、ボーナスや残業を含めた年収のことではありません。
いつ・何が変わるのか
ポイント:賃金要件(月8.8万円)は2026年10月1日から撤廃です。判定の中心は「週20時間以上かどうか」に移ります。
2025年(令和7年)6月13日に成立した年金制度改正法(正式名「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」、令和7年法律第74号)により、②の賃金要件を撤廃することが決まりました。法律はこの部分の施行日を「公布の日から3年以内の政令で定める日」としており、2026年9月11日に公布された政令(令和8年政令第275号)で2026年10月1日と定まりました。2026年10月1日に施行される改正後の健康保険法3条1項9号・厚生年金保険法12条5号では、短時間労働者を加入の対象から外す要件は「週の所定労働時間が20時間未満」と「学生」の2つになり、「報酬が8万8千円未満」は削られています。
なぜ撤廃するのか。理由は最低賃金の上昇です。厚生労働省は、最低賃金が1,016円以上の地域では週20時間働けば賃金要件(月額8.8万円)を満たすことと、全国の最低賃金が1,016円以上となっていることを理由に挙げています。
賃金要件がなくなると、「①週20時間以上」が事実上の入り口になります。判定の基準が「106万円(月8.8万円)」から「週20時間」へ移る、と理解しておくとわかりやすいです。
逆に、週20時間未満で働く人は、賃金要件の撤廃後も、短時間労働者として社会保険に加入する対象にはなりません(週の所定労働時間と月の所定労働日数の両方が勤め先の通常の労働者の4分の3以上の人は、短時間労働者にあたらないので通常どおり加入します)。また、「学生でないこと(要件④)」「2か月を超える雇用見込み(要件③)」「企業規模(要件⑤)」は2026年10月1日以降も残ります。なくなるのは、あくまで②の賃金要件(月8.8万円)だけです。
企業規模要件も段階的に撤廃される
ポイント:⑤の「51人以上」も段階的に引き下げられ、最終的には企業規模を問わず加入対象になります。
今回の改正では、賃金要件だけでなく企業規模要件(被保険者数)も段階的に撤廃されていきます。スケジュールの目安は次のとおりです。
| 時期 | 企業規模要件(被保険者数) |
|---|---|
| 現行(2027年9月まで) | 51人以上 |
| 2027年(令和9年)10月 | 36人以上 |
| 2029年(令和11年)10月 | 21人以上 |
| 2032年(令和14年)10月 | 11人以上 |
| 2035年(令和17年)10月 | 企業規模要件を完全撤廃し、全企業(被保険者1人以上)が対象 |
厚生労働省は、企業規模要件を約10年かけて段階的に縮小・撤廃すると説明しています。
つまり、いま勤め先が小さくて対象外の人も、将来的には勤め先の規模にかかわらず週20時間で加入という形に近づいていきます。
この一連の適用拡大によって、新たに社会保険(厚生年金)の加入対象となる人は約200万人と見込まれています(試算ベースの見込みであり、確定値ではありません)。
保険料を軽くする「保険料調整制度」(2026年10月開始)
新たに加入する短時間労働者の手取りの減り方を和らげるため、2026年10月から「保険料調整制度」が始まります。勤め先(事業主)が申し出ると、事業主が本人の保険料の一部を追加で負担し、本人の負担が通算3年間軽くなります。使うかどうかは事業所ごとに決まり、使う事業所では対象の人全員に当たります。
- 対象になる勤め先:2026年10月1日〜2035年9月30日に任意特定適用事業所(企業規模要件を満たさない勤め先が、従業員側の同意を得て、短時間労働者を加入させると申し出た事業所)になった事業所や、2027年10月以降の企業規模要件の縮小で新たに対象になった事業所など
- 対象にならない勤め先:2026年10月1日の時点ですでに対象(特定適用事業所。任意特定適用事業所を含む)になっている事業所と、上の対象になる前に被保険者数が常時51人以上になった事業所。そのため、2026年10月1日時点で51人以上の勤め先で働き、賃金要件の撤廃で新たに加入する人には、この制度は当たりません
- 対象になる人:短時間労働者として加入し、標準報酬月額が12.6万円以下の人
