「106万円の壁」撤廃はいつから?2026年10月の変更点と手取りへの影響を解説
社会保険の106万円の壁が2026年10月に賃金要件撤廃で事実上なくなる予定。新基準は週20時間、企業規模要件も段階廃止。残る130万円の壁と手取りの変化を整理します。
執筆:しぐ ・ 更新日: 2026-06-12
「106万円の壁がなくなるって本当?」——その答えはほぼ本当です。
2025年(令和7年)6月に成立した年金制度改正法により、社会保険加入を判定する「月額8.8万円(年約106万円)の賃金要件」が、2026年(令和8年)10月に撤廃される予定です。これにより加入の基準は「週20時間以上働くかどうか」へ実質的に移ります。
ただしこれは「保険料を引かれなくなる」という話ではなく、むしろ社会保険に加入する人が増える方向の改正です。ここを取り違えないことが大切です。
ただし、よく混同される「130万円の壁」は今回の改正では撤廃されません。この記事では、何がいつ変わるのか、企業規模要件の段階的な廃止スケジュール、そして自分の手取りがどう変わるのかを、目安の金額つきで整理します。
そもそも「106万円の壁」とは
ポイント:106万円の壁は、パート・アルバイトが社会保険に加入するかどうかを判定する5つの要件のうちの1つです。
会社員や正社員でない短時間労働者でも、次の5要件をすべて満たすと社会保険(厚生年金・健康保険)に加入します。このうち「所定内賃金 月8.8万円以上」が、年換算で約106万円にあたるため「106万円の壁」と呼ばれてきました。
| 要件 | 内容(2026年9月まで) |
|---|---|
| ① 労働時間 | 週の所定労働時間が20時間以上 |
| ② 賃金 | 所定内賃金が月額8.8万円以上(年換算で約106万円) |
| ③ 雇用期間 | 2か月を超える雇用の見込み |
| ④ 学生 | 学生でないこと |
| ⑤ 企業規模 | 勤め先の被保険者数が51人以上 |
ここで見落としやすいのが、②の「106万円」は所定内賃金ベースだという点です。賞与・残業代・通勤手当などは含めません。
つまり「106万」は、あくまで月8.8万円 × 12か月の目安であって、ボーナスや残業を含めた年収のことではありません。
2026年10月に何が変わる
ポイント:賃金要件(月8.8万円)が撤廃され、判定の中心が「週20時間以上かどうか」に移ります。
2025年(令和7年)6月13日に成立した年金制度改正法(正式名「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」)により、②の賃金要件は2026年(令和8年)10月に撤廃される予定です。
なぜ撤廃するのか。理由は最低賃金の上昇です。最低賃金が上がると、週20時間働けば所定内賃金が自然に月8.8万円を超えるようになり、賃金要件をわざわざ判定する意味が薄れるためです。
厚生労働省は「公布から3年以内で、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断」としており、撤廃はあくまで予定です。時期が前後する可能性もあります。
賃金要件がなくなると、残るのは「①週20時間以上」が事実上の入り口になります。判定の基準が「106万円(月8.8万円)」から「週20時間」へ移る、と理解しておくとわかりやすいです。
逆に、週20時間未満で働く人は、賃金要件が撤廃された後も社会保険の加入対象外です。また、「学生でないこと(要件④)」「2か月を超える雇用見込み(要件③)」は今回の改正でも残ります。なくなるのは、あくまで②の賃金要件(月8.8万円)だけです。
企業規模要件も段階的に撤廃される
ポイント:⑤の「51人以上」も段階的に引き下げられ、最終的には企業規模を問わず加入対象になります。
今回の改正では、賃金要件だけでなく企業規模要件(被保険者数)も段階的に撤廃されていきます。スケジュールの目安は次のとおりです。
| 時期 | 企業規模要件(被保険者数) |
|---|---|
| 現行(2026年9月まで) | 51人以上 |
| 2027年(令和9年)10月 | 36人以上 |
| 2029年(令和11年)10月 | 21人以上 |
| 2032年(令和14年)10月 | 11人以上 |
| 2035年(令和17年)10月 | 企業規模要件を完全撤廃し、全企業(被保険者1人以上)が対象(予定) |
厚生労働省は、企業規模要件を約10年かけて段階的に縮小・撤廃すると説明しています。
つまり、いま勤め先が小さくて対象外の人も、将来的には勤め先の規模にかかわらず週20時間で加入という形に近づいていきます。
この一連の適用拡大によって、新たに社会保険(厚生年金)の加入対象となる人は約200万人と見込まれています(試算ベースの見込みであり、確定値ではありません)。
自分の手取りがどう変わるか試算する
年収と働き方を入力して、社会保険料を含めた手取りの目安を確認できます。
「130万円の壁」は今回の改正で残る
ポイント:106万円の壁と130万円の壁は別の制度です。今回なくなるのは106万円の壁の賃金要件だけです。
「壁がなくなる」と聞いて、130万円の壁もなくなると誤解する人が多いですが、これは別物です。
130万円の壁は、配偶者などの被扶養者(健康保険の扶養・国民年金の第3号被保険者)でいられる年収の上限の話です。短時間労働者の社会保険加入要件(106万円)とは制度が違います。
そのため、次のような人には引き続き130万円の壁が関係します。
- 週20時間未満で働く人
- まだ企業規模要件で対象外の勤め先で働く人
このどちらかに当てはまる場合は、年収が130万円を超えると自分で国民健康保険・国民年金に加入する必要が出てきます。