- 軽くなる幅:標準報酬月額が低いほど大きく、厚生年金保険料なら最も低い88,000円の等級で、利用開始から24か月目までは本人負担が保険料の半分から4分の1に下がります(25〜36か月目は軽くなる幅が半分)。健康保険料の軽減額は、加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)に確認します。賞与にかかる保険料、介護保険料(40〜64歳)、子ども・子育て支援金は軽くなりません
- 事業主が追加で負担した分は、あとの保険料から差し引く形で還付されるので、最終的に事業主の負担は増えません。本人が将来受け取る年金額も減りません
自分の手取りがどう変わるか試算する
年収を入力すると社会保険料を含めた手取りが出ます(働き方を入力する欄はないため、加入要件は本記事の条件で判断してください)。
「130万円の壁」は今回の改正で残る
ポイント:106万円の壁と130万円の壁は別の制度です。今回なくなるのは106万円の壁の賃金要件だけです。
「壁がなくなる」と聞いて、130万円の壁もなくなると誤解する人が多いですが、これは別物です。
130万円の壁は、配偶者などが被扶養者(健康保険の扶養・国民年金の第3号被保険者)でいられる年収の基準の話です。基準は年収130万円未満です。健康保険の扶養では、60歳以上・障害者は180万円未満、配偶者以外の19〜22歳(暦年ごとに、その年の12月31日時点の年齢で判定)は150万円未満です(150万円は令和7年10月1日からで、それより前から扶養に入っている人も同日以降は150万円で判定されます)。ここでの障害者は、おおむね障害厚生年金の受給要件に当たる程度の障害がある人です。19〜22歳でこれに当たる人は、厚生労働省の通知が150万円に置き換える対象を「130万円未満」の基準に限っているので180万円未満のままと読めます。ただし同省のQ&Aは19〜22歳の基準を150万円未満とだけ書き、障害者には触れていないため、加入している健康保険に確認してください。国民年金の第3号被保険者は20歳以上60歳未満の配偶者なので、この例外のうち当たるのは障害者の180万円未満だけです。短時間労働者の社会保険加入要件(2026年9月までの106万円の壁を含む)とは制度が違います。
そのため、次のような人には引き続き130万円の壁が関係します。
- 週20時間未満で働く人
- 学生(上の要件④。定時制・通信制・夜間の学生、休学中の人、卒業後も同じ勤め先で働く予定の人などを除く)
- まだ企業規模要件で対象外の勤め先で働く人
このいずれかに当てはまる場合は、年収が上の基準以上になる見込みだと扶養から外れ、自分で国民健康保険に加入する必要が出てきます。20歳以上60歳未満の配偶者は、国民年金の保険料も自分で納めることになります(第3号被保険者から第1号被保険者へ)。なお、令和8年4月1日以降に扶養に入る人で収入が給与だけの場合は、労働条件通知書などに書かれた賃金(諸手当や賞与を含む)から見込まれる年間収入で判定する取扱いもあり、従来の判定方法では基準を超える人でも、労働契約の段階で基準を下回っていれば扶養に認定される可能性があります。それより前から扶養に入っている人の毎年の確認でこの取扱いが使えるかは、加入している健康保険(保険者)に確認してください。
反対に、週20時間以上で新たに厚生年金・健康保険に加入した人は、自分自身が社会保険の被保険者になるため、配偶者の扶養(国民年金の第3号被保険者)から外れます。この場合は130万円の壁はもう関係なくなり、代わりに自分の給与から保険料が引かれます(その分、将来受け取る年金は増えます)。
手取りへの影響:週20時間・年収130万円を超えたときの「働き損ゾーン」
ポイント:週20時間以上で新たに加入すると、東京都の最低賃金(2026年10月1日から時給1,280円)で週20時間働く場合でも、本人負担の社会保険料はおおむね月16,200円・年19.4万円かかります。
社会保険に加入すると保険料が天引きされます。協会けんぽ東京・40歳未満で、時給1,280円・週20時間(1年を52週として年収133.1万円。月の報酬は約11.1万円で、標準報酬月額は110,000円)の場合、本人負担分の目安は次のとおりです(目安であり、条件によって異なります)。
| 保険料の種類 | 本人負担率 | 月額の目安 |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 4.925% | 110,000 × 4.925% = 5,417.5円 |
| 子ども・子育て支援金(2026年4月新設) | 0.115% | 110,000 × 0.115% = 126.5円 |
| 厚生年金保険料 | 9.15% | 110,000 × 9.15% = 10,065円 |
| 雇用保険料 | 0.5% | 110,933 × 0.5% = 約555円 |
| 合計 | — | 約16,164円/月 |
(雇用保険料だけは標準報酬月額ではなく毎月の賃金総額をもとに計算します。また、週20時間以上で働いて雇用保険に入っていた人なら、雇用保険料は加入前からかかっています。)
合計すると本人負担は月およそ16,200円・年間でおよそ19.4万円です。40〜64歳は介護保険料が上乗せされ、同じ条件で年約20.5万円に増えます。
その結果、時給1,280円・週20時間(年収133.1万円)で社会保険に加入すると、社会保険料と税金を引いた手取りは約113万円です(40歳未満・賞与なし。所得税は令和8年分・令和9年分の給与所得控除74万+基礎控除104万で非課税です。住民税は均等割〔5,000円〕だけで、所得割はかかりません=給与所得は約59.1万円で、社会保険料と住民税の基礎控除43万円を引くと0円です)。令和10年分(2028年分)以後は給与所得控除の最低保障が69万円(所得税法28条3項1号)、基礎控除が合計所得132万円以下なら99万円(租税特別措置法41条の16の2第1項)に変わりますが、年収133.1万円ならどちらの年分でも所得税は0円のままです。
週20時間を超えたあと、手取りが戻るのは週何時間からか(時給で変わる)
配偶者の扶養に入っている人は、「週20時間」と「年収130万円(扶養の基準)」のどちらに先に届くかで話が変わります。1年を52週とすると、手当がなければ週20時間ちょうどの年収は「時給×1,040」なので、時給が1,250円以上なら、週20時間まで働くと年収が130万円以上になります。つまり週20時間までに扶養の基準を超えます。東京都の最低賃金は2026年10月1日から1,280円なので、東京都内の勤め先で最低賃金以上の時給で働く人は、みなこちらに当たります。扶養の年収は通勤手当などの手当も含めて見込むので、手当がある人は、時給が1,250円未満でもこちらに当たることがあります。
この場合、扶養内で手取りがいちばん多くなるのは年収130万円の手前で、比べる相手は「年収130万円・扶養内」の手取り(1,284,500円)です。週20時間以上にして勤務先の社会保険に入ったとき、手取りがここに並ぶのは年収152.2万円(40〜59歳は153.5万円)で、週の時間に直すと次のとおりです。
| 時給 | 扶養内(年収130万円未満)で働ける週の時間 | 週20時間ちょうどの年収 | 手取りが年収130万円・扶養内のときに並ぶ週の時間(40歳未満) | 同(40〜59歳) |
|---|---|---|---|---|
| 1,280円(2026年10月1日からの東京都の最低賃金) | 19.5時間まで | 133.1万円 | 22.9時間 | 23.1時間 |
| 1,400円 | 17.8時間まで | 145.6万円 | 21.0時間 | 21.1時間 |
| 1,500円 | 16.6時間まで | 156.0万円 | 20時間(加入した時点で並ぶ) | 20時間(加入した時点で並ぶ) |
表の前提は、協会けんぽ東京・賞与なし・通勤手当や残業代はなし(年収=時給×週の時間×52)・勤め先が保険料調整制度を使わない場合で、当サイトの計算エンジンで0.1時間刻みに試算しました。手取りは社会保険料・所得税・住民税を引いた額です。並ぶ時間は、年収152.2万円(40〜59歳は153.5万円)以上になる最短の時間で、この年収は保険料の端数処理をエンジン〔1円未満切り捨て〕と給与から天引きするときの原則〔50銭を超えると切り上げ〕のどちらで計算しても追いついている値です(年の手取りが年収130万円・扶養内に並ぶ最小の年収は、エンジンで1,521,957円、40〜59歳は1,534,271円)。60歳以上は扶養の基準が180万円未満なので、この表は当てはまりません。
表の「扶養内で働ける週の時間」を超えてから週20時間に届くまでの間は、勤務先の社会保険の対象にならないまま扶養を外れるので、国民健康保険と国民年金を自分で払うことになり、手取りの落ち込みがいちばん大きくなります(年収131万円の試算は年収の壁 総合ガイドの「130万円の壁」)。この間は、時給が高いほど長くなります(時給1,280円なら週19.5〜20時間、1,500円なら週16.6〜20時間)。つまり2026年10月からの東京では、「週20時間未満に抑えれば安心」とは限らず、年収130万円を超えて働くなら、表の右の列の時間まで増やせるかどうかで考えるのが実際的です。