反対に、週20時間以上で新たに厚生年金・健康保険に加入した人は、自分自身が社会保険の被保険者になるため、配偶者の扶養(国民年金の第3号被保険者)から外れます。この場合は130万円の壁はもう関係なくなり、代わりに自分の給与から保険料が引かれます(その分、将来受け取る年金は増えます)。
手取りへの影響:新たな「働き損ゾーン」
ポイント:年収106万円で新たに加入すると、本人負担の社会保険料はおおむね月12,900円・年15〜16万円かかります。
社会保険に加入すると保険料が天引きされます。協会けんぽ東京・40歳未満・標準報酬月額88,000円(月額賃金8.8万円)の場合、本人負担分の目安は次のとおりです(目安であり、条件によって異なります)。
| 保険料の種類 | 本人負担率 | 月額の目安 |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 4.925% | 88,000 × 4.925% = 約4,334円 |
| 子ども・子育て支援金(2026年4月新設) | 0.115% | 88,000 × 0.115% = 約101円 |
| 厚生年金保険料 | 9.15% | 88,000 × 9.15% = 約8,052円 |
| 雇用保険料 | 0.5% | 88,000 × 0.5% = 約440円 |
| 合計 | — | 約12,927円/月 |
(雇用保険料だけは標準報酬月額ではなく毎月の賃金総額をもとに計算しますが、月8.8万円ではほぼ同額になります。)
合計すると本人負担は月およそ12,900円台・年間でおよそ15〜16万円の負担増です。40歳以上は介護保険料が上乗せされ、さらに増えます。
その結果、年収106万円で新たに社会保険に加入すると、手取りは加入前の約106万円からおおむね90万円前後まで下がります(所得税は給与所得控除74万+基礎控除104万で非課税、住民税も基礎控除等でごく小額です)。
この目減りを取り戻すには、目安として年収124万円程度まで増やす必要があります(標準報酬月額88,000円で試算した場合の概算)。つまり**「106万〜124万円」あたりが新たな働き損ゾーン**になりやすい、という点を知っておくと判断しやすくなります。
ただし、加入はデメリットばかりではありません。
- 厚生年金に加入することで将来受け取る年金が増える
- 傷病手当金・出産手当金といった健康保険の給付を受けられる
- 健康保険料・厚生年金保険料の半分は会社が負担してくれる
「損か得か」は、働ける時間や長期的な視点によって変わります。一概にどちらが有利とは言えず、条件によって異なります。
どう備える:働き方の考え方
ポイント:「週20時間未満に抑える」か「超えて社保のメリットを取りに行く」かの2つの方向で考えると整理しやすいです。
働き方の方向性は、大きく分けて次の2つです。
- 週20時間未満に抑える:週20時間以上という要件は撤廃されないため、週20時間未満で働けば、賃金要件や企業規模要件が撤廃された後も社会保険の加入対象にはなりません。手取りの目減りは防げますが、働ける時間と収入に上限がかかります。また年収130万円を超えれば配偶者の扶養(第3号)からは外れる点に注意します。
- 週20時間を超えて社保のメリットを取る:一時的に手取りは下がりますが、年金の増加・各種給付・会社の保険料負担といったメリットを取りに行く考え方です。働き損ゾーンを抜ける年収(目安124万円程度)まで増やせるかが鍵になります。
どちらが向くかは、世帯の状況・働ける時間・長期的なライフプランによって異なります。まずは自分の年収と働き方で手取りがどう変わるかを試算してから判断するのが現実的です。
まとめ
- 社会保険の「106万円の壁(賃金要件 月8.8万円)」は2026年(令和8年)10月に撤廃される予定
- 撤廃後の判定基準は実質的に「週20時間以上働くかどうか」に移る
- 撤廃の理由は最低賃金の上昇で、最賃1,016円以上などを見極めて判断するため時期は予定
- 企業規模要件も段階撤廃:2027年36人以上 → 2029年21人以上 → 2032年11人以上 → 2035年に全企業(1人以上)(いずれも予定)
- この適用拡大で新たに加入対象となるのは約200万人と見込み(試算ベース)
- 「130万円の壁」は今回の改正では残る。週20時間未満の人や対象外の勤め先の人に関係する
- 年収106万円で加入すると本人の保険料は月約12,900円・年15〜16万円、手取りは90万円前後に
- 取り戻すには目安で年収124万円程度まで必要=「106万〜124万円あたりが新たな働き損ゾーン」
- ただし年金増・傷病手当金・会社の半額負担などのメリットもあり、損得は長期視点で判断する
社会保険料込みの手取りをシミュレーションする
年収・年齢・働き方を入力すると、社会保険料を反映した手取りの目安が分かります。
この記事の根拠(出典)
本記事の制度・スケジュールは、以下の一次情報(2026年6月時点)にもとづいています。施行時期は予定であり、最新情報は各公式ページでご確認ください。
- 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
- 厚生労働省「社会保険適用拡大 特設サイト(従業員向け)」
- 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
- 全国健康保険協会「令和8年度の保険料率」
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