週20時間ちょうどの年収(通勤手当などの手当を含む)が130万円未満なら、先に週20時間の線に届きます。手当がなければ、時給が1,250円未満のときです。その場合は、週20時間の手前(扶養内)の手取りと比べることになり、週20時間以上にして加入したあと、同じ時給でさらに時間を増やさないと手取りは戻りません。ただし健康保険料率は都道府県ごとに違うので、協会けんぽ東京の料率で試算したこの記事の値は、そのまま当てはめられません。
自分の条件で確かめるときは、下のリンク先のシミュレーター(/tax)で、年収に「時給×週の時間×52」を入れ、「社会保険」をオフにしたとき(扶養内)とオンにしたとき(加入後)の手取りを比べます。ボーナス設定は「均等型(ボーナスなし)」のままにします(この記事の試算と同じ前提になります)。
週20時間以上で働いているが、勤め先が企業規模要件で対象外の人は、2027年10月以降の要件の縮小で勤め先が対象になると、働き方を変えなくても加入します。60歳未満で障害者でない配偶者の場合、損得は、加入する直前に配偶者の扶養に入っているかどうか(扶養の基準は、通勤手当などの手当も含めた年収130万円未満)で分かれます。
- 扶養を外れている(年収130万円以上など)なら、国民健康保険と国民年金を自分で払っているはずです。この場合は、勤務先の社会保険に入ると保険料の負担が軽くなることがあります(年収131万円の試算では、国民健康保険+国民年金の負担が勤務先の社会保険の約1.6倍=20〜59歳・東京23区の令和8年度の料率。年収の壁 総合ガイドの「4.」)。時給が1,250円以上なら、週20時間以上で年収は130万円以上(東京都の最低賃金1,280円なら133.1万円以上)なので、こちらに当たります。時給が1,250円未満でも、週の時間が長い人や手当がある人は、こちらに当たることがあります。
- 扶養に入っている(年収130万円未満)なら、加入すると手取りが大きく減ります。週20時間以上で年収が130万円未満になるのは、時給が1,250円未満のときだけです(1年を52週とした場合)。令和8年度の最低賃金の答申では、1,250円以上は東京都(1,280円)と神奈川県(1,279円)だけで、全国加重平均は1,177円、最も低い額は1,085円です。たとえば時給1,200円・週20時間(年収124.8万円。扶養内で、雇用保険料だけ払っている)なら、勤め先が保険料調整制度を使わない場合、加入後の手取りは年約17万円(40〜59歳は約18万円)減ります(協会けんぽ東京の料率で試算した参考値。健康保険料率は都道府県ごとに違います)。
どちらの場合も、勤め先が申し出れば上の「保険料調整制度」で本人の負担が軽くなることがあります。
ただし、加入はデメリットばかりではありません。
- 厚生年金に加入することで将来受け取る年金が増える
- 傷病手当金・出産手当金といった健康保険の給付を受けられる
- 健康保険料・厚生年金保険料の半分は会社が負担してくれる
「損か得か」は、働ける時間や長期的な視点によって変わります。一概にどちらが有利とは言えず、条件によって異なります。
どう備える:働き方の考え方
ポイント:「扶養内(週20時間未満で、かつ年収130万円未満)に抑える」か「週20時間以上にして勤務先の社保のメリットを取りに行く」かの2つの方向で考えると整理しやすいです。
働き方の方向性は、大きく分けて次の2つです。
- 扶養内に抑える:週20時間以上という要件は撤廃されないため、週20時間未満で働けば、賃金要件や企業規模要件が撤廃された後も、短時間労働者として社会保険の加入対象にはなりません。ただし年収が130万円以上(障害者は180万円以上)になれば配偶者の扶養(第3号)から外れるので、社会保険料を自分で払わずに済むのは、週20時間未満で、かつ年収130万円未満のあいだです。週20時間までに年収130万円に届く人(時給が1,250円以上なら手当がなくても届き、手当がある人は1,250円未満でも届くことがあります)では、上限は週20時間ではなく年収130万円で決まります(時給1,280円・通勤手当なしなら週19.5時間まで。扶養の年収は通勤手当などの手当も含めて見込むので、手当がある人はもっと短くなります)。手取りの目減りは防げますが、働ける時間と収入に上限がかかります。
- 週20時間以上にして勤務先の社保のメリットを取る:勤め先が加入の対象になっている場合の選択肢です(まだ企業規模要件で対象外の勤め先では、週20時間以上にしても短時間労働者としては加入しません。週の所定労働時間と月の所定労働日数の両方が勤め先の通常の労働者の4分の3以上なら、勤め先の規模に関係なく加入します。上の「130万円の壁」の節)。一時的に手取りは下がりますが、年金の増加・各種給付・会社の保険料負担といったメリットを取りに行く考え方です。働き損ゾーンを抜ける時間(協会けんぽ東京・賞与なしで、時給1,280円なら週22.9時間、1,400円なら週21.0時間。40〜59歳は週23.1時間・21.1時間)まで増やせるかが鍵になります。
どちらが向くかは、世帯の状況・働ける時間・長期的なライフプランによって異なります。まずは自分の年収と働き方で手取りがどう変わるかを試算してから判断するのが現実的です。
まとめ
- 社会保険の「106万円の壁(賃金要件 月8.8万円)」は2026年10月1日から撤廃。施行日は2026年9月11日公布の政令(令和8年政令第275号)で確定した
- 2026年10月1日からの判定基準は、原則として年収に関係なく「週20時間以上働くかどうか」など(最低賃金の減額の特例の対象で月の報酬が8.8万円未満の人は、本人が申し出なければ加入しない。すでに加入していて同じ勤め先で働き続ける人は加入が続く)
- 撤廃の理由は最低賃金の上昇。全国の最低賃金が1,016円以上となり、週20時間働けば月8.8万円に届くため
- 企業規模要件も段階撤廃:2027年36人以上 → 2029年21人以上 → 2032年11人以上 → 2035年に全企業(1人以上)(法律の附則に具体的な暦日で規定されており日程は確定済み)
- 2026年10月に「保険料調整制度」が始まる:企業規模要件の縮小などで新たに対象になる勤め先が申し出れば、標準報酬月額12.6万円以下の人の保険料が通算3年間軽くなる(2026年10月1日時点ですでに対象の勤め先は使えない)
- この適用拡大で新たに加入対象となるのは約200万人と見込み(試算ベース)
- 「130万円の壁」は今回の改正では残る。週20時間未満の人・学生(定時制・通信制・夜間の学生、休学中の人、卒業後も同じ勤め先で働く予定の人などを除く)・対象外の勤め先の人に関係する
- 東京都の最低賃金(2026年10月1日から時給1,280円)で週20時間働いて加入すると、本人の保険料は月約16,200円・年約19.4万円、手取りは約113万円(40歳未満・賞与なし)
- 時給が1,250円以上なら、週20時間までに年収130万円(扶養の基準)に届く。東京で週20時間以上にして勤務先の社保に入ると、手取りが年収130万円・扶養内のときに並ぶのは年収152.2万円(40〜59歳は153.5万円)=時給1,280円なら週22.9時間、1,400円なら週21.0時間(40〜59歳は23.1時間・21.1時間。協会けんぽ東京・賞与なし)。扶養を外れてからそこまでが「働き損ゾーン」
- ただし年金増・傷病手当金・会社の半額負担などのメリットもあり、損得は長期視点で判断する
社会保険料込みの手取りを確認する
年収を入れると社会保険料を反映した手取りが出ます。40歳以上65歳未満なら「40歳以上65歳未満」をオンにすると介護保険料も乗ります。週の労働時間・企業規模を入力する欄はないので、加入要件に当てはまるかどうかは本記事の条件で判断し、当てはまる前提で「社会保険」をオンにして試算してください。
この記事の根拠(出典)
本記事の制度・スケジュールは、以下の一次情報(2026年9月30日までに確認)にもとづいています。最新情報は各公式ページでご確認ください。
- 賃金要件の撤廃などの施行日を2026年10月1日とすること:厚生労働省(法令等データベース)「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律の一部の施行期日を定める政令」(令和8年9月11日 政令第275号)(PDF)(改正法附則第1条第1項第9号に掲げる規定〔確定拠出年金法などの一部の改正規定を除く〕の施行期日を「令和八年十月一日とする」)/官報 令和8年9月11日(号外第203号)目次(同政令の掲載)
- 改正法附則第1条第1項第9号の規定(厚生年金保険法第12条第5号の改正規定・同法附則第4条の6を加える改正規定・健康保険法の改正〔改正法第33条〕など)は「公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日」から施行すること/2026年10月1日施行版では、短時間労働者を被保険者としない要件が「一週間の所定労働時間が二十時間未満であること」と学生の2つになり、現行版の健康保険法第3条第1項第9号ロ(報酬が「八万八千円未満であること」)が削られていること/最低賃金の減額の特例(最低賃金法第7条)の対象で報酬が8万8千円未満の短時間労働者は、当分の間被保険者とせず、本人の申出で被保険者となれること:e-Gov法令API v2で取得した健康保険法(law_revision_id 211AC0000000070_20261001_507AC0000000074=第3条第1項第9号・附則第8条の3の2。比較した現行版は 211AC0000000070_20260801_508AC0000000031)と厚生年金保険法(329AC0000000115_20261001_507AC0000000074=第12条第5号・附則第4条の6、同版に収録の令和7年法律第74号附則第1条)/e-Gov法令検索「最低賃金法」第7条(2026年9月30日確認)
- 賃金要件の撤廃・減額特例の対象者への措置(本人の希望で加入でき、事業主の同意は不要)・保険料調整制度の施行が令和8年10月であること、撤廃の理由(最低賃金が1,016円以上の地域では週20時間働けば月額8.8万円を満たし、全国の最低賃金が1,016円以上となっていること):厚生労働省「厚生労働省関係の主な制度変更(令和8年10月)について」(2026年9月30日確認)
- 保険料調整制度の対象事業所(2026年10月1日〜2035年9月30日に任意特定適用事業所となった事業所、2027年10月1日以降の適用拡大で特定適用事業所となった事業所など)と対象外の事業所(2026年10月1日時点ですでに特定適用事業所〔任意特定適用事業所を含む〕の事業所と、対象の事業所に当たる前に被保険者数が常時51人以上となった事業所)、対象者(標準報酬月額126,000円以下の短時間労働者)、事業所単位ですべての対象者に適用されること、軽減割合(標準報酬月額88,000円までで25%、利用開始から25〜36か月目は1〜24か月目の半分)、賞与にかかる保険料・介護保険料・子ども・子育て支援金は対象外であること、事業主の追加負担分は3か月後の保険料から差し引いて還付されること、将来の年金額が減らないこと:日本年金機構「保険料調整制度のご案内」/同「対象となる事業所」「対象となる被保険者」「計算方法」(いずれも2026年9月11日更新・2026年9月30日確認)。事業主の負担割合を「増加負担割合に百分の五十を加えた割合」に増やせること(=本人負担は50%から増加負担割合を引いた割合)と、適用は通算36月であることは、上の厚生年金保険法 2026年10月1日施行版に収録の令和7年法律第74号附則第22条第1項・第7項、第1級の増加負担割合が厚生年金保険料率の百分の二十五であることはe-Gov法令検索「令和8年政令第272号」第2条/任意特定適用事業所は、企業規模要件を満たさない事業所の事業主が労働組合や従業員の同意を得て申し出るものであること=同版に収録の平成24年法律第62号附則第17条第5項
- 東京都の最低賃金が時間額1,226円から1,280円に引き上げられ、効力発生日が令和8年10月1日であること:東京労働局「東京都最低賃金を1,280円に引上げます」(令和8年9月1日)(2026年9月30日確認)
- 令和8年度の地域別最低賃金の答申で、改定額の全国加重平均が1,177円、最も低い額が1,085円で、1,250円以上は東京都(1,280円)と神奈川県(1,279円)だけであること(令和8年10月1日から12月2日までの間に順次発効の予定):厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」(令和8年9月3日)/同ページの別紙「令和8年度 地域別最低賃金 答申状況」(PDF)(2026年9月30日確認)
- 健康保険の被扶養者の認定で、労働契約の内容から年間収入を見込むときの「賃金」は労働基準法第11条の賃金で、諸手当と賞与も含むこと:厚生労働省「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて」(令和7年10月1日 保保発1001第3号・年管管発1001第3号)(注1。2026年9月30日確認)
- e-Gov法令API v2で厚生年金保険法の2027年10月1日施行版(law_revision_id 329AC0000000115_20271001_507AC0000000074)に収録の平成24年法律第62号附則第17条の3の2を確認(2026年9月30日):企業規模要件(附則17条12項の「五十人」の読み替え)は、令和9年10月1日〜令和11年9月30日=三十五人、令和11年10月1日〜令和14年9月30日=二十人、令和14年10月1日〜令和17年9月30日=十人と、具体的な暦日が法律本文に書き込まれており、「政令で定める日」への委任はない。附則17条12項は「特定労働者の総数が常時五十人を超えるもの」を適用対象と定めており、読み替え後は「三十五人を超える」「二十人を超える」「十人を超える」となるため、この35人・20人・10人という読み替え値は、本文の36人以上・21人以上・11人以上という表記にそれぞれ対応する
- 厚生労働省「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案の概要」(衆議院修正反映版)(改正の概要Ⅰ1①に「企業規模要件を令和9年10月1日から令和17年10月1日までの間に段階的に撤廃する」と明記。施行期日欄も「Ⅰ1①(企業規模要件)は令和9年10月1日」という単一の期日を法律案自体に定めており、「Ⅰ1①(賃金要件)は…政令で定める日」と明確に書き分けている=2035年10月の完全撤廃を含む企業規模要件のスケジュール全体は、賃金要件と異なり政令委任ではなく法律で確定している)
- e-Gov法令検索APIで厚生年金保険法附則第17条第1項・健康保険法附則第46条第1項を確認(law_revision_id=329AC0000000115_20291001_507AC0000000074/211AC0000000070_20291001_507AC0000000074・2026年9月17日):企業規模で加入対象外とする適用除外の規定はいずれも「令和十七年九月三十日までの間」と期限つきで定められており、令和17年10月1日以降はこの適用除外自体が失効して企業規模を問わず加入対象になる仕組みが、厚生年金保険・健康保険どちらの法律本文にも書き込まれている(政令への委任なし。2035年10月の完全撤廃の直接的な条文根拠)
- 企業規模要件で被保険者としないのは、週の所定労働時間か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満の短時間労働者(特定4分の3未満短時間労働者)だけであること:e-Gov法令API v2で取得した健康保険法(law_revision_id 211AC0000000070_20261001_507AC0000000074)に収録の平成24年法律第62号附則第46条第1項と、厚生年金保険法(329AC0000000115_20261001_507AC0000000074)に収録の同法附則第17条第1項(2026年9月30日確認)
- 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
- 厚生労働省「社会保険適用拡大 特設サイト(従業員向け)」
- 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
- 短時間労働者のうち、高校生・大学生などの学生は健康保険・厚生年金保険の被保険者にならないこと。ただし卒業後も同じ勤め先で働く予定の人、休学中の人、定時制・通信制・夜間の課程の学生などは除くこと:e-Gov法令検索「健康保険法」第3条第1項第9号(学生を除く規定)・e-Gov法令検索「健康保険法施行規則」第23条の6第1項・第2項/e-Gov法令検索「厚生年金保険法」第12条第5号(同)・e-Gov法令検索「厚生年金保険法施行規則」第9条の6第1項・第2項/日本年金機構「短時間労働者の要件に『学生でないこと』がありますが、『学生』とはどのような者を指すのですか。」(2026年9月30日確認)
- 全国健康保険協会「令和8年度の保険料率」
- 均等割の非課税限度額は、条例で定める基本額×(同一生計配偶者と扶養親族〔16歳未満の人と控除対象扶養親族に限る〕の数+1)+10万円で、同一生計配偶者か扶養親族がいれば、さらに条例で定める加算額を足すこと。基本額は35万円を超えない範囲、加算額は21万円を超えない範囲で、それぞれ35万円・21万円×級地の率(1級地1.0・2級地0.9・3級地0.8)を参酌して定めること=単身なら国の基準で38万〜45万円:e-Gov法令検索「地方税法施行令」第47条の3(law_revision_id 325CO0000000245_20260822_508CO0000000251)/e-Gov法令検索「地方税法施行規則」第9条の21第2項(law_revision_id 329M50000002023_20260721_508M60000008089)(2026年9月29日確認)
- 被扶養者でいられる年間収入は130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満。配偶者以外の19歳以上23歳未満〔年齢は扶養認定日が属する年の12月31日時点で判定し、各暦年の基準もその年の12月31日時点の年齢で決まる〕は令和7年10月1日以降は150万円未満〔令和7年9月30日以前に認定済みの人も、同日以降は150万円以上見込まれると扶養から外れる〕)で、130万円以上(60歳以上または障害者は180万円以上)見込まれると扶養から外れること/配偶者の扶養を外れて厚生年金保険などに加入しない人は、国民年金の第1号被保険者の手続きをすること/従業員の配偶者が20歳以上60歳未満で厚生年金保険などの被保険者でなければ、原則として国民年金の第3号被保険者になること:日本年金機構「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」/日本年金機構「19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります」/日本年金機構「年齢要件(19歳以上23歳未満)は、いつの時点で判定するのですか。」(2026年9月29日確認)
- 令和8年4月1日以降の扶養の認定では、収入が給与だけの人は、労働条件通知書などに書かれた賃金(諸手当・賞与を含む)から見込まれる年間収入で判定する取扱いがあり、従来の判定方法では基準額を超えていても、労働契約の段階で基準額を超えていなければ認定できる可能性があること。この取扱いは認定日が令和8年4月1日以降の認定に適用されること:日本年金機構「労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて」/厚生労働省「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いに係るQ&A(第2版)について」(令和8年3月9日事務連絡)(PDF)(Q10「本通知による取扱いは、認定日が4月1日以降となるものについて適用されます」)(2026年9月29日確認)
- 健康保険料などの被保険者負担分の1円未満の端数は、給与から控除する場合、50銭以下は切り捨て、50銭を超えると切り上げること(事業主と被保険者の間に特約があれば、それによる):全国健康保険協会「令和8年度 東京支部 保険料額表」(PDF)(2026年9月29日確認)
- 国民年金の第3号被保険者の認定も、健康保険の被扶養者の認定の取扱いを勘案して年間収入130万円未満(障害厚生年金を受けられる程度の障害者は180万円未満)で判定すること:厚生労働省年金局「第3号被保険者制度について」(第7回社会保障審議会年金部会 資料1・2023年9月21日)(PDF)(4ページ「第3号被保険者の生計維持関係の認定に当たっては、年間収入が130万円未満であることが必要(健康保険の被扶養者の認定の取扱いを勘案する。)」、5ページの被扶養者認定の通知の抜粋に「概ね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合にあつては180万円未満」)
- 健康保険の被扶養者の年間収入の基準のうち「130万円未満」とされているものを、配偶者以外の19歳以上23歳未満の人については150万円未満として扱うこと(通知の記の1。Q&AのQ3の冒頭も同じ文言。Q3の続きとQ4は19〜22歳の基準を150万円未満とだけ書き、障害者には触れていない)/もとの基準は130万円未満で、60歳以上または概ね障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者は180万円未満であること(同じページの参考に載っている昭和52年通知):厚生労働省「19歳以上23歳未満の被扶養者に係る認定について」(令和7年7月4日 保発0704第1号・年管発0704第1号)/厚生労働省「19歳以上23歳未満の被扶養者に係る認定に関するQ&A」(2026年9月30日確認)
